2019年3月29日金曜日

ヒト族がサルに勝った理由

少し前、キクラデス芸術をいくつか貼り付けたけれど、他の古代文明の作品で魅せられるのは何だろうなと、このところいくらか眺めている。でもどうしても欲しくなるものは無いね。キクラデス女神のようには。壺ぐらいだな。





ところでーー。

ヒトのように年中セックスをしている動物は、他に実験動物のマウスぐらいではないだろうか。(中井久夫「赤と青と緑とヒト」1997年初出『アリアドネからの糸』所収)

古代の連中は年中セックスやってたんだろうか、今みたいに。古代ローマはやってたに決まってるし、紀元前10世紀ごろのギリシアもやってたんだろう。でも紀元前30世紀のキクラデスはどうなんだろう。ネットで英語論文ちらみしても書いてないんだな、そんなこと。

で、まあいいやと思ってたら、灯台下暗しでここでもやっぱり「歴史家」中井久夫が書いてるや。

人類は、おそらく十万年ぐらいは、生理的にほとんど変化していないと見られている。心理だって、そう変わっていまい。そして、生理と心理は予想以上に密接である。……

他のサル類を圧倒したのは、スズメ型戦略、すなわち数である。その戦術の第一が、三六五日、時を構わず性交できる点、第二は、妊娠期間が例外的に短く、しかも出産後、すぐまた妊娠できる点である。短期間にたくさんの子ができる。人間は頭脳よりも先ず下半身で他のサル類に勝ったのである。だから最古の美術が腹部のふくれた、おそらく妊娠した女性の堂々たる像を描き、また多数の女性器をいたるところに記しているのかもしれない。(中井久夫「親密性と安全性と家計の共有性と」初出2000年『時のしずく』所収)

そうか、人間は下半身でサルに勝ったのか。最近の日本人はヤル回数減ってるらしいから、サル並みかもな。どうも若いやつのなかにはケッタイなのが多いと思ってたけれど、あいつらサルなんだな・・・

元々の問いに戻れば、十万年ぐらいは変わってないってのは、キクラデスなんてせいぜい五千年前なんだから、年中やってて当たり前なんだ。いやあベンキョウになった。

中井久夫ってのはなんでこんなに広いんだろ、文学研究者で出発して(青年期に西脇順三郎と手紙のやりとりがあるなどということがある)、科学者(名高い「破門」)、精神科医、歴史家、詩人・・・


歴史のことをわずかでも考えてると、50年前にあれが起こったとか、例えば学園紛争があったとか70年前のあの戦争とかだけに思いを馳せてるヤツってのは小者に見えてくるね、だいたい歴史家ってのはそう感じてるんじゃないか。

でも20世紀には人類史上とんでもないことが起こったのは間違いないね。





地球から見れば、ヒトは病原菌であろう。しかし、この新参者はますます病原菌らしくなってゆくところが他と違う。お金でも物でも爆発的に増やす傾向がますます強まる。(中井久夫「ヒトの歴史と格差社会」初出2006年『日時計の影』所収)


10世紀後まだ人類が滅んでなかったら、未来の、つまり30世紀の歴史家は「我々の不幸の根源20世紀」とたぶんいうだろうよ。で、21世紀以降の女たちは20世紀の悪のせいで、宝の持ち腐れする宿命になったとね。いやあやっぱりサルに勝ったヒト族としては本来、少なくも3人ぐらいは産まないとな。