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2015年12月11日金曜日

何云てやんでい。溝ッ蚊女郎!



このたぐいのドローン(無人攻撃機)にはあまり追いかけられたくないぜ
きみらの趣味はどうだい?

オレはむしろこっち系のほうがまだましだな




ところでこの蚊には蚊取線香がきくんだろうか
それとも溝ッ蚊女郎か恋女房の手助けが必要なんだろうか?

「今年はいつまでも、ほんとに暑いな。」と云った時お雪は「鳥渡しずかに。」と云いながらわたくしの額にとまった蚊を掌でおさえた。 

家の内の蚊は前よりも一層多くなったようで、人を刺す其針も鋭く太くなったらしい。お雪は懐紙でわたくしの額と自分の手についた血をふき、「こら。こんな。」と云って其紙を見せて円める。(永井荷風『 濹東綺譚 』)
窓口を覗いた素見客が、「よう、姉さん、御馳走さま。」 「一つあげよう。口をおあき。」 「青酸加里か。命が惜しいや。」 「文無しのくせに、聞いてあきれらア。」 「何云てやんでい。溝ッ蚊女郎。」と捨台詞で行き過るのを此方も負けて居ず、 「へッ。芥溜野郎。」 「はははは。」と後から来る素見客がまた笑って通り過ぎた。 (同上)

で、この世界において、細菌兵器を大々的に使わないままの戦争とはいつまでありうるんだろう?

例えば,テロリストが黙って大量かつ毒性の 強い炭疽菌を延べ1万人が買物をするデパート の通風孔より散布したとします。もしも診察し た医師が“炭疽菌によるテロ”を疑ってマスメ ディアを通して情報を流し,抗生物質投与を早 期より開始する場合と,最後のほうまでテロだ と気がつかない場合とでは,死亡数が10倍は 異なるでしょう。(「バイオテロの脅威」PDF)
仏議会は19日、パリ同時テロ後に出された非常事態宣言を3カ月間延長する法案の審議に入った。バルス首相は「あらゆるリスクに備えるべきだ。生物、化学兵器を使ったテロが起きる可能性もある」と述べ、治安維持に関する政府の権限を強化すべきだと訴えた。(パリ同時テロ=仏首相「生物兵器警戒を」

前回、次ぎの文を引用した。

コーランを無視すれば、たとえば CIA の特殊工作マニュアルと彼ら(テロリスト)はどこが違うのか。水洗トイレの詰まらせかたにいたるまで、日常生活をいかにかき乱すかを細かくニカラグアのコントラ反革命軍に指示した CIA のマニュアルは、まさに同じ種類のものではないか──違うとしたらせいぜい、もっと臆病ということだけなのでは?(ジジェク「現実界という砂漠にようこそ」)

イスラム国の連中だって、モスキート細菌兵器に脅えているのさ
アル=ヌスラ戦線の色男たちだって同じだろう




ジジェクの文章をもういくらか引用しておこう。もう15年近くまえのものである。

すぐに行動し報復するという衝撃に屈することはまさに、9月11日のできごとの真の次元に向かいあうのを避けることを意味する──だとしたらその行動の真の狙いは、ほんとうにはなにも変わっていないという確信にわれわれを引きずり込むことだ。真の長期的な脅威は、それと比べれば世界貿易センタービル崩壊の記憶も蒼ざめるような大規模テロがさ らに起こることだ──これほどスペクタクルでなく、しかしいっそう恐ろしいテロである。細菌戦はどうか、殺人ガスの使用はどうか、DNA テロ(ある種のゲノムを持つ人々だけを襲う毒の開発)はどうか
2001年9月の世界貿易センタービルの爆発と崩壊は、21世紀の戦争を指し示すというより、20世紀の戦争の最後のスペクタクルな叫びだった。われわれを待っているのは、もっとグロテスクなものだ。目に見えない攻撃による「非物質的」戦争の幻──どこにでもありどこにでもないウイルスや毒である、目に見える物質的な現実のレベルではなにも起きず、大きな爆発もないが、しかし、既知の宇宙は崩れだし、生は四散する……。(『現実界という砂漠にようこそ』)






次ぎの文はさらに古い。1997年のものだ。

このような「無頭の」知の範例的ケースは、(死の)欲動の「盲目的執拗性」を例証している現代科学によって提供されているのではないだろうか? 現代科学(微生物学や遺伝子操作や粒子物理学)はコストを度外視してその道を歩んでいる――満足はここで知それ自体によって提供されており、科学的知はいかなる倫理や公共の目的にも奉仕していない。

遺伝子操作や医学実験などについての適正な運営のルールを定めようとしている「倫理委員会」が近頃増えつつあるが、それらのすべての「倫理委員会」は、究極的には、内在的な限界付け(簡潔に言えば、科学的態度に内在的な倫理)を知らない科学の無尽蔵な欲動的-発展を再び刻み付けようとする必死の試みではないだろうか? 「倫理委員会」は人間の目的を制限し、科学に「人間の顔」という限界付けを与えようとしているのだ。(ジジェク「欲望:欲動=真理:知」)

いまさら戻るわけにはいかない。科学の「死の欲動」がそのうち思いがけない「成果」を生んでくれるだろう。

地球にとってもっともよいのは、三分の二の人間が死ぬような仕組みをゆっくりとつくることではないでしょうか。 (ジジェク『ジジェク、革命を語る』2013)