2020年8月4日火曜日

愛の仰け反り



前回貼り付けたライフの写真だが、実に美しい少女ののけぞり具合である。






【愛】:会意兼形声。旡カイ・キとは、人が胸を詰まらせて後ろにのけぞったさま。愛は「心+夂(足をひきずる)+(音符)旡」で、心がせつなく詰まって、足もそぞろに進まないさま。(漢字源)



Godard, Sauve qui peut (la vie)


私はいまも思いだす、そのときの暑かった天気を、そんな日なたで給仕に立ちはたらいている農園のギャルソンたちの額から、汗のしずくが、まるでタンクの水のように、まっすぐに、規則正しく、間歇的にしたたっていて、近くの「果樹園」で木から離れる熟れた果物と、交互に落ちていたのを。そのときの天候は、かくされた女のもつあの神秘とともに、こんにちまでもまだ私に残っている、――その神秘は、私のためにいまもさしだされている恋なるもののもっとも堅固な部分なのだ。(プルースト「ソドムとゴモラ」)



Mila Kunis

そして突然夢のなかでサン=ルーは愛人がいつものくせのように官能の瞬間に規則正しく間歇的に発するあのさけび声をはっきり耳にしたのであった。 (プルースト「ゲルマントのほう」)


もののふの八十氏川の網代木にいざよふ波のゆくへ知らずも(人麻呂)


ベルトルッチのお気に入りの映像まで想起してしまった。


Bertolucci, Novecento


漢字が示すように、結局、愛とは旡(ノケゾリ)にかかわるのではなかろうか・・・思い返してみれば、少なくとも蚊居肢散人の愛は女たちの首の筋肉のイマージュともにある・・・あの喉首の筋肉は、胸骨舌骨筋やら胸鎖乳突筋やらというらしいが。







歌手でもわたくしを真に惹きつけるのは、首の筋肉の表情ではないだろうかと疑う必要がある気がしてきた。