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2025年9月25日木曜日

いまは歴史の分水嶺であり、世界革命の真っ最中

 

危機とは、古い秩序が死につつあるのに新しい秩序がまだ生まれていないという事態にある。この空白期に、多種多様な病的兆候が現れるのだ[La crisi consiste appunto nel fatto che il vecchio muore e il nuovo non può nascere: in questo interregno si verificano i fenomeni morbosi più svariati](アントニオ・グラムシ『獄中ノート』Antonio Gramsci, Quaderni dal carcere)


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ま、いろんな言い方があるがな、当面楽観論を抱いたらダメだよ


そうですねえ……なにか自分の底から、実は知らないはずの戦争や貧困とかを、掘り出してくることが大事かもしれない。たとえば、近代以前の、飢餓や疫病が流行った時の感覚が、 われわれのうちにインプットされているはずなんです。〔・・・〕


どういう災いを経てわれわれは生きているか。その災いがまたいつ現れるかわからないって、 そういう感覚をもう一度取り戻した方がいいんじゃないですかね。

(古井由吉「新潮」2017 年 6 月号又吉直樹対 談)


国民の人心を考えると、しっかりしたペシミズムを持つことが大事だと思います。ペシミズムは普通、人を弱らせるように見られます。しかし、節度を持ってしっかり踏まえれば、かえって活力が出るぐらいに私は思っているんです。(古井由吉「新潮 45」2012 年 1 月号 片山杜秀との対談)


しかし現在の苦境は、我が国ばかりでなく世界全体がひとつの限界域に、展開の限界に踏 み入りつつあるところから、来るのではないか。〔・・・〕

あくまでも一旦の限界であり、終末を思うにはあたらないのだろう。ここを克服すればその先に地平が開くと考えられる。しかしまた、この苦境は、いずれ春になれば、というような風にしては、しのげないもののようだ。(古井由吉『楽天の日々』2017年)

変化に変化を重ねてきたそのあげくの、この現在の世界的な行き詰まりではないのか。何をなしてきたか、来し方を問い返すべき時ではないか。〔・・・〕

未来像という言葉にも私は疑問を抱く。その言葉で以ってたいていは、輝しき未来、豊かな未来を思い浮かべるのが、もう何十年来の人の習い性となっている。いま提示されるべき未来は、節度と抑制、そして市場からかろうじて自己を取り戻す未来のはずだ。かならずしも人好きのする未来ではない。 (古井由吉『楽天の日々』2017年) 



この古井由吉の言い方もすばらしいが、先ずいまは世界革命の真っ最中だと思ったほうがいいよ、プーチンが言うように。



今、世界情勢における西側諸国の際限のない支配という歴史的時代は終わりを迎えようとしています。一極世界は過去のものとなりつつあります。私たちは歴史の分水嶺に立っています。第二次世界大戦終結以来、おそらく最も危険で予測不可能でありながら、同時に最も重要な10年を迎えることになるでしょう。西側諸国は人類を単独で支配することができず、大多数の国々はもはやこれに耐えることを望んでいません。これが新時代の主要な矛盾です。古典に準拠すれば、これはある意味で革命的な状況と言えるでしょう。エリート層はもはやそのような生活を送ることはできず、人々もそのような生活を望んでいません。

Now this historical period of boundless Western domination in world affairs is coming to an end. The unipolar world is being relegated into the past. We are at a historical crossroads. We are in for probably the most dangerous, unpredictable and at the same time most important decade since the end of World War II. The West is unable to rule humanity single-handedly and the majority of nations no longer want to put up with this. This is the main contradiction of the new era. To cite a classic, this is a revolutionary situation to some extent – the elites cannot and the people do not want to live like that any longer. 

(プーチン演説、於ヴァルダイ国際討論クラブ、2022年10月27日






2022年10月のヴァルダイクラブの議題は「覇権後の世界、万人のための正義と安全保障」だったせいもあり、ーーそれに加えてロシアの立ち位置がまだ今のようには肯定的に捉える人が僅かだった時期だから、逆に熱がいっそうこもっていたということもあるのだろうがーー、このプーチンの演説は実に見事だよ。ドストエフスキーの『悪霊』から引用したり、ソルジェニーツィンのハーバード大学卒業式演説(1978年)からの西洋批判《優越感への絶え間ない盲目さ》などを引用しつつの強いリベラル批判があったりして、私の知る範囲で最も好きな演説だな。


ま、いずれにせよ、この10年間は何が起こるかわかったもんじゃないね、トランプがさっそくーー案の定ーーこう言い出したように。



トランプというのはもはやトランプじゃないんだよ、ディープステートのフロントマンに過ぎない[参照]。個人攻撃しても無駄だ、プーチンはそのことを十全にわかっている。➤ 「トランプはそれを知らないがそうする」。