前回から引き続くが、ラファエル・ピション(Raphaël Pichon)のマタイは、サビーヌ・ドゥヴィエル(Sabine Devieilhe) というよりもひどく冷酷そうなルシール・リシャルドー(Lucile Richardot)が場を引き締めているんだろうな
ロシアの草原を思わせ、豊かな滋養をさずけ、死をもたらす母[mère des steppes et grande nourrice, porteuse de mort] (ドゥルーズ『マゾッホとサド』「マゾッホと三人の女(Masoch et les trois femmes)」の章、1967年) |
彼女は鞭でももたせたらピッタリの女性だよ、真の女はこうじゃなくちゃいけない。 |
So ist mein Jesus nun gefangen Matthäus BWV244 |
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Raphaël Pichon |
2020 |
Sabine Devieilhe & Lucile Richardot |
Nr.27a Arie - Sopran, Alt, Chor |
第 27a 曲 アリア(ソプラノ、アルト、合唱) |
So ist mein Jesus nun gefangen. |
こうしてイエスは捕らえられた。 |
Laßt ihn, haltet, bindet nicht ! |
彼を離せ、やめろ、縛るな ! |
Mont und Licht |
月も光も |
ist vor Schmerzen untergangen, |
私のイエスが捕らえられてしまったから、 |
Laßt ihn, haltet, bindet nicht ! |
彼を離せ、やめろ、縛るな ! |
Sie führen ihn, er ist gebunden. |
彼らはイエスをを連れて行き、縛った。 |
Nr.27b Chor |
第 27b 曲 合唱 |
Sind Blitze,sind Donner in Wolken verschwunden? |
稲妻と雷鳴は雲のなかに消えてしまったのか? |
Eröffne den feurigen Abgrund,o Hölle, |
火の深淵よ開け、おお地獄よ! |
zertrümmre,verderbe,verschlinge,zerschelle |
破壊せよ、滅ぼせ、飲み込んでしまえ |
mit plözlicher Wut |
粉々にしてしまえ、激しい怒りでもって |
den falschen Verräter,das mördrische Blut! |
偽りの裏切り者を! 殺人者の血統を! |
このマタイ第27曲のソプラノとアリアのデュオ「こうしてイエスは捕らえられた(So ist mein Jesus nun gefangen)」とそれに引き続く「裏切り者め!」の合唱は最も情動感溢れる箇所のひとつだが、いやあ興奮するね、ルシール・リシャルドーの高貴さには。
近頃のチョロイのとはわけが違う。
So ist mein Jesus nun gefangen |
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Herreweghe |
2010 |
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2007 |
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Harnoncourt |
? |
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Ton Koopman |
? |
もっと過去に遡ったってどこにもルーシーはいない。
So ist mein Jesus nun gefangen |
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Karl Richter |
1958 |
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Otto Klemperer |
1960 |
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Karajan |
1973 |
合唱に限っていえば、カール・リヒターのは切れ味の鋭さでピション並に白い鳩が羽搏くな。カタツムリの跡なんてチャチなもんじゃなく。
ああ、私はルーサンヴィルの楼閣に哀願したけれども空しかったーーコンブレーの私たちの家のてっぺんの、アイリスの香がただよう便所にはいって、半びらきの窓ガラスのまんなかにその尖端しか見えないルーサンヴィルの楼閣に向って、その村の女の子を私のそばによこしてほしい、とたのんだけれども空しかったーー そしてそこにそうしているあいだに、あたかも何か探検をくわだてている旅行者か、自殺しようとする絶望者のような、悲壮なためらいで、気が遠くなりながら、私は自分自身のなかに、ある未知の道、死の道とも思われた一つの道をかきわけていた、そしてそのあげくは、私のところまで枝をたわめている野性の黒すぐりの葉に、あたかもかたつむりが通った跡のように見える、自然に出たものの跡が、一筋つくのであった。(プルースト「スワン家のほうへ」) |
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