愛することは、本質的に、愛されることを欲することである。l'amour, c'est essentiellement vouloir être aimé. (ラカン、S11, 17 Juin 1964)
愛する理由は、人が愛する対象のなかにはけっしてない。les raisons d'aimer ne résident jamais dans celui qu'on aime(ドゥルーズ『プルーストとシーニュ』1970)
(Wim Wenders、Alice in den Städten 、1974) |
あいしてる 谷川俊太郎
あいしてるって どういうかんじ?
ならんですわって うっとりみつめ
あくびもくしゃみも すてきにみえて
ぺろっとなめたく なっちゃうかんじ
あいしてるって どういうかんじ?
みせびらかして やりたいけれど
だれにもさわって ほしくなくって
どこかへしまって おきたいかんじ
あいしてるって どういうかんじ?
いちばんだいじな ぷらもをあげて
つぎにだいじな きってもあげて
おまけにまんがも つけたいかんじ
いろいろな恋愛関係を眼にするたびに、わたしはこれを凝視し、自分が当事者だったらどのような場を占めていたかを標定しようとする。類似 analogies ではなく相同 homologies を知覚するのだ。 Xに対するわたしの関係は、 Zに対するY の関係に等しいことを確認するのである。そのとき、わたしとは無縁で未知ですらある人物、 Yについて聞かされることが、すべて、わたしに強い影響を与えることになる。わたしは、いわば鏡に捕らえられている。この鏡はたえず移動しており、二者構造 structure duelle のあるところならどこででもわたしを捕獲する。
さらに悪い状況を考えれば、このわたしが、自分では愛していない人から愛されていることもあるだろう。それは、わたしにとって助けとなる(そこから来るよろこび、あるいは気分転換によって)どころか、むしろ苦痛な状況である。愛されぬままに愛している人l'autre qui aime sans être aiméの内に、自分の姿を見てしまうからだ。わたし自身の身振りを目のあたりにしてしまうのだ。今や、この不幸の能動的代理人 agent actif はわたしである。わたしには自分が犠牲者であって同時に死刑執行人でもあると感じられる。(ロラン・バルト『恋愛のディスクール』「同一化 Identifications」1977年)