ミアシャイマーは2014年論及びその論の質疑応答で、ウクライナに対する西側三つの政策パッケージ「NATO拡大・EU拡張・民主主義助成」によって、ウクライナのネオナチ化(ファシスト化)が起こったと言っている。そしてこれはワシントン(ヌーランドやジョン・マケイン等)が関与していると。
最近、「プーチンが最も恐れているもの」(ロバート・パーソン&マイケル・マクフォール 、2022年2月22日)という小論ーープーチンが恐れていたのはNATO 拡大ではなくウクライナの民主化という趣旨のミアシャイマーへの反論として書いているつもりらしいチョロいエッセイーーがあり、日本の国際政治学者たちがこのエッセイを読んで「湿った瞳を交わし合い頷き合っていた」が、あの御用学者のチョロ書きはまったく反論になっていないんだな。以下のミアシャイマー論から抜き出した箇所を読めばそれが「即座に」わかる筈だ。
Why the Ukraine Crisis Is the West's Fault By John J. Mearsheimer 2014 PDF |
The West's triple package of policies -- NATO enlargement, EU expansion, and democracy promotion -- added fuel to a fire waiting to ignite. The spark came in November 2013, when Yanukovych rejected a major economic deal he had been negotiating with the EU and decided to accept a $15 billion Russian counteroffer instead. That decision gave rise to antigovernment demonstrations that escalated over the following three months and that by mid-February had led to the deaths of some one hundred protesters. Western emissaries hurriedly flew to Kiev to resolve the crisis. On February 21, the government and the opposition struck a deal that allowed Yanukovych to stay in power until new elections were held. But it immediately fell apart, and Yanukovych fled to Russia the next day. The new government in Kiev was pro-Western and anti-Russian to the core, and it contained four high-ranking members who could legitimately be labeled neofascists. |
Although the full extent of U.S. involvement has not yet come to light, it is clear that Washington backed the coup. Nuland and Republican Senator John McCain participated in antigovernment demonstrations, and Geoffrey Pyatt, the U.S. ambassador to Ukraine, proclaimed after Yanukovych's toppling that it was “a day for the history books.” As a leaked telephone recording revealed, Nuland had advocated regime change and wanted the Ukrainian politician Arseniy Yatsenyuk to become prime minister in the new government, which he did. No wonder Russians of all persuasions think the West played a role in Yanukovych's ouster. |
[...] |
QUESTION: Hi, thank you for taking this question and for also expanding your views on the coup, the February 22nd coup. Kind of following up from that, the Russian media has really been emphasizing the role of fascist and extreme right-wing groups in the Ukrainian government. How accurate is this, in your opinion? And how does that play out in terms of the -- you know, Putin's plans, et cetera? And also, could you expand a little more about how NATO expansion and building democracy, how these two interact with each other? |
MEARSHEIMER: OK. I'll take them in reverse order. Building democracy and promoting the Orange Revolution in Ukraine were all designed not simply to make Ukraine democratic, but to bring into power leaders who were pro-Western. And those pro-Western leaders would therefore be well-positioned to help drive Ukraine into the West. In other words, what we wanted were people in charge in Ukraine who were deeply committed to becoming part of the West, and that meant becoming embedded in NATO and becoming embedded in the European Union. So as we move NATO and the E.U. eastward, and we help facilitate the rise of politicians who are pro-West, you would, in effect, create a situation where Ukraine someday would end up looking like Poland or end up looking like Germany. It would be... |
ROSE: Still might. Still might. MEARSHEIMER: I would not bet a lot of money on that. My argument, of course, is that what the Russians will do is they will continue to wreck the country. I think we got away with it with regard to Poland. And I don't think we' re going to get away with it with regard to Ukraine. And I think that continuing to pursue that policy would be a big mistake. ROSE: OK, we're going to have one last question. QUESTION: He didn't answer mine. ROSE: OK, John, you -- you can -- and we'll finish this off and then you can have one more, John. |
MEARSHEIMER: OK, I'm sorry. Yes, I think it's quite clear that fascist groups played a key role in the uprising between November 2013 and February 22, 2014. This is well documented. And furthermore, it's clear, when the new government took over after Yanukovych left, that that new government included four individuals who I think could legitimately be called fascists. And it's very clear that this concerns the Russians greatly. And there's no question this is what scared Yanukovych and played a key role in his leaving the country, in what I call a coup. |
ミアシャイマーの直近の論、"why the West is principally responsible for the Ukrainian crisis" Mar 19th 2022も参照。
ミアシャイマーの言ってることは小手川大助氏も2014年に言っており[参照]、当時の「常識」だったんだろう。
「ウクライナ問題について その1 」ーー① 小手川大助 元IMF日本代表理事 2014年 |
……まず事実として興味ある事項を二つ提示したい。 |
第1は盗聴されて3月5日にユーチューブにリークされたキャサリン・アシュトンEU外務大臣とウルマス・パエト エストニア外務大臣の電話でのやりとりである(これは2014年3月17日現在視聴可能である)。この会話はエストニアの外務大臣がキエフ訪問から帰還した2月26日に行われたものであるが、エストニア外務大臣は22日の射撃について、市民と警官を狙撃したのはヤヌコーヴィチ政権の関係者ではなく、反対運動の側が挑発行動として起こしたものであるということをアシュトン大臣に告げている。パエト大臣は全ての証拠がこれを証明しており、特にキエフの女性の医師は大臣に対し、狙撃に使われた弾丸が同じタイプのものであるということを写真で示したということである。大臣は新政権が、何が本当に起こったのかということについて調査をしようとしていないことは極めて問題であるとしている(エストニア外務省は、本件の漏洩された会話が正確なものであることを確認している)。 |
第2は盗聴され、2月6日(木)にユーチューブに掲載された(これは2014年3月17日現在視聴可能である)ヴィクトリア・ヌーランド米国国務省欧州及びユーラシア担当局長とジェフリー・ピアット駐ウクライナ米国大使の1月28日の電話連絡である。我が国マスコミでは、局長がEUの煮え切れない態度に憤慨して、「Fuck the EU」という表現を使ったことが報道された。しかしもっと重要なことは、二人の会話の内容である。この中で、局長は反対勢力の中のリーダーシップに触れて、元ボクシング世界ヘビー級チャンピオンのクリチコ氏やスボボダ(「自由」を意味する名前の極右政党)の党首チャフヌーボック氏は問題があるので、(ティモシェンコに近い)ヤチェヌーク氏にスポットが当たるようにした方がいい、クリチコ氏は政府部内に入らない方がいいといった意見を大使に対して述べている。 |
また、これはニュースで我が国でも報道されているので明らかとなっているが、11月のデモの開始以降、EU各国の政府関係者がキエフを訪れて、デモ隊の中に入り、彼らを激励しているし、上記のヌーランド局長はクッキーをデモ隊に配っている。
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「ウクライナ問題について その3」小手川大助 2014年 |
「ネオナチ」政権の意味するところ 上記の点から、今後のウクライナの未来を鳥瞰してみると以下の点が浮き上がってくる。 (1)現在の政権は少数政権であること 2012年の選挙結果で見る限り、現政権の中心となっている「ネオナチ」政党の支持率は10%そこそこであり、今現在で選挙を行えば支持率は5%を割り込むかもしれない。 (2)東ウクライナなどの親ロ勢力に対する攻撃にあたっているのは「ネオナチ」のメンバーであること。 |
(3)この点が明確に表れたのが、5月2日のオデッサの労働会館における虐殺である。アメリカで放映された現場の映像では、当日オデッサで行われたサッカーの試合のフーリガンを装った政権派が親ログループを労働会館におしこめた後会館に放火し、逃れてくる親ロ派(何人かは上の階から飛び降りた)を銃で撃ち殺す場面が映されている。さすがにこの事態に対しては、暫定政権も2日間の喪に服するという決定を行っているが、5月2日に各地で起こった衝突については、ドイツのメルケル首相がワシントンを訪問する前日に衝突を起こして、経済制裁について米国政府の主張を欧州に飲ませようとしたというのが通説になっている。 |
(4)プーチンのクリミア併合の決定は新政権の主体がネオナチであることに主因があったこと。 ネオナチの民族主義的な主張や行動、特に民族浄化を意図する彼らのスローガンがプーチンの大きな懸念となり、ソチオリンピックからモスクワへ帰還した彼は、短時間でクリミア併合を決定した。これは想像であるが、新政権のメンバーがネオナチではなく、通常の政治メンバーであったなら、彼の決定は別のものになった可能性が高いものと思われる。 |
「ネオナチの民族主義的な主張や行動、特に民族浄化を意図する彼らのスローガンがプーチンの大きな懸念」となったとあるが、プーチンが恐れたのはこの民族浄化的民主主義だよ。
これが主に二大民族国家における「民主主義=ネオナチズム=ファシズム」の意味だ。
ウクライナは、主に国の西側(北西部)を基盤とする、親西側傾向が強いウクライナ系住民(宗教的にはカトリック。全人口の約2/3)と、東側(南東部)を基盤とし、親ロシア傾向が強いロシア系住民(宗教的にはロシア正教。全人口の約1/3)によって構成されている、と言われる。(浅井基文「ロシアのウクライナ侵攻-問題の所在と解決の道筋」3/6/2022) |
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民主化とは事実上、三分の一ほどいる親ロシアのウクライナ人を強制同質化か排除・殲滅する運動なんだから隣国はビビるに決まってんだろ。 国際政治学者ならシュミットぐらい知ってるだろ。
一番重要なのは、NATO東方拡大に伴ったウクライナの民主化運動(民族主義運動)によってウクライナのネオナチ化が起こったことをまず認めることさ。 S ➡︎I ➡︎R の順で起こったんだ。カント的に言えば、形式➡︎仮象➡︎物自体だ(柄谷『トランスクリティーク』による)。 ウクライナのネオナチ問題さえ認めないままロシアウクライナ戦争語っている国際政治学者ってのはウンコちゃんと呼ぶしかないね。 だいたい米国とウクライナだけ「2021年12月の国連決議においてネオナチ賛成投票」してんだからさ。米国はウクライナのネオナチを支援してます!って白状してるようなもんさ。 ネオナチどころかイスラム国仕込みらしいぜ、ゼレンスキーの顧問Arestovichは。 ーーこういうヤツを育てたわけだぜ、ワカルカイ? 私の考えでは、国際政治学者たちのなかからも「米国とウ国に圧力を」という主張が出てきていい筈であるが、その気配がいまだ微塵も感じられない。反対に「新種のイスラム国」の疑いが大いにある集団にいっそうの武器供与をする「米英を中心とした動き」を支持しているように見える。
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