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2024年5月26日日曜日

フェミニストたちのとても滑稽な奇妙さ

 

私は何度も繰り返してきたんだがな、最近はもう飽きたのであまり言ってないが。

わたしは目を瞠った。「家父長制と闘う」「ジェンダーの再生産」「自分を定義する」……。かつて女性学・ジェンダー研究の学術用語だった概念が、日常のことばのなかで使われている。(上野千鶴子「セクハラ「ガマンしない娘たち」育てた誇り」 朝日新聞 2018年5月23日)


ーーこういった浅薄なフェミニストの「家父長制と闘う」に代表される主張が、前回示した「最悪の女性原理の時代」の訪れにおおいに貢献したんだよ。


上野千鶴子に限らないが、日本のフェミニストはまったく勉強不足なんだな。ここでは、根源的フェミニストであるカミール・パーリアをまず引用しておくが。

女性研究は、チャレンジなきグループ思考という居ごこちよい仲良し同士の沼沢地である。それは、稀な例外を除き、まったく学問的でない。アカデミックなフェミニストたちは、男たちだけでなく異をとなえる女たちを黙らせてきた。Women's studies is a comfy, chummy morass of unchallenged groupthink. It is, with rare exception, totally unscholarly. Academic feminists have silenced men and dissenting women. (Camille Paglia, Free Women, Free Men: Sex, Gender, Feminism, 2018)

フロイトを研究しないで性理論を構築しようとする女たちは、ただ泥まんじゅうを作るだけである[Trying to build a sex theory without studying Freud, women have made nothing but mud pies](カミール・パーリアCamille Paglia  "Sex, Art and American Culture", 1992年)



何よりも「家父長制」をイメージとしてのみ捉え、機能としての家父長制をまったく理解しないまま女性解放運動してきたんだろうよ。

判で押したようにことごとく非難される家父長制は、避妊ピルを生み出した。このピルは、現代の女たちにフェミニズム自体よりももっと自由を与えた。Patriarchy, routinely blamed for everything, produced the birth control pill, which did more to free contemporary women than feminism itself.〔・・・〕


フェミニズムが家父長制と呼ぶものは、たんに文明化である。家父長制とは、男たちによってデザインされた抽象的システムのひとつだ。だがそのシステムは女たちに分け与えられ共有されている。What feminism calls patriarchy is simply civilization, an abstract system designed by men but augmented and now co-owned by women.”(Camille Paglia, Vamps and Tramps , 1994)

文明が女の手に残されたままだったなら、われわれはまだ掘っ立て小屋に住んでいただろう。If civilization had been left in female hands, we would still be living in grass huts. (カーミル・パーリア『性のペルソナ』 Camille Paglia, Sexual Persona、1990年)



フロイトラカン派的に、より一般的に言えば、次のようなことだな、

ジェンダー理論は性差からセクシャリティを取り除いてしまった。ジェンダー理論家は性的実践を語り続けながら、性を構成するものへの問いを止めた[Gender theory [...] it removed sexuality from sexual difference. While gender theorists continued to speak of sexual practices, they ceased to inquire into what constituted the sexual; ](ジョアン・コプチェク Joan Copjec "Sexual Difference" 2012年)

驚くべきは、現代ジェンダー研究において、欲動とセクシャリティにいかにわずかしか注意が払われていないかである[It is striking how little attention has been paid to the drive and to sexuality in contemporary gender studies.](ポール・バーハウ  Paul Verhaeghe「ジェンダーの彼岸にある欲動 drive beyond gender 」2005年)


欲動とは欲動の身体のことだが、フェミニストたちが語る身体はファルス化された身体に過ぎない[参照]。




前回示したようにファルス≒家父長制であり、連中は家父長制打倒を言い募りながら、家父長制化された身体しか語っていないというとても滑稽な奇妙さがある。



ま、ある意味やむえないがね、欲動の身体とは事実上、悪魔の身体なんだから、自らのなかにいる暗黒の身体的要求を認めたくはないんだろうよ


悪魔とは抑圧された無意識の欲動的生の擬人化にほかならない[der Teufel ist doch gewiß nichts anderes als die Personifikation des verdrängten unbewußten Trieblebens ](フロイト『性格と肛門性愛』1908年)

人間の原始的、かつ野蛮で邪悪な衝動(欲動)は、どの個人においても消え去ったわけではなく、私たちの専門用語で言うなら、抑圧されているとはいえ依然として無意識の中に存在し、再び活性化する機会を待っています。

die primitiven, wilden und bösen Impulse der Menschheit bei keinem einzelnen verschwunden sind, sondern noch fortbestehen, wenngleich verdrängt, im Unbewußten, wie wir in unserer Kunstsprache sagen, und auf die Anlässe warten, um sich wieder zu betätigen.(フロイト書簡、Brief an Frederik van Eeden、1915年)

……このような内部興奮の最大の根源は、いわゆる有機体の欲動[Triebe des Organismus]であり、身体内部[Körperinnern]から派生し、心的装置に伝達されたあらゆる力作用の代表であり、心理学的研究のもっとも重要な、またもっとも暗黒な要素 [dunkelste Element]でもある。

Die ausgiebigsten Quellen solch innerer Erregung sind die sogenannten Triebe des Organismus, die Repräsentanten aller aus dem Körperinnern stammenden, auf den seelischen Apparat übertragenen Kraftwirkungen, selbst das wichtigste wie das dunkelste Element der psychologischen Forschung. (フロイト『快原理の彼岸』第5章、1920年)

エスの要求によって引き起こされる緊張の背後にあると想定された力を欲動と呼ぶ。欲動は心的生に課される身体的要求である。Die Kräfte, die wir hinter den Bedürfnisspannungen des Es annehmen, heissen wir Triebe.Sie repräsentieren die körperlichen Anforderungen an das Seelenleben.(フロイト『精神分析概説』第2章1939年)