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2015年12月15日火曜日

膝窩の激痛

一日半ほどベッドから身動きできない状態におかれる(この二年ほどまえからの持病である痛風による)。最近は症状の気配を察知して、ひどい痛みに襲われるまえに、薬の量を増やす習慣があり、今回のようになることは少なくなっていたのだが、油断してしまった。過飲過食の翌日、痛風徴候の気配をやりすごし、――というのはいささか胃の具合が悪くて薬を飲むのはこの胃の具合(こっちの方は潰瘍の徴候である)をもっと悪くするのではないかと怖れたせいだ。

痛風の痛みというのは、陣痛の痛みと匹敵するという話をどこかで読んだことがあるが、実にーー頭のなかがまっ白なのかまっ黒になるのかわからないがーー眩暈がするような痛みだ。痛みの場所は毎度異なる。今回は左膝の裏、つまり「膝窩」である。

ああなんと美しい漢字だろう、「窩」とは。

……露わになった腋窩に彼が唇をおし当てたとき、京子は嗄れた声で、叫ぶように言った。
「縛って」
その声が、彼をかえって冷静に戻した。
「やはり、その趣味があるのか」
京子は烈しく首を左右に振りながら、言った。
「腕を、ちょっとだけ縛って」
畳の上に、脱ぎ捨てた寝衣があり、その傍に寝衣の紐が二本、うねうねと横たわっている。
京子の両腕は一層強力な搾木となる、頭部を両側から挟み付けた。京子は、呻き声を発したが、それが苦痛のためか歓喜のためか、判別がつかない。(吉行淳之介『砂の上の植物群』)

というわけで、肢を伸ばしているだけならたいして痛くないのだが、曲げると激痛が走る。今回の油断は、ひょっとしてこの痛みが懐かしくなったせいなのではないか、と疑うべきかもしれない。