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2026年5月16日土曜日

政府債務を踏み倒す「インフレ税」導入は杞憂では全くない

 



杞憂とあるが全くそうではなく、もはやインフレ税導入以外には方法がないんだよ。



◼️バラマキ財政で政府債務を踏み倒す「インフレ税」がやってきた 2025.11.24



何度も繰り返してきたが、こういう話は昔から言われていて、現在は、2012年の深尾光洋論文での6番目以降のシナリオ実現過程だな。


◼️日本の財政破綻のシナリオーー深尾光洋「日本の財政赤字の維持可能性」2012年、PDF

(1)選挙民を恐れる政治家が増税を先延ばし続けて政府の累積赤字が拡大する。この結果、金利上昇による利払い負担増加のリスクが蓄積されていく。


(2) 日本の金融資産の大部分を保有する 50 歳以上の高齢者層も、 政府に対する信頼を徐々になくし、円から不動産、株式、外貨、金等に資金を移動し始める。


(3)長期国債価格が下落し、長期金利が上昇を始める。


(4)新規発行や借り換え国債の利払い負担増加に直面した政府が、発行国債の満期構成を短縮し、主に短期国債で赤字をファイナンスするようになる。日銀がゼロ金利政策を続けている間は、 政府の利払い負担は増加せず、 財政破綻を先延ばしできる。 しかし同時に、国債の満期構成の短期化は、将来の短期金利の上昇で、政府の利払いが急増するリスクを増大させる。

(5)政府の財政悪化に伴い、上記(2)の資金シフトが加速する。特に高齢化に伴う貯蓄率の低下や財政赤字の拡大によって経常収支が赤字化すると、大幅な円安になるリスクが高まる。実際に円安、株高が発生すれば、景気にはプラスとなりバブル的な景気回復を達成する可能性もある。そうなればインフレ率も上昇し始める。景気回復は税収を増大させ、財政赤字を減少させる。この時点で大幅な増税と赤字の削減が出来れば、財政破綻は避けられる可能性がある。


=>この場合、政府はタイミングの良い増税で健全化を達成できる。


しかし政府が増税に躊躇すると、以下のシナリオに突入する。

(6)日銀はインフレ率の上昇に対して金利引き上げによる金融引き締めを行うが、これで政府の利払いが爆発的に増大し、政府の信用が急激に低下する。


(7)政府が日銀の金融政策に介入して、低金利を強制したり、国債の買い取りを強制したりすれば、インフレがさらに加速し、国債価格は暴落する。


(8)金利の急激な上昇で長期国債を大量に保有する銀行が、巨額の損失を被り、政府に資金援助を要請する。

(9)政府が日銀に国債の低利引き受けを強制する場合には、政府は利払い増加による政府債務の急増を避けることが出来る。この場合は、敗戦直後のインフレ期と同様に、政府債務を大幅に引き下げることが可能で、政府は財政バランスの回復に成功する。しかし、所得分配の上では、預金や国債、生命保険、個人年金などの金融資産を保有する人々が、その実質価値の喪失で巨額の損失を被る。


=>この場合、政府はインフレタックスにより財政を健全化できる。しかし金融資産の実質価値の大幅低下により、生活資金に困る多数の人々を生み出す。



あるいはーー、


増税が難しければ、インフレ(による実質的な増税)しか途が残されていない恐れがあります。(池尾和人「このままでは将来、日本は深刻なインフレに直面する」2015年)

「妙案みたいなものは、もう簡単には見つかりません。『シートベルトを強く締めてください』と呼びかけたほうがいいかもしれませんね」 (池尾和人発言ーー「日銀バブルが日本を蝕む」」藤田知也, 2018年)

政府が財政規律を導入しないと、この金融政策はうまく機能しないと思います。徳政令か、インフレでゼロ価値にしてしまうといったドラスティックな対応が必要になってくるかもしれません。債務のリネゴシエーションが日本でも起こり得るかもしれません。


日本の場合、国債の保有者は国内の預金者なので可能かもしれませんが、徳政令はハイパーインフレ―ションの下では国民は財産を一気に失ってしまうことになります。そこから、この高齢化社会で立ち直れるのか。それぐらい厳しい条件だと政治家が認識して、責任を持って財政規律を導入しないと、状況はなかなか改善しないと思います。(北村行伸一橋大学経済研究所教授、如水会報(一橋大学OB誌)2017年10月号)


最近では、一橋大学名誉教授の《齊藤誠[2023]は、ハイパーインフレ(激性インフレ)により敗戦国と同じ方法で国債費の重圧を大幅に軽減しようという処方箋を提案している 》そうだ[参照]。私の知る限りで齊藤誠さんはひどく穏健で誠実な方なのだが、どうやら吹っ切れたようだ。



かつて日銀の知恵袋と呼ばれた早川英男氏ならこうだ。


◼️「高市政権がやっているのは「物価高促進政策」だ/政治は巨額のばらまきを自らの既得権と誤解しているのか」早川英男 : 富士通エグゼクティブアドバイザー、2025/12/10

高市早苗政権が誕生して2カ月足らず。憲政史上初の女性首相とあってか、政権支持率は著しく高い。ただ政策面では内政、外交の双方で波風が高まってきた。

日本経済の環境はアベノミクスの時代と比べ大きく変化した

外交面では、台湾有事をめぐる発言が中国との間で大きな波紋を呼んでいる。一方、内政面では財政・金融政策が関心の的だ。


首相就任以前から高市氏の経済政策を不安視する向きは識者の間で多かった。周知のように同氏は、金融緩和と財政出動を重視し、自身が尊敬する故安倍晋三元首相の路線を継承している。


しかし、日本経済の環境はアベノミクスの時代と比べ大きく変化した。当時はデフレが続き、過度の円高が産業界の悩みだった。しかし今や状況は反転し、物価高と円安が最大の課題となっている。


また、当時のマクロ環境は需要不足だったが、今は人手不足の深刻化で賃金が上昇している(賃上げが物価高に追いつかないのは問題だが)。この環境下で金融緩和と大型財政出動を続ければ、インフレはさらに強まり、物価高対策ならぬ物価高政策になってしまう。



インフレ税の、一般の人にも分かりやすいだろう具体的なメカニズムは次の通り。


インフレ課税というのは、インフレを進める(あるいは放置する)ことによって実質的な債務残高を減らし、あたかも税金を課したかのように債務を処理する施策のことを指す。具体的には以下のようなメカニズムである。


例えばここに1000万円の借金があると仮定する。年収が500万円程度の人にとって1000万円の債務は重い。しかし数年後に物価が4倍になると、給料もそれに伴って2000万円に上昇する(支出も同じように増えるので生活水準は変わらない)。しかし借金の額は、最初に決まった1000万円のままで固定されている。年収が2000万円の人にとって1000万円の借金はそれほど大きな負担ではなく、物価が上がってしまえば、実質的に借金の負担が減ってしまうのだ。


この場合、誰が損をしているのかというと、お金を貸した人である。物価が4倍に上がってしまうと、実質的に貸し付けたお金の価値は4分の1になってしまう。これを政府の借金に応用したのがインフレ課税である。


現在、日本政府は1000兆円ほどの借金を抱えているが、もし物価が2倍になれば、実質的な借金は半額の500兆円になる。この場合には、預金をしている国民が大損しているわけだが、これは国民の預金から課税して借金の穴埋めをしたことと同じになる。実際に税金を取ることなく、課税したことと同じ効果が得られるので、インフレ課税と呼ばれている。(加谷珪一「戦後、焼野原の日本はこうして財政を立て直した 途方もない金額の負債を清算した2つの方法」2016.8.15)


これから国民の大半が嘗める塗炭の苦しみを、政府はホルムズ海峡封鎖やさらには世界戦争のせいにするだろうが、これがなくてもインフレ課税はもはや避けられないのだよ、



財政赤字問題の主因は社会保障費の増大にあるのであって、しかし国民はそれを支える税負担を嫌う。したがってやむえない帰結だ。特に日本はきわめて民主主義=大衆の支配社会だからな、《現実の民主主義社会では、政治家は選挙があるため、減税はできても増税は困難》(ブキャナン&ワグナー著『赤字の民主主義 ケインズが遺したもの』)。つまり日本は終始、減税ポピュリズムに踊ってきたオクロス社会だ、ーー《民主とは「根拠の乏しい臆説にほかならぬオピニオンをまとめたものによって右往左往させられるオクロス(衆愚)の政治」のことだととっくに判明している。》(西部邁「公共的実践の本源的課題」実践政策学・創刊号(第 1  1 号)2015年、PDF


◼️大和総研理事長武藤敏郎「財政と社会保障 ~私たちはどのような国家像を目指すのか~」2017年1月18日

日本の場合、低福祉・低負担や高福祉・高負担という選択肢はなく、中福祉・高負担しかありえないことです。それに異論があるなら、 公的保険を小さくして自己負担を増やしていくか、産業化するといった全く違う発想が必要になるでしょう。


さらに低福祉高負担という話もでていた、《将来を見据えると、このまま社会保障制度の改革を行わない場合、給付と負担のアンバランスは、更に拡大すると見込まれる。これを放置すれば、現在の日本が「中福祉、低負担」を享受する見返りに、将来世代がツケを払う形で「中福祉、高負担」、更には「低福祉、高負担」への転換を余儀なくされることとなりかねない。》(令和2年度予算の編成等に関する建議 令和元年 11 月 25 日  財政制度等審議会 PDF


もう大半の経済学者は国民を説得するのを諦めてるから、最近はこの「常識」をあまり言わないだけなんだ、ーー《社会保障は原因が非常に簡単で、人口減少で働く人が減って、高齢者が増えていく中で、今の賦課方式では行き詰まります。そうすると給付を削るか、負担を増やすかしかないのですが、そのどちらも難しいというのが社会保障問題の根本にあります。》(小峰隆夫「いま一度、社会保障の未来を問う」2017年)


世界的にもこれは「常識」。