2019年12月22日日曜日

寄生虫の歌

自分の頭と心とを通過させないで、唇の周りに反射的な言葉をビラビラさせたり、未消化の繰り返しだけやる連中がいるけれどーー学者に、とはいわないまでも研究者にさーー、こういう連中は、ついに一生、本当のテキストと出会うことはないんじゃないだろうか? (大江健三郎『燃え上がる緑の木』第三部「大いなる日」)

ビラビラ寄生虫がこのブログにつきましたので
しばらく蚊居肢ブログ本来の姿に戻って
ーーつまりは「ガガンボに尼っ子の肢腫れあがる」に戻って
寄生虫を追い払う試みをします。

白状させていただきますが、
蚊居肢子はお口のビラビラをきらっているわけではありません。
ただし下半身のお口のほうのビラビラ愛好家であり
上半身のほうはすぐに鳥肌が立ち嘔吐をもよおしてしまいます。






朝の歌  黒田喜夫


朝の病院の一室で
若い女が尻をむいてしやがんでいるのを
覗いた しやがんだ女の
脚もとに尻から
だらりと条虫の白い突端がたれ
そのまま動かない
おれも動けない数十分
とつぜん倒れるように手を前についた
手をついてがまの姿勢になつた
女の脚の間で白い虫がくねりだし
くねりだしたと思うと尻のなかへ
じりじり戻りだした 排するちからと
抗するちからが極まり
ながく女が呻きだしたとき おれの
烈しい今朝の嘔吐感がきた
そのとき
突端をちぎりすてた白い虫が
卑猥を超えた姿態のおく
寄生虫の延安へ
くねり還る瞬間をおれは見た