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2019年3月13日水曜日

恋愛、結婚、出産の「3放世代」

日本の新聞雑誌テレビの類にはほとんど触れないので、みなさんが知っているだろうひどく常識的なことを知らないことがある。以前はツイッターを眺めることがあったのでいくらかの情報は入ったが、今はそれもやめてしまったので無知度がよりいっそう高くなった。

韓国や中国の出生率のひどい低下についてはそれなりに知っていたが、2018年段階では、韓国は、1.0を割ったそうだ。これにはビックリした。





韓国統計庁は27日、2018年に同国で生まれた子どもの数(出生数)は前年より3万人あまり少ない約32万7千人で、過去最少だったと発表した。一人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は0.98と、データがある1970年以来初めて1を割り込んだ。少子化が進む日本よりも急速に出生率が低下しており、世界でも最低水準となった。(⋯⋯)

1980年に2.82だった韓国の出生率は、90年に1.57と日本と並ぶ水準に低下した。00年から15年の間は1.2前後だったが、17年に1.05に急減した。

背景には若者の経済不安がある。韓国では10年ごろから「恋愛、結婚、出産」をあきらめる「3放世代」という言葉が使われ始めた。(「韓国18年出生率、初めて1.0割れ 世界最低水準に」 日経新聞 2019/2/27


中国は、1.24らしい。

中国のメディア「China Daily」が掲載した政府の統計では、2017年に出生した新生児の数は1723万人で、出生率は1.24だった。(「高齢化する中国「一人っ子政策廃止」でも出生率は日本以下」FORBES JAPAN, 2018

日本はまだ「幸せな国」なんだな、これを見ると。

ついでに世界人口推計。


World Population by 2050


柄谷行人は2010年前後だったかに、次の覇権は中国ではなくインドだと言っていたが、人口だけをみれば上の通り。

2013年の大和総研のシミュレーション予測は(今後大きな異変がなければ)ほぼ正しいだろう。

世界の実質 GDP 成長率は、当面は平均年率 4%強で成長するものの、2020 年頃からは成長率が低下していくものと見込まれる。その原因は、世界 GDP 成長率の約半分を占める中国の寄与度が労働力人口の減少により、2020 年前後から低下するためである。予測の最終年である 2040 年においては、世界 GDP 成長率の寄与度はまだ中国が大きいものの、次第に米国とインドの寄与度が高まっていく。米国も高齢化による労働力人口の減少の影響を免れることはできないが、移民の流入でその影響が緩和されることや、インドは他国と比べて人口構成が若いため、労働力人口の低下のスピードが遅く、相対的に高めの成長率が維持されるものと考えられるからである。そのため、世界経済の牽引役は、中国から徐々に、米国やインドへと移り変わるものと考えられる。(大和総研レポート 「超高齢日本の 30 年展望」(武藤敏郎 監修)2013年)


次の図にあるように世界平均予測でも、人口の高齢化があるのだから、先進諸国は、日本だけではなくどの国でも年寄りの比重がひどく多くなってゆく、それは中国も含めてだ。


The aging World Population.




2050年とは、今から30年後だ。いま30歳の人なら60歳。この30年後に今の社会制度ーーたとえば社会保障制度がまだ保たれているなどと考える者は、ユートピアン(夢を見る人)だ。必ず大きな変貌がある。老人を年金以外で支えなくてはならなくなる。家族の再生が必要になる。家族とはアソシエーションと言い換えてもよいが。






⋯⋯⋯⋯

20世紀というのは人類史上ーーいや地球史上というべきかーー最悪の「不幸」が起こった世紀なのかもしれない。

地球から見れば、ヒトは病原菌であろう。しかし、この新参者はますます病原菌らしくなってゆくところが他と違う。お金でも物でも爆発的に増やす傾向がますます強まる。(中井久夫「ヒトの歴史と格差社会」2006.6初出『日時計の影』所収)





ーーもし人にとって愛の関係がもっとも大切なものとするなら、21世紀の若者の不幸の究極の原因はここにしかないんじゃないだろうか。

中井久夫は既に2000年、次のように家族を問うことによって、現在のシステムは近いうちに崩壊するだろうことを暗に予測している。

今、家族の結合力は弱いように見える。しかし、困難な時代に頼れるのは家族が一番である。いざとなれば、それは増大するだろう。石器時代も、中世もそうだった。家族は親密性をもとにするが、それは狭い意味の性ではなくて、広い意味のエロスでよい。同性でも、母子でも、他人でもよい。過去にけっこうあったことで、試験済である。「言うことなし」の親密性と家計の共通性と安全性とがあればよい。家族が経済単位なのを心理学的家族論は忘れがちである。二一世紀の家族のあり方は、何よりもまず二一世紀がどれだけどのように困難な時代かによる。それは、どの国、どの階級に属するかによって違うが、ある程度以上混乱した社会では、個人の家あるいは小地区を要塞にしてプライヴェート・ポリスを雇って自己責任で防衛しなければならない。それは、すでにアメリカにもイタリアにもある。

困難な時代には家族の老若男女は協力する。そうでなければ生き残れない。では、家族だけ残って広い社会は消滅するか。そういうことはなかろう。社会と家族の依存と摩擦は、過去と変わらないだろう。ただ、困難な時代には、こいつは信用できるかどうかという人間の鑑別能力が鋭くないと生きてゆけないだろう。これも、すでに方々では実現していることである。(中井久夫「親密性と安全性と家計の共有性と」初出2000年『時のしずく』所収)