まことの知性あるものに悪妻はない。そして、知性ある女は、悪妻ではないが、常に亭主を苦しめ悩まし憎ませ、めつたに平安などは与へることがないだらう。 苦しめ、そして、苦しむのだ。それが人間の当然な生活なのだから。(坂口安吾「悪妻論」)
2017年末の10日ほど「知性ある妻」によってトンデモナイ目にあった。トンデモナイ目にあうのは、今回に限ったことではないが、この度の平安の過少度の激しさといったら!
安吾は《人はなんでも平和を愛せばいゝと思ふなら大間違ひ、平和、平静、平安、私は然し、そんなものは好きではない。不安、苦しみ、悲しみ、さういふものゝ方が私は好きだ》と言っているが、限度というものがあるのである。
とはいえ31日の朝には、正月には餅も食えないんだな、と些かの皮肉をいう余裕が生まれた。いくらかの平安を取り戻したのである。
当地は旧正月を祝う国なので、正月は大したことはしない。だが毎年、30キロほど離れた都心の日本料理食材店に餅ぐらいは買いに行っていた。今年はそれどころの状況ではなかった。ああ、餅も食えない!
すると妻は餅を作りだした。近くにいるい妹二人を呼びつけて三人がかりで餅米をこね出した。夕方には切り餅だけでなく、あんころ餅まで出来上がった。
ああ、なんというスバラシイ妻! ここに15年前の、噂によれば「たくましく健康そうな」色男と、「乳と果物のにおいがする」美女の写真を貼り付けて言祝いでおく。
あわせて、31日夜、仲直りの気配が仄見える、今年42才のスッピンの妻との還暦の男との画像を(つまり誤解のないように、二人はいつまでも美男美女ではないのである)。