いろんな意味があるからな、リーベってのは。でも基本は、水っぽいミルクか傷かどっちかじゃないかね。 |
愛という語[Wort »Liebe«]…この語ががこれほど頻繁にくりかえされてしかるべきものとは思えなかった。それどころか、この二音綴は、まことにいとわしきもの「recht widerwärtig]と思えるのだった。水っぽいミルクとでもいうか、青味を帯びた白色の、なにやら甘ったるいしろもののイメージに結びついていた [eine Vorstellung verband sich für ihn damit wie von gewässerter Milch, - etwas Weißbläulichem, Labberigem](トーマス・マン『魔の山』1924年) |
|
われわれは傷ついている。だから傷つけずには愛しえない[C'est parce que nous sommes blessés que nous ne pouvons aimer qu'en blessant] (ジョー・ブスケ Joë Bousquet, Mystique) |
ラカンの悦(享楽)はフロイトのリアルな愛の欲動のことだが、傷ついてんだよ、最初から。ブスケのいうようにね。 |
|||
傷ついた悦[jouissance blessée](Colette Soler, Les affects lacaniens 2011) |
|||
でも自己破壊しないように他者破壊へと投射するんだな、ふつうは。真に惚れ込んだらこれが起こるよ、もしこれを知らないだったら、リアルな愛を知らないってことだ。 |
|||
破壊は唯一、愛の悦の顔である[le ravage, c'est seulement la face de jouissance de l'amour](J.-A. MILLER, Le Partenaire-Symptôme 18/3/98 ) |
|||
破壊の別名は穴の原理だ。 |
|||
破壊は、愛の別の顔である。破壊と愛は同じ原理をもつ。すなわち穴の原理である[Le terme de ravage,…– que c'est l'autre face de l'amour. Le ravage et l'amour ont le même principe, à savoir grand A barré](J.-A. Miller, Un répartitoire sexuel, 1999) |
|||
穴ってのはトラウマのことで、傷の原理だ。ブスケは限りなく正しい。 |
|||
われわれはトラウマ化された悦を扱っている[Nous avons affaire à une jouissance traumatisée. ](J.-A. MILLER, Choses de finesse en psychanalyse, 20 mai 2009) |
|||
で、ミルクも破壊も嫌だったら、笑って過ごすしかないんじゃないかね。 |
|||
たぶん私が一番よく知っている、なぜ人間だけが笑うのかを。人間のみがひどく傷ついているので、笑いを発明しなければならなかったのである。Vielleicht weiß ich am besten, warum der Mensch allein lacht: er allein leidet so tief, daß er das Lachen erfinden mußte.(ニーチェ遺稿ーー『力への意志』Der Wille zur Macht I - Kapitel 10-91) |