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首のない馬の腸のとぐろまく夜の陣地 姦淫された少女のほそい股が見せる焼かれた屋根 朝の沼での兵士と死んだ魚の婚礼 ーー吉岡実「死児」 |
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水のながれは止る その全面の硬い量の上をすべる 女と魚 たえずまくれるスカートのなかの鱗で飾られた脚 ーー吉岡実「水のもりあがり」 |
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ぼくがクワイがすきだといったら ひとりの少女が笑った それはぼくが二十才のとき 死なせたシナの少女に似ている ・・・ コルクの木のながい林の道を 雨傘さしたシナの母娘 美しい脚を四つたらして行く下からまる見え ーー吉岡実「恋する絵」 |
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或る別の部落へ行った。兵隊たちは馬を樹や垣根につなぐと、土造りの暗い家に入って、チャンチュウや卵を求めて飲む。或るものは、木のかげで博打をする。豚の奇妙な屠殺方法に感心する。わたしは、暗いオンドルのかげに黒衣の少女をみた。老いた父へ粥をつくっている。わたしに対して、礼をとるのでもなければ、憎悪の眼を向けるでもなく、ただ粟粥をつくる少女に、この世のものとは思われぬ美を感じた。その帰り豪雨にあい、曠野をわたしたちは馬賊のように疾走する。ときどき草の中の地に真紅の一むら吾亦紅が咲いていた。満人の少女と吾亦紅の花が、今日でも鮮やかにわたしの眼に見える。揚柳の下に、豪華な色彩の柩が放置されているのも、異様な光景だ。ふたをとって覗いて見たらと思ったが、遂に見たことはない。びらんした屍体か、白骨が収まっているのだろう。みどりに芽吹く外景と係りなく。やがて黄塵が吹きすさぶ時がくるのだ。 反抗的でも従順でもない彼ら満人たちにいつも、わたしたちはある種の恐れを抱いていたのではないだろうか。〔・・・〕 彼らは今、誰に向って「陰惨な刑罰」を加えつつあるのか。 わたしの詩の中に、大変エロティックでかつグロテスクな双貌があるとしたら、人間への愛と不信をつねに感じているからである。(吉岡実「わたしの作詩法?」) |