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2021年6月30日水曜日

マリラ・ジョナスというポーランド女

 



マリラ・ジョナスのマズルカはすごい。こういう演奏は祖国の女しかできないんじゃないか。ポーランド女が踊ってるんだ。静謐さのなかに突然湧き出す、密やかながら激しい情動。東欧の黒い土のかおりがしてきて、全粒子の黒パンと山羊のチーズ、深いタンニン臭の赤ワインが欲しくなる。


最初にOp. 68, No. 4でビックリして、そのあと聴いたOp. 68, No. 3もとってもいい。最晩年のショパンだ。でもOp. 17, No. 2もスゴイ。多くの人が弾くOp. 17, No. 4もいいけど、このあまり弾かれないOp. 17, No. 2がいまはお気に入りだ。ここには強いノスタルジーがある。


彼女はナチのポーランド侵攻にともない強制収容所に収監されていたが、ナチ高官に彼女のファンがいて脱走を手助けしてもらい、ブラジルへ亡命。その後、ルービンシュタインに見出され、1946年にアメリカデビュー。だが収容所トラウマから逃れることは出来なかったのだろう、心身の不調を繰り返し、1959年、48歳で死亡。