2019年5月1日水曜日

平成の総括

米国の社会学者エズラ・ヴォーゲルが『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を上梓したのは1979年だが、平成とは何であったかといえば、日本が真の意味で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」になったことであろう。




平成31年度予算の編成等に関する建議(平成30年11月20日 財政制度等審議会)(抄)
Ⅰ.総論

1.平成財政の総括

振り返れば、平成時代の財政は、長年の懸案とされていた消費税の導入の実現とともに始まった。平成に入って実質的に最初の編成となった平成2年度(1990年度)予算では、15年もの歳月と多大な歳出削減努力を経て、特例公債からの脱却が達成 された。

(中略)

今年度末には平成2年度(1990年度)末の5.3倍に当たる883兆円もの公債残高が積み上がり、一般政府債務残高は対GDP 比238%に達しようとしている。歴史的にみても、足下の債務残高対GDP比は、先ほど言及した第2次世界大戦末期の水準に 匹敵している。

平成という時代は、こうした厳しい財政状況を後世に押し付けてしまう格好となっている。

(中略)

財政にもまた「共有地の悲劇」が当てはまる。現在の世代が「共有地」のように財政資源に安易に依存し、それを自分たちの ために費消してしまえば、将来の世代はそのツケを負わされ、財政資源は枯渇してしまう。悲劇の主人公は将来の世代であり、 現在の世代は将来の世代に責任を負っているのである。 先人達や、新たな時代そして更にその先の時代の子供達に、平成時代の財政運営をどのように申し開くことができるのであろ うか。

(中略)

言うまでもなく、税財政運営の要諦は、国民の受益と負担の均衡を図ることにある。他方で、誰しも、受け取る便益はできるだ け大きく、被る負担はできるだけ小さくしたいと考えるがゆえに、税財政運営は常に受益の拡大と負担の軽減・先送りを求める フリーライダーの圧力に晒される。平成という時代は、人口・社会構造が大きく変化する中で、国・地方を通じ、受益と負担の乖 離が徒に拡大し、税財政運営がこうした歪んだ圧力に抗いきれなかった時代と評価せざるを得ない。

(中略)

新たな時代においては、財政健全化どころか一段と財政を悪化させてしまった平成という時代における過ちを二度と繰り返す ことがあってはならず、手をこまねくことは許されない。


逆に言えば、平成とは不幸にも「ジャパン・アズ・ナンバーワン」であることにまったく不感症のインテリなる種族が跳梁跋扈するようになった時代でもある。