水晶が溶けて流れているとしか思えない
そんな水の中に
両手をさし入れて
石をめくる
石の蔭から
小さな魚がこぼれ出る
せいいっぱいにヒラヒラと全身を動かして
溶けた水晶に溶けて行く
幼いわたしは
魚の溶けた水を
蹴散らして歩く
そんなに乱暴に歩いては
魚なんか取れやしない
三つ年上の従姉は
スカートをたくし上げて
白い股を全部見せながら
幼いわたしに文句を言った
ああ、あああ・・・なんという美しい詩だ
蚊居肢とは蚊居股か蚊白股にすべきだった
私の母、アンリエット・ガニョン夫人は魅力的な女性で、私は母に恋していた。 急いでつけくわえるが、私は七つのときに母を失ったのだ。(……)
ある夜、なにかの偶然で私は彼女の寝室の床の上にじかに、布団を敷いてその上に寝かされていたのだが、この雌鹿のように活発で軽快な女は自分のベッドのところへ早く行こうとして私の布団の上を跳び越えた。(スタンダール『アンリ・ブリュラールの生涯』)
しかしああ、私がもう一度若がえり
あの娘を抱きしめることができたなら!
But O that I were young again
And held her in my arms!(イエーツ)
素足 谷川俊太郎
赤いスカートをからげて夏の夕方
小さな流れを渡ったのを知っている
そのときのひなたくさいあなたを見たかった
と思う私の気持ちは
とり返しのつかない悔いのようだ