トランプ米大統領は24日、ツイッターで、日本や中国などに対し、中東の原油輸送の大動脈ホルムズ海峡を通過する自国の石油タンカーは自分で守るべきだと主張した。「なぜ米国が代償なしに他国のために輸送路を守っているのか」と指摘。「米国は最大のエネルギー生産国になっており(ホルムズ海峡に)とどまる必要さえない」とも述べた。
トランプ氏はこれまでも同盟国に対し「応分の負担」を求めており、原油輸送路防衛についても同様の認識を示した形だ。ホルムズ海峡付近では13日、日本などのタンカー2隻が攻撃を受け、米国は「イランがやった」と非難。米海軍第5艦隊が日本のタンカーの救援活動を行った。
一方、トランプ氏は、イランによる20日の米無人偵察機撃墜を受けてイラン攻撃を計画したが、実行直前で撤回。外交解決を目指している。この日のツイートで「米国の要求は非常に単純だ。核兵器を持たず、これ以上、テロ支援をするなということだ」とイランに訴えた。
また、米政府はイランに対する圧力を強化する方針で、トランプ大統領は24日、イランの最高指導者ハメネイ師を対象とした新たな制裁を科す考えを表明した。 (【ワシントン時事】 2019年06月25日)
この発言は当然受け入れなくてはならない筈。米国の政策転回の必然的帰結のひとつだろうから。
こういった考え方は直接的には2013年、オバマの「世界の警察官を降りる」宣言に端を発するとしてよいだろう。
種々の人が私に書簡を送ってくる、「われわれは世界の警察官であるべきでない We should not be the world’s policeman」と。私は同意する。…
米国は世界の警察官ではない。悲惨な出来事が世界中で起こっている。そしてすべての悪事を正すことはわれわれの手に余る。America is not the world's policeman. Terrible things happen across the globe, and it is beyond our means to right every wrong. (オバマ「シリア内戦に関するテレビ演説 」2013/09/10)
トランプも例えば2018年の末にこう言っている。
米国は世界の警察官であり続けることは出来ない。まったく不公平だ、われわれ米国にすべての責務が負わされるのは。…われわれは世界中にばら撒かれている。われわれはたいていの人びとが聞いたこともない国々にさえいる。率直にいって、馬鹿げている。(トランプ、シリア撤退決定についての発言、Al Asad Air Base, Iraq, December 26, 2018)
The United States cannot continue to be the policeman of the world," said Trump. "It’s not fair when the burden is all on us, the United States... We are spread out all over the world. We are in countries most people haven’t even heard about. Frankly, it’s ridiculous.”
世界の警察官をやっていてもいいことはない。その労力はたいして評価されないにもかかわらず、ひどく金がかかる。警察官をやっていればときには失敗もする(例えば無辜の民の殺害)。そうすると世界じゅうから悪者扱いにされる。
90パーセント近くを中東の石油輸入に依存している日本の選択肢は少ない。
①ホルムズ海峡へ自衛隊派遣
②石油以外の電力供給源をすぐさま模索する(例えば原子力発電フル稼働)
③枝野幸男的解決法
次の画像は2015年のものらしいが、直近でも同様な立場らしい。
枝野的解決法以外の他の方法はあるのかな、これが自衛隊派遣反対、原子力発電反対という「日本的正義の味方」の人びとにとっての事実上の唯一の選択肢じゃないかね。実際は、原油が止まった生活に耐えられるはずはなく、神様にお祈りするって具合になるのだろうけど、ドウゾ止マリマセンヨウニ、と。
このオイノリだけじゃ不安だったら、「人権派」の皆さんは、日本がイランともっと仲良くなることを祈願することだな。もう一つのオイノリだけど、こっちのほうは、例えばふんだんな貢物をすればもう少しは実際的な効果があるはずだよ。
古森義久という右翼系とされる老ジャーナリストが半年前、「イランの対外姿勢には少なくとも3つの特徴」を掲げているけどね。これは、わたくしの知る限り、「とても正しい」指摘だな。
第1は、国際テロへの支援である。
イランが中東でイスラム過激派のテロ組織の「ヒズボラ」や「ハマス」に資金や武器を与えてきたことは広く知られている。イラン当局がこうしたテロ組織に実際の攻撃命令を下したとされる実例も頻繁に指摘されてきた。
米国歴代政権は1984年以来、イランを一貫して「テロ支援国家」に指定してきた。トランプ政権も最近イランの「イスラム革命防衛隊」を国際テロ組織に指定した。
第2は、イスラエル抹殺の宣言である。
イランは一貫してイスラエルという国家の存在を否定し、その破壊を国是として掲げてきた。この姿勢は、米国の中東政策の完全否定となる。さらには、イスラエルの存在を認めているイスラム系国家の政策とも衝突する。核兵器開発を目指すイランによる「イスラエル抹殺」宣言は、きわめて不吉で危険な威嚇といってよい。
第3は、自国民の人権抑圧である。
現在のイランは、イラン・イスラム共和国という正式国名の通り宗教が政治を支配する現代世界では珍しい宗教国家である。自国民にはイスラム古来の厳格な戒律を課しており、女性の社会進出の禁止、男女関係の乱れへの規律、同性愛の否定など、戒律への「違反」には死刑を含む苛酷な懲罰が加えられる。
イラン当局による自国民の人権弾圧は 国連も正面から取り上げて何度も警告や抗議を重ねてきた。イランの社会は、民主主義や人権を重んじる日本や米国などとはまったく異次元の世界なのである。(古森義久「親日」に惑わされてはいけないイランの現実、2019年6月26日)
やむえない選択肢だな、この国と仲良くなることをオイノリするのは。そうだろ、日本的人権派のみなさん?
性的行為に関しては女性が全面的に責任を負うということは、イランでは法的に支持されている。2006年1月3日、19歳の少女が絞首刑の判決を受けた。彼女をレイプしようとした3人の男のうちひとりを刺し殺したと、彼女が認めたからであった。ここにはパラドクスがある。もし彼女が自己防衛をしていなかったら、そしてレイプされるがままになっていたら、彼女は貞節に関するイランの法律によってむちうち100回の刑に処せられていただろう。また、もし彼女がレイプ時に既婚者であったら、彼女は姦通の罪で有罪となり、石打による死刑に処せられていただろう。つまり、なにが起こっても、責任は彼女だけが負うのである。(ジジェク『暴力』2009年)
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ホルムズ海峡に関してのみ言えば、米国はシェールガス、シェール石油の開発により、もはや自国のタンカーを防衛する理由はなくなってしまったのである。もし日本のタンカーの防衛をお願いしたいなら、大量の貢物が必要である。たいして必要もない種類の農産物大量輸入はその貢物の一つである。