このブログを検索

2023年3月7日火曜日

長期戦を予言する勇気と想像力

 

前回貼り付けた山口敬之発言の切り抜き版の元動画を少しだけ覗いてみたがーー全編版は3時間半もあり早送りでも見る気はしないーー用田和仁(元陸上自衛隊西部方面総監 陸将)の発言は安定してるね、既に4月時点で「アメリカがウクライナ戦争の一番の悪党」と言い放った用田和仁元陸将は。




パネルを提示しつつ語る用田元陸将のやり方は他の人も見習ってほしいもんだね、タラタラ喋るだけでは聴く気にならないよ。

今回の動画から用田さんの提示したパネルをいくつか貼り付けておこう。


もうバクムートは事実上終わったので、次はコンスタンチノフカの攻防になると。




さらに、ウクライナ軍ーーもはや事実上のNATO軍ーーの反撃があるとしたら、次の形だと。




赤い線(点線)はロシア軍の塹壕の準備があるが、マリウポリの箇所は塹壕が少ない、宇の春季攻撃はここに向かうのではないか、だがこの防衛塹壕の過小さは露軍の罠かも、と

で、アングロサクソンはいったいどうするつもりかい?



で、用田さんによれば、あと1〜2年は続くんじゃないか、と。




明晰だね、用田さんは。予想が当たるか否か別にして、その発言に信頼がおけるよ。プルースト的、と言ったってよい。


人は勝負のつかぬ長期戦を予言する勇気もなければ、予言するだけの想像力もなかった。…


「長期にまたがるだろうか?」と私はサン = ルーにたずねた。「いや、ぼくは非常に短期の戦争だと思うんだ」と彼は私に答えた。しかしこんども、いつもと同様に、彼の論拠は、文書からえたものだった。 「モルトケの予言を考慮に入れながら、読みかえしてみたまえ」と彼は、あたかも私がすでにそれを読んでいたかのように、私にいった、「大編成部隊の行動に関する一九一三年十月二十八日の政令を。そうすれば、きみにわかるだろう、平時予備軍の補充が計画されてもいなければ、予測さえされていないことを。そういう編成は、戦争が長びくはずなら、欠かすことができないんだからね。」私には、問題の政令を、戦争が短期のものであろうという証拠として解釈されるべきではなくて、戦争が短期のものであるという見通し、戦争が今後どうなるかという見通しを、欠くものとして解釈されるべきであり、その政令を起草した当事者たちの側には、戦争が謬着状態に陥るとき、全面にわたり物資のおそるべき消耗をきたすであろうことや、作戦のさまざまな舞台の連帯が必要になってくるであろうことの、憶測というものがなかったのだ、という気がするのであった。(プルースト「見出された時」)



………………


ここでもう一人、宇露紛争初期から実に安定的な田中宇の最新の記事の冒頭を貼り付けておこう。



◼️さらに進む覇権の多極化 2023年3月6日  田中 宇

ウクライナ戦争の長期化で世界は、米国側と非米側に分断された状態が固定化している。米国はウクライナ開戦後、全世界がロシアを強く敵視してウクライナに味方することを強要した。米国は2014年にウクライナの反ロシア派(主にネオナチ)をテコ入れし、政権転覆して米傀儡の極右政権に替え、ウクライナのロシア系住民を殺害弾圧し続けてロシアを怒らせ、ウクライナを内戦に陥らせた。米国は2021年秋からウクライナ内戦を激化させ、ロシアが露系住民を守る正当防衛としてウクライナに侵攻するように仕向け、2022年2月の開戦につなげた。ウクライナ戦争は米国の策略として起こされた戦争で、ロシアは被害者の側だ。しかし米国側(米欧日)のマスコミは、善悪を逆転してロシアを極悪に描き、米傀儡のウクライナ軍が国内の露系住民を殺し続けたことを意図的に無視してウクライナを善玉に描く歪曲報道・プロパガンダのみに終止した。 (Escobar: Putin's "Civilizational" Speech Frames Conflict Between East And West

対米従属な米国側の諸国(先進諸国。米英EU日豪NZ加)は、米国の言いなりで善悪逆転のプロパガンダを鵜呑みにし、ロシア敵視・ウクライナ支援に邁進している。だが、米国の言いなりになる必要がない非米側の諸国は、米国のプロパガンダに乗らず、中立的な立場をとっている。米国は、中立国もロシアの仲間とみなして経済制裁する姿勢をとった。そのため、それまで米傀儡でないが米国と親しくして米覇権下にいた非米側諸国は、政治経済安保の全面で、米国を敬遠する傾向を強めた。 (ロシア敵視で進む多極化

非米諸国はそれまで(とくに冷戦後)バラバラに存在していたが、ウクライナ開戦後、米国から経済制裁されても平気なように、非米側として米国に依存しない国際的な決済機構や安保体制などの世界システムを持つ必要に迫られた。非米側の世界システムとして使えそうなものは、すでに存在していた。BRICSや上海機構やG20、中国の経済覇権戦略である一帯一路などがそうだ。 (China Says Ready To "Join Forces With Russia" To "Defend National Interests" As Putin Confirms Xi Visit



みなさんも国際政治学者ムラや主流メディアなどによる大本営発表の「寝言」に耳を傾けるのはいくらなんでももうやめないとな。



人は、まるで恋をしているときのように、目かくしをして、新聞を読んでいるのだ。事実を理解しようとはつとめない。愛人の言葉に耳を傾けるように、主筆の甘言に耳を傾けている。on lit les journaux comme on aime, un bandeau sur les yeux. On ne cherche pas à comprendre les faits. On écoute les douces paroles du rédacteur en chef, comme on écoute les paroles de sa maîtresse. (プルースト「見出された時」)