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2015年12月27日日曜日

女の脚のあいだの白い虫

半年ほど前植木鉢から土に還したジャスミンが枯れた。ひっこぬくと何の幼虫だかが五六匹、うじゃうじゃと白くふとった裸体を黒く匂いたつ土のなかでくねらしている。ジャスミンの木はそれなりに大きくなったものもふくめてほかに数株あるが、葉っぱにも蝶の幼虫がつき、世話のやける灌木だ。油断をしていると貪食の青虫が一夜で葉を食い尽くして丸裸になってしまう。

オレがひっこぬいたわけではない。妻ともう一人見知らぬ若い女が枯木を取り去ったのだ。女は普段はごみ集めを仕事にしているらしい浅黒い顔色をした少女で、妻がこの午後めずらしく庭仕事をしていたところ、その手伝いに呼び寄せたようだ。門の脇にごみ収集用の金属網のおおきな籠を荷台につけた自転車がとまっている。オレの左膝は回復途上だが、まだ何度も曲げ伸ばしはしたくはなく、手伝う気はない。

少女はバッキーで、言葉がごつごつしている。バッキーとは北のほうの出身ということで、南出身はナンキーという。むかしは罵倒語だったらしいが、いまは割りと平気で使う。

小柄な少女がジャスミンをひっこぬいた穴をまたぐようにして、スコップで白い虫をすくう。顔色はわるいが、笑うと白い歯が可憐だ。うつむき加減にすこし睨むようにしてこちらを見るまなざしだってわるくない。

妻は働き者の貧しい少女たちとすぐ仲良くなる。おそらく彼女もかつてはそうだったはずだ。今でも仕事の手際のよさには眼を見張らされる。



朝の歌  黒田喜夫


朝の病院の一室で
若い女が尻をむいてしやがんでいるのを
覗いた しやがんだ女の
脚もとに尻から
だらりと条虫の白い突端がたれ
そのまま動かない
おれも動けない数十分
とつぜん倒れるように手を前についた
手をついてがまの姿勢になつた
女の脚の間で白い虫がくねりだし
くねりだしたと思うと尻のなかへ
じりじり戻りだした 排するちからと
抗するちからが極まり
ながく女が呻きだしたとき おれの
烈しい今朝の嘔吐感がきた
そのとき
突端をちぎりすてた白い虫が
卑猥を超えた姿態のおく
寄生虫の延安へ
くねり還る瞬間をおれは見た