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2024年6月25日火曜日

引き返し不能点

 


だなあ、第三次大戦はもはや仕方がないよ。例えば、エマニュエル・トッドがロシアの特別軍事作戦開始3ヶ月後に『第三次世界大戦はもう始まってる』と書いたことはあるにせよ、引き返し地点はないではなかった。真の「引き返し不能点」はこの今だろうね。


戦争こそ、明確な言語化やイメージ化を経由せずに行動化される最たるものである。四年三ヶ月にわたって不毛な会戦を反復し、ヨーロッパに回復不能の打撃を与えた第一次大戦は、双方とも一ヶ月で終わると思って始まった。日中戦争は南京陥落で終結するはずだった。〔・・・〕


戦争への引き返し不能点は具体的に感覚できるものである。太平洋戦争の始まる直前の重苦しさを私はまざまざと記憶しており、「もういっそ始まってほしい。今の状態には耐えられない。蛇の生殺しである」という感覚を私の周囲の多くの人が持っていた。辰野隆のような仏文学者が開戦直後に「一言でいえばざまあみろということであります」と言ったのは、この感覚からの解放感である。〔・・・〕


戦争へと「踏み越える」際の「引き返し不能点」は政治的よりも心理的に決定されると私は思う。戦争は避けられないという無力感が世を覆うようになることである。この独特の無力感を引き起こすことこそ、戦争を起こしたい勢力がもっとも重視し努力するものである。それは「心理的引き返し不能点」を手前に引き寄せる試みである。その手段は多様で持続的なものでなければならない。宣伝だけでなく、動員をはじめ、種々のしめつけや言論統制である。(中井久夫「「踏み越え」について」2003年『徴候・記憶・外傷』所収)



で、日本という国は相変わらずおバカだなあ、集団的西側の一員として柄にも似合わぬ姿勢を誇示して、とくに中露朝の敵国に認定されてしまって。米属国の宿命とはいえ、なんとかならなかったものかねえ(もはや過去形だよ)。


………………


※附記


◾️プーチン発言 於ロシア外務省指導部との会談、2024年6月14日 ソース

西側諸国の身勝手さと傲慢さが、現在の極めて危険な状態を招いた。  われわれは許容できないほど引き返せない地点まで近づいてしまった。

The selfishness and arrogance of Western states have led to the current extremely dangerous state of affairs.  We have come unacceptably close to the point of no return.  

эгоизм и высокомерие западных государств привели к нынешнему крайне опасному состоянию дел. Мы подошли недопустимо близко к точке невозврата. 

最大の核兵器保有国であるロシアに戦略的敗北を強いるという呼びかけは、西側諸国の政治家たちの極端な冒険主義を物語っている。彼らは自らが作り出す脅威の大きさを理解していないか、あるいは単に自らの免責と排他性を信じることに夢中になっているかのどちらかだ。このどちらも悲劇を招きかねない。

Calls to inflict a strategic defeat on Russia, which has the largest arsenal of nuclear weapons, demonstrate the extreme adventurism of Western politicians.  They either do not understand the scale of the threat that they themselves create, or are simply obsessed with the belief in their own impunity and in their own exclusivity.  Both of these can result in tragedy. 

Призывы нанести стратегическое поражение России, обладающей крупнейшими арсеналами ядерного оружия, демонстрируют запредельный авантюризм западных политиков. Они либо не понимают масштабы угрозы, которую сами порождают, либо попросту одержимы верой в собственную безнаказанность и в собственную исключительность. И то, и другое может обернуться трагедией.


▶︎Putin's Full Speech at Foreign Ministry