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2015年12月16日水曜日

さまざまの事おもひ出す腕を、ちょっとだけ縛ってかな

さまざまの事おもひ出す桜かな(芭蕉)

吉行淳之介好みの女ってのはどうもいけなかったよ
上野毛の吉行宅まで散歩に誘われたんだけどさ
坂道に面した、庭がとっても広い家だったな

オレはまだひどくウブだったころだ
なぜかヤラなかったんだな

……露わになった腋窩に彼が唇をおし当てたとき、
京子は嗄れた声で、叫ぶように言った。
「縛って」
(……)
「やはり、その趣味があるのか」
京子は烈しく首を左右に振りながら、言った。
「腕を、ちょっとだけ縛って」
吉行淳之介『砂の上の植物群』





いまはヤッテも・ヤラなくても、それぞれに懐かしさがあって、
ふたつはそうたいしたちがいじゃないと、
回想する年齢だね。(大江健三郎『人生の親戚』)

でもやっぱりヤラなかった女のほうがいっそう懐かしいんじゃないか

若い娘たちの若い人妻たちの、みんなそれぞれにちがった顔、それらがわれわれにますます魅力を増し、もう一度めぐりあいたいという狂おしい欲望をつのらせるのは、それらが最後のどたん場でするりと身をかわしたからでしかない、といった場合が、われわれの回想のなかに、さらにはわれわれの忘却のなかに、いかに多いことだろう。(プルースト『ゲルマントのほう 二』)

どんなに惚れた女も
手に入ると
手に入ったというそのことで
ほんの少しうんざりするな

どんなに惚れた女も
手に入らないと
手に入らないというそのことで
ほんの少しきらいになるんだよ

ーーだれのパクリだかわかるだろうな?

ところでまるで光が歌っているかのような女ってのがいるんだな
くらくらしたよ

ナオミさんどうしてるんだろ?

ナオミさんが先頭で乗り込む。鉄パイプのタラップを二段ずつあがるナオミさんの、膝からぐっと太くなる腿の奥に、半透明な布をまといつかせ性器のぼってりした肉ひだが睾丸のようにつき出しているのが見えた。地面からの照りかえしも強い、熱帯の晴れわたった高い空のもと、僕の頭はクラクラした。(大江健三郎「グルート島のレントゲン画法」『いかに木を殺すか』所収)

くらがりにうごめくはっきりしない幼虫のような女ってのもいたよ
後期フォーレみたいなね





フローベールは『ボヴァリー夫人』を
「わらじ虫がうようよする片隅のあのカビの色みたいな感じを出したい」
ために書いたそうだけど

まだ十代のころそんな少女と気があっちまったことがあるな
バッハのトリオソナタの緩徐楽章が好きだっていったらさ
めかくしが好きな女だったね





ニーチェもフロイトも美は性欲にありって言ってるからな

それでとーー
ちょっともう続けようがないなこの先は