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2014年12月13日土曜日

哲学とメランコリー(ジジェク)

前投稿の前段に書いてあったものだが、二つに分け、別途、「哲学とメランコリー」と題した。同じくメモの範囲を出ない。

…………

言っておかなくてはならない最初のことは、哲学は私の最初の選択ではなかったことだ。クロード=レヴィ・ストロースの古いテーゼが断言しているのは、どの哲学者、どの理論家も、彼らが果たせなかった別の職業をもっているということだ。そしてその不首尾が彼らの全存在に徴づけられている。クロード=レヴィ・ストロースにとって、彼の最初の選択は、音楽家になることだった。これが、レヴィ・ストロースにあるような構成的なメランコリーの光沢をもたらす。私にとって、私の書き物から明らかなように、それはシネマだった。(『ジジェク自身によるジジェク』私意訳)

この文にはメランコリーという言葉がある。哲学者がメランコリックであるとは、どういうことか。

欲望の原因-対象がそもそもの初めから構成的な欠如として欠けている以上、メランコリーはこの欠如を喪失と解釈する。あたかも、欠如している対象が、一度は所有されていたがその後失われてしまったものであるかのように。ようするに、メランコリーのせいでわかりにくくなっているのは以下の点である。〔欲望の〕対象は最初から欠如していること、この対象の欠如がその現れであること、この対象は空虚あるいは欠如を実体化したものにほかならず、それ自体では実在しない純粋に歪像的な存在であるということ、以上である。もちろん、ここにはパラドックスがあって、欠如を喪失と読みかえる欺瞞により、そうした対象をかつては所有していたと主張できるようになる。一度も所有したことのないものは、失うこともありえない。だから、メランコリックな主体は、失われた対象にいつまでも固着しつつ、失われた〔喪失〕という状態でその対象を所有しているとも言えるのだ。(……)メランコリックな者は、ただ超感覚的な対象について瞑想に耽るのではなく、そうした対象をじかに抱きしめたいという煩悩を持つ。イデア的な象徴形式から成る超感覚的な領域へ接近する道は断たれていても、メランコリックな者は形而上学的な憧れを抱くのだ。つまり、時が経てば朽ち果ててしまう日常的な現実を超えた別の絶対的現実に恋い焦がれるのである。したがって、メランコリックな者がこの苦境から逃れ出る方法は一つしかない。日常的で官能的な物質的対象(たとえば愛しい女)を手に入れ、それを絶対的なものにまで高めるものである。こうしてメランコリックな主体は、憧れの対象を、肉体を持つ絶対者という矛盾したものへと高めるのだ。しかし、こうした対象はやがては腐ってしまうのだから、それが失われている、喪失されているという状態にあるときにのみ、それを永遠に所有できるようになる。(……)ようするに、メランコリーは、失われた対象への愛着であるのみならず、対象が最初に失われたこと〔起源における喪失〕それ自体への愛着でもあるということだ。

(……)メランコリー者は、失われた対象に固着し喪の作業を完遂できない主体であるばかりか、対象を欲望させる原因が消えて力をなくしたために、対象を所有していながらその対象への欲望を失ってしまった主体でもあるのだ。メランコリーは、挫かれた欲望、対象を奪われた(欲望されなくなった)対象それ自身の現前を表している。欲望された対象をついに手に入れたがその対象への欲望は失われている、そういうときにメランコリーは生じるのだ。まさしくこの意味で、メランコリー(欲望を満たすことができない対象、実定的で〔ポジティヴ〕で観察可能な対象すべてに対する失望)は事実上、哲学の始まりなのである。》(ジジェク「メランコリーと行為」鈴木英明訳――参照:かつて愛し、離れてしまったものへの、疼くようなやるせない思い

ジジェクは自己分析を滅多にしないーー《I never analyse myself I hate the very idea of analysing myself》(『ジジェク自身によるジジェク』)。だが上の二つの文を並べて読めば、下の文はジジェクの自己分析としても読めるということは言い得る。

ところで、ジジェクは二番目の妻と「友好的な離婚」をして、《fashion model Analia Hounie, daughter of an Argentine Lacanian psychoanalyst》、昨年、おそらく三度目の結婚をしている。


Žižka vzela Jela z Dela


少なくとも三番目の妻ーーひょっとしたら四番目か、などと書いてある記事もあるが詳細は不明。

Zizek’s status as an intellectual celebrity has given him at least three, possibly four beautiful wives, including an Argentine fashion model some 30 years his junior in 2009, and, most recently, in 2013, Slovenian journalist Jela Krecic, also a good 30 years younger and notable for her exclusive interview with Wikileaks titan Julian Assange, another leftist hero.(A Fetish For Zizek

もっともジジェクの女への(若い女性への)愛着が、《メランコリックな者がこの苦境から逃れ出る方法は一つしかない。日常的で官能的な物質的対象(たとえば愛しい女)を手に入れ、それを絶対的なものにまで高めるものである》かどうかは知るところではない。