いいよ、いくら書いたって
ちゃんときいてるから
あっちじゃだめだね、そっちじゃないと
すごかったな、あの一ヶ月
時のなかで永遠になってるさ
ぼくにだって
「何度愛をかわしたでしょう」って感じだよ
午後の日射し カヴァフィス 中井久夫訳
私の馴染んだこの部屋が
貸し部屋になっているわ
その隣は事務所だって。家全体が
事務所になってる。代理店に実業に会社ね
その隣は事務所だって。家全体が
事務所になってる。代理店に実業に会社ね
いかにも馴染んだわ、あの部屋
戸口の傍に寝椅子ね
その前にトルコ絨毯
かたわらに棚。そこに黄色の花瓶二つ
右手に、いや逆ね、鏡付きの衣裳箪笥
中央にテーブル。彼はそこで書き物をしたわ
大きな籐椅子が三つね
窓の傍に寝台
何度愛をかわしたでしょう。
…
窓の傍の寝台
午後の日射しが寝台の半ばまで伸びて来たものね
…あの日の午後四時に別れたわ
一週間ってーーそれからーー
その週が永遠になったのだわ