2020年4月19日日曜日

コロナ後の2つのシナリオ

わたくしの知る限りで、ようやく「まともな」経済学者がコロナ後の世界の予測をツイッターで示している。野口悠紀雄による2つのシナリオである。


シナリオ①:国債の日銀買入れ、生産力の低下、需要の回復でインフレが起きる
野口悠紀雄@yukionoguchi10 2020419

いまは #給付金 を「貰う」ことに関心が集中している。しかし、いずれ誰かが負担しなければならなくなる。本当は、そのおよその姿に関する合意が必要だ。

本来必要なのは #富裕税(多額の資産を保有する人への課税)の創設だ。ただし、いまの日本の政治家にできるかといえば、絶望的にならざるをえない。

現実にありうるのは、国債発行が膨らんで金利が上がるか、それを日銀が購入してインフレになるか、あるいは消費税の大増税かだが、どれも歓迎できる姿ではない。

国債の日銀買入れ、生産力の低下、需要の回復でインフレが起きるのが、一番恐ろしいシナリオだ。

このシナリオ①が、いわゆるハイパーインフレシナリオであり、太平洋戦争後起こったことである。野口氏は富裕税の創設としているが、仮にその絶望的に不可能であったことがありえても、今後発生するだろうコロナによる巨額の赤字国債はたんなる富裕税だけで賄いきれるとは思えない。結局、ハイパーインフレ➡︎預金封鎖➡︎新円発行という太平洋戦争後に近似したパターンになるのではないか、ーー太平洋戦争は、国民の貯蓄を悪性インフレによってチャラにすることで帳尻を合わせたが、それは戦時中には誰にも思い寄らないことであった。》(中井久夫「戦争と平和ある観察」)

「平成財政の総括」(財務省、平成31年4月17日、pdf



野口氏は上のツイートに引き続き、シナリオ②を示している。失業増大でーーある意味で中国にすべて食われてーーコロナ後もインフレはないというものである。


シナリオ②:失業増大で、消費需要は回復しない➡︎コロナ後 の世界で #インフレ は発生しない
野口悠紀雄@yukionoguchi10 2020419

異次元金融緩和で日銀は国債を購入してマネーを増やし、物価を上げようとして、失敗した。マネーに対する需要がなかったからだ。いま、支払い手段としてのマネーに対する需要が急増している。しかし、財サービスへの需要が落ち込んでいるので、物価は上がらない

コロナ終息後、財政赤字が拡大し、日銀が買い支える可能性が高い。この時、マネーが増えてインフレになるか?生産力が低下したままで需要が急回復すればそうなる。しかし、実際には、中国の生産力が回復し、国内では失業増大で、消費需要が回復せぬ可能性が高い。

つまり、#コロナ後 の世界で #インフレ は発生しない。むしろ低成長が続く #L字回復 になる。したがって、実物資産の有利性は実現せず、#株価 がコロナ前のバブル水準に戻ることはない。

コロナ期間が長いほど、コロナ後における失業増大による所得の落ち込みと消費の落ち込みが大きくなり、需要回復が弱くなる。

終戦直後の日本で、傾斜生産方式が取られた。復金債の日銀引き受けで資金を調達し、鉄鋼、石炭などの設備に投資した。これがインフレを起こしたのは、生産力壊滅の状態で投資を増やしたからだ。#コロナ後 の世界はこれと違う。

半年に1回旅行している人が、外出規制で旅行をやめたとする。解除になったら、残りの半年に2回旅行するか?普通はしないだろう。つまり、規制期間に失われた消費は、解除後に復活することはない。#V字回復論 は、復活を仮定している。