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2021年3月30日火曜日

女の厄介なところ


いやあ庭や陶器や詩じゃなくてやっぱり女だよ

犀星やヴァレリーだけじゃないさ

西脇はこう言ってるけどさ


美しいものは裸の女神よりも

裸の樹の曲がり方だ。


ーー西脇順三郎「一月」


でも永遠回帰するのはマンダラゲだよ


時間はとまつてしまった

永遠だけが残ったこの時間のない

ところに顔をうずめてねむつている

「汝を愛するからだ  おお永遠よ」

もう春も秋もやつて来ない

でも地球には秋が来るとまた

路ばたにマンダラゲが咲く


ーー西脇順三郎「坂の五月」


ひとつだけ女の厄介なところがあるけどさ


章は思い出して、 「三河の猿投神社にも大きなやつが、三、四本あったね。ありゃ見事だったね」 と云った。彼はあそこにももう一度行って見なければならんな、と心に思っていた。 「方々に女をつくって歩く人があるが、あんたのはそれが木だから可笑しいよ」 とTが云った。 「女だって木だって同じことだ。恰好がちがうだけだ」 「木は騙さないから都合がいいね」 「都合がいいよ」 と章は云った。 (藤枝静男「天女御座」)



かりに騙さないまでも

「なかさおはいりなせ--」を焦らすからな、

そうだろ、きみなんかはとくに?

庭や木みたいには自由にならないよ



竹藪に榧の実がしきりに落ちる

アテネの女神に似た髪を結う

ノビラのおつかさんの

「なかさおはいりなせ--」という

言葉も未だ今日はきかない。 


ーー西脇順三郎「留守」