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2024年9月27日金曜日

戦争機械は止まらない

 

問題は、戦争機械がいかに戦争を現実化するかということよりも、国家装置がいかに戦争を所有(盗用)するかということである [La question est donc moins celle de la réalisation de la guerre que de l'appropriation de la machine de guerre. C'est en même temps que l'appareil d'Etat s’approprie la machine de guerre]〔・・・〕


国家戦争を総力戦にする要因は資本主義と密接に関係している「les facteurs qui font de la guerre d'Etat une guerre totale sont étroitement liés au capitalisme ]。

現在の状況は絶望的である。世界的規模の戦争機械がまるでSFのようにますます強力に構成されている[Sans doute la situation actuelle est-elle désespérante. On a vu la machine de guerre mondiale se constituer de plus en plus fort, comme dans un récit de science-fiction ;](ドゥルーズ &ガタリ『千のプラトー』「遊牧論あるいは戦争機械』1980年)


実に戦争機械は止まらないんだよな、



ーー見ろ、連中のなんとか笑いを堪えようとしている顔を。


◾️マイケル・ハドソン「警察国家の触手としての大学」2024年4月29日

Universities as Tentacles of the Police State By Michael Hudson,  April 29, 2024

議会はイスラエルに莫大な補助金を与え、イスラエルはその一部を献金者に奉仕する政治家の選挙キャンペーンに再利用している。 これは、ウクライナが米国の「援助」を利用する際に、資金力のあるロビー団体を設立して顧客の政治家を支援するのと同じ方針である。

Congress gives enormous subsidies to Israel, which recycles some of this money back into the election campaigns of politicians willing to serve their donors. It is the same policy that Ukraine uses when it employs U.S. “aid” by setting up well-funded lobbying organizations to back client politicians.


◾️マイケル・ハドソン「米国の共犯:イスラエル、援助、そして議員の循環フロー」2024年8月1日

US Complicit: Israel, Aid and the Congressman’s Circular Flow By Michael Hudson, August 1, 2024

イスラエルは選挙資金提供者を通じて米国議会を買収している。 しかし、そこには循環的な流れがある。 議会はイスラエルに援助を与える。 イスラエルは得た援助の一部を使って、議員たちに支払うロビー活動に還元する。 つまり、彼らがイスラエルに与えるものはすべて、その一部が彼らの懐に入るのだ。 これが、市民連合とそれに関連するもののせいで、私たちが持っている循環の流れです。 つまり、機能不全に陥ったシステム全体があるわけで、アメリカの有権者の多くは、私たちにできることは何もないと考えていると思います。 システムが腐敗しているのです。

Israel has bought the U.S. Congress through its campaign contributors. But there’s a circular flow. Congress will give aid to Israel. Israel will use some of the aid it gets to pay back into the lobbying effort to pay the congressmen. So everything, some portion of whatever they give Israel ends up in their own pockets. That’s the circular flow we have, thanks to Citizens United and related things. So you’re having a whole system that is so dysfunctional that I think a lot of American voters think there’s nothing we can do. The system is so corrupt.


で、次のように第三次戦争大戦まっしぐらなんだよ、


◾️マイケル・ハドソン「なぜ米国はイスラエルを支持するのか?」2023年11月12日

Why does the US support Israel? By  Michael Hudson 2023/11/12

私たちが目にしているのは、ウクライナ人最後の一人までロシアと戦い、イスラエル人最後の一人までイランと戦うという脅迫である。さらに米国は台湾に武器を送り、中国に対して最後の台湾人まで戦いたくないか、と言おうとしている。それが世界中で行われている米国の戦略である。

自国の支配のために他国を煽って戦争をさせようとしているのだ。〔・・・〕


イスラエル、そしてガザでの全攻撃をめぐってニュースになっていることは、サラエボでの銃撃戦が第一次世界大戦の始まりであり、セルビアでの銃撃戦がすべての始まりであったように、この戦争の序章、引き金にすぎない。

So what we’re seeing, I’m going to try to summarize now, what we’re really seeing is having fought Russia to the last Ukrainian, and threatening to fight Iran to the last Israeli. The United States is trying to send arms to Taiwan to say, wouldn’t you like to fight to the last Taiwanese against China? And that’s really the U.S. strategy all over the world.


It’s trying to fuel other countries to fight wars for its own control. (…) 

Israel, and what is in the news over the whole attacks in Gaza, is only the opening stage, the trigger for this war, just as the shooting in Sarajevo started World War I in Serbia started everything.


現在のイスラエルとレバノンのやり合い、あれは米国とイランの代理戦争にすぎない。代理国同士で戦争すれば、いくらか核戦争を遠ざけることができるというアスペクトはあるにしろ、あくまで当面の「いくらか」だ。


◾️マイケル・ハドソン「米国の共犯:イスラエル、援助、そして議員の循環フロー」2024年8月1日

US Complicit: Israel, Aid and the Congressman’s Circular Flow By Michael Hudson, August 1, 2024

アメリカの軍事力は低下しています。そして軍にとって、それは、今戦争をせずに来年まで待てば、勝てる可能性がどんどん低くなることを意味します。


そう、現実には、核戦争が起きてチェス盤がひっくり返されない限り、彼らはどこに行っても負けるでしょう。そして、彼らの考えでは、アメリカはウクライナからイスラエル、イランに至るまで、あらゆる手段を講じて報復を煽っている。さらにアメリカは攻撃を受けている、ただ自国を守っているだけだ、と国民や有権者に告げれば、ナチスも知っていたように、ゲッベルスが言ったように、防衛のためだと言えば、国民を味方につけることができる、ということだと思います。

The American ability to fight militarily is going down. And to the military, that means if we don’t have war now and wait till next year in the future, we’ll be less and less and less able to win.


Well, the reality is they’re going to lose wherever they go, unless there’s atomic war and the chessboard is thrown over. And I think their feeling is the Americans are doing everything they can, from Ukraine to Israel to Iran, to try to stir up a retaliation so that they can then say, ah, we’re under attack, we’re purely defending ourselves, and once you tell your population and your voters this is a war for defense, as the Nazis know, you can always get a―as Goebbels said, you can always get a population on your side if you say it’s for defense.


結局、戦争機械による核戦争への道を容易に止められるようには思えないね。


……………

何度も繰り返しているが、マルクスの最も基本的範式は、G - W - G' (G+⊿G)である。

・・・この過程の全形態は、G -W - G' である。G' = G +⊿G であり、最初の額が増大したもの、増加分が加算されたものである。この、最初の価値を越える、増加分または過剰分を、私は"剰余価値"と呼ぶ。この独特な経過で増大した価値は、流通内において、存続するばかりでなく、その価値を変貌させ、剰余価値または自己増殖を加える。この運動こそ、貨幣の資本への変換である。

Die vollständige Form dieses Prozesses ist daher G - W - G', wo G' = G+G, d.h. gleich der ursprünglich vorgeschossenen Geldsumme plus einem Inkrement. Dieses Inkrement oder den Überschuß über den ursprünglichen Wert nenne ich - Mehrwert (surplus value). Der ursprünglich vorgeschoßne Wert erhält sich daher nicht nur in der Zirkulation, sondern in ihr verändert er seine Wertgröße, setzt einen Mehrwert zu oder verwertet sich. Und diese Bewegung verwandelt ihn in Kapital. 

(マルクス『資本論』第一篇第二章第一節「資本の一般的形態 Die allgemeine Formel des Kapitals」)



ある意味で、現在、金融資本に支配された米ネオコン戦争機械のメカニズムはこの範式さえわかっていれば把握できる。




よりわかりやすくG' = G +⊿Gを分解すれば次のようになる。




この三角形に永遠の循環運動がある。そして戦争機械とは商品の項が「戦争商品」だということである。


この循環運動によって、米システムを背後で操っている金融資本家のポケットはますます潤うってわけさ。

この運動の意識ある担い手として、貨幣所有者は資本家になる。彼の一身、またはむしろ彼のポケットは、貨幣の出発点であり帰着点である。あの流通の客観的内容─価値の増殖─が彼の主観的目的なのであって、ただ抽象的な富をますます多く取得することが彼の操作の唯一の起動的動機であるかぎりでのみ、彼は資本家として、または人格化され意志と意識とを与えられた資本として機能するのである。

Als bewußter Träger dieser Bewegung wird der Geldbesitzer Kapitalist. Seine Person, oder vielmehr seine Tasche, ist der Ausgangspunkt und der Rückkehrpunkt des Geldes. Der objektive Inhalt jener Zirkulation - die Verwertung des Werts - ist sein subjektiver Zweck, und nur soweit wachsende Aneignung des abstrakten Reichtums das allein treibende Motiv   seiner Operationen, funktioniert er als Kapitalist oder personifiziertes, mit Willen und Bewußtsein begabtes Kapital.

(マルクス『資本論』第一巻第二篇第四章第一節)



別名、利得の休みなき致富欲動である。

使用価値は、けっして資本家の直接目的として取り扱われるべきではない。個々の利得もまたそうであって、資本家の直接目的として取り扱われるべきものは、利得の休みなき運動[rastlose Bewegung des Gewinnens]でしかないのだ。こういう絶対的な致富欲動[absolute Bereicherungstrieb]ーーこういう情熱的な価値追求は、資本家にも貨幣蓄蔵者(守銭奴)にも共通のものではあるが、しかし貨幣蓄蔵者が狂気の資本家でしかないのに対して、資本家のほうは合理的な貨幣蓄蔵者である。 貨幣蓄蔵者は、価値の休みなき増殖[rastlose Vermehrung des Werts]を、貨幣を流通から救いだそうとすることによって追求するが、より賢明な資本家は、貨幣をつねに新たに流通にゆだねることによって達成するわけである。

Der Gebrauchswert ist also nie als unmittelbarer Zweck des Kapitalisten zu behandeln . Auch nicht der einzelne Gewinn, sondern nur die rastlose Bewegung des Gewinnens. Dieser absolute Bereicherungstrieb, diese leidenschaftliche Jagd auf den Wert ist dem Kapitalisten mit dem Schatzbildner gemein, aber während der Schatzbildner nur der verrückte Kapitalist, ist der Kapitalist der rationelle Schatzbildner. Die rastlose Vermehrung des Werts, die der Schatzbildner anstrebt, indem er das Geld vor der Zirkulation zu retten sucht, erreicht der klügere Kapitalist, indem er es stets von neuem der Zirkulation preisgibt.

(マルクス『資本論』第一巻第二篇第四章第一節)


柄谷行人はこれを「資本の欲動」と命名した。

マルクスが資本の考察を守銭奴から始めたことに注意すべきである。守銭奴がもつのは、物(使用価値)への欲望ではなくて、等価形態に在る物への欲動――私はそれを欲望と区別するためにフロイトにならってそう呼ぶことにしたいーーなのだ。〔・・・〕

資本主義の原動力を、人々の欲望に求めることはできない。むしろその逆である。資本の欲動は「権利」(ポジション)を獲得することにあり、そのために人々の欲望を喚起し創出するだけなのだ。(柄谷行人『トランスクリティーク』「イントロダクション」2001年)



直近の柄谷の語りを掲げておこう。


◾️理論的な行き詰まりで神秘主義に接近 タイガーマスクで近所を歩き回った:

私の謎 柄谷行人回想録⑰ 2024.08.06

(『力と交換様式」を)書き終わった頃に、ロシアとウクライナの問題が起きて、去年からはパレスチナも大変なことになっている。中国や台湾の問題もある。もういっぺんに出てきたでしょう。世界中どこもまともじゃない。こんなに脆いものだったのか、っていうのは、やっぱりすごく思いますよね。


他方で、僕は交換様式を考えるなかで、こうなることは分かってもいた。このまま資本-ネーション-国家の体制でやっていたら、地球環境ひとつとっても、持つわけない。いろいろな人がひっきりなしに、さまざまなオルタナティブや新しいヴィジョンを提唱しているけれど、僕から見たら全然オルタナティブじゃない。資本-ネーション-国家の永遠性を当然のこととしたうえで、その範囲でできることをやろうとしているだけだよ。もしくは、その中にいることにすら気づかないで、勝手に都合のいい世界を空想しているだけ。本当のオルタナティブは、むしろ世界戦争によって出てくるかもしれないけど――要するにそうせざるをえないところに追い込まれて――そんなことは望ましいわけじゃない。望ましいわけがない。


――だからこそ、少しでも早く『力と交換様式』を書き上げなくてはならなかったということでしょうか。


柄谷 いやいや、まだ足りない。まだ書かねばいかん。Dについても、もっと踏み込んで書かないと。僕は今、新しい本に取り組んでいます。 “力”の問題についてです。ただ、今度の本は、体系的な書き方、理論的に緻密な書き方ではなく、もっと自由でストレートな書き方になると思います。