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2023年8月4日金曜日

リアルポリティックの「世界はアナーキー、国連や国際機関は役に立たない」

 

このところ、政治的リアリスト、つまりリアルポリティック[Realpolitik]の信奉者の言葉をいくらか拾ってみたが、人間本性リアリズム(モーゲンソー)であれ、防御的リアリズム(ウォルツ)であれ、攻撃的リアリズム(ミアシャイマー)であれ、現在の国連やら国際法やらを端から信用していないということのようだな。




リアリストのアナーキー(無政府状態)という概念は、紛争とは何の関係もない。それは秩序原理であり、「上に立つ中央の権威を持たない」独立した国家からなるシステムである。

The realist notion of anarchy has nothing to do with conflict; it is an ordering principle, which says that the system comprises independent states that have ‘no central authority above them(ミアシャイマー『大国間政治の悲劇』第2章、2001年)


世界はいまだ無政府状態の国家で構成されている。国連もその他の国際機関も、大国に対する強制力を多くは持っていない。

The world still comprises states that operate in an anarchic setting. Neither the United Nations nor any other international institution has much coercive leverage over the great powers. (ミアシャイマー『大国間政治の悲劇』第10章、2001年)




Quo vadis, Ukraine? A conversation with John J. Mearsheimer (EN) 2023/05/27

ミアシャイマー)リアリストは国際政治において最も重要な要素は力だと考えます。国家がどれほど強いかが重要なのです。国家を守ってくれる国家以上の権威的組織がない国際社会では、国家は可能な限り強くなろうとします。弱いと他の国家に利用されてしまうからです。そこで勢力均衡が重要になります。リアリストにとっては、国家が民主主義国か独裁主義国か共産主義国かは重要ではありません[the balance of power matters greatly and realists believe that whether a state is a democracy or an autocracy or a fascist state or a communist state it doesn't matter]。国際社会に国家を超える権威的組織がない以上、各国は力を追い求め最も強い国になるしかないのです。これがリアリズムの基本的な考え方です。

ここで指摘しておきたいのが、西側諸国、特にアメリカと西ヨーロッパでは、リアリズムの考え方は非常に嫌われるということです。民主主義国の振る舞いは権威主義国と同じだというのがリアリズムの主張だからです。西側の「リベラルな」人たちは、"民主主義国は高貴な振る舞いをするが権威主義国はそうじゃない " と思いたがります。西側諸国の大半の人はこう考えるのです、"この世には良い国と悪い国がある"、"良い国とは民主主義国だ"と。リアリストにとっては良い国も悪い国もありません。国際社会の構造的理由により、全ての国が同じように行動するしかないのです。その構造的理由というのは特に国家を超える権威的組織が存在しないことです。



ミアシャイマーは最近の大著『大いなる妄想』の翌年の小論「失敗する宿命」で、前年の書をほぼ要約する形なのだろうーー私は『大いなる妄想』の第4章しか読んでいないので「おそらく」としておくがーー、次のように記している。



◼️失敗する運命

リベラルな国際秩序の興亡. ジョン・J・ミアシャイマー 2019年

Bound to Fail

The Rise and Fall of the Liberal International Order. John J. Mearsheimer 2019

「秩序」とは、加盟国間の相互作用を管理するのに役立つ国際機関の組織的なグループのことである。秩序には必ずしも世界のすべての国が含まれるわけではないため、秩序は加盟国が非加盟国に対処する助けにもなる。さらに、秩序は地域的または世界的な広がりを持つ制度で構成されることもある。大国は秩序を創造し、管理する。秩序の構成要素である国際制度は、事実上、大国が考案し、従うことに合意したルールである。ルールは許容される行動と許容されない行動を規定する。当然のことながら、大国は自分たちの利益になるようにルールを作成する。しかし、そのルールが支配国家の重大な利益と一致しない場合、支配国家はそのルールを無視するか書き換えてしまう。


An “order” is an organized group of international institutions that help govern the interactions among the member states. Orders can also help member states deal with nonmembers, because an order does not necessarily include every country in the world. Furthermore, orders can comprise institutions that have a regional or a global scope. Great powers create and manage orders. International institutions, which are the building blocks of orders, are effectively rules that the great powers devise and agree to follow, because they be-lieve that obeying those rules is in their interest. The rules prescribe acceptable kinds of behavior and proscribe unacceptable forms of behavior. Unsurprisingly, the great powers write those rules to suit their own interests. But when the rules do not accord with the vital interests of the dominant states, those same states either ignore them or rewrite them. 


たとえば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、2003年のイラク戦争前に何度も、たとえアメリカの侵攻が国際法に違反したとしても、「アメリカは、わが国の安全を確保するために必要なことは何でもする。・・・私は、事の発生を待ったり、危険が近づくのを座視したりはしない」と言った。


秩序には、北大西洋条約機構(NATO)、核拡散防止条約(NPT)、ワルシャワ条約などの安全保障機構や、国際通貨基金(IMF)、北米自由貿易協定、経済協力開発機構、世界銀行などの経済機構など、さまざまな種類の機関が含まれる。また、気候変動に取り組むパリ協定のような環境を扱う機関や、欧州連合(EU)、国際連盟、国際連合(UN)のような多面的な機関も含まれる。


For example, President George W. Bush emphasized on numerous occasions before the 2003 Iraq War that even if a U.S. invasion violated international law, “America will do what is necessary to ensure our nation's security . . . I will not wait on events, while dangers gather.”5


An order can contain different kinds of institutions, including security insti-tutions such as the North Atlantic Treaty Organization (NATO), the Nuclear Non-Proliferation Treaty (NPT), or the Warsaw Pact, as well as economic insti-tutions such as the International Monetary Fund (IMF), the North American Free Trade Agreement, the Organization for Economic Co-operation and Development, and the World Bank. It can also include institutions that deal with the environment, such as the Paris Agreement to tackle climate change, and more multifaceted institutions such as the European Union (EU), the League of Nations, and the United Nations (UN).



結局、上に記されている組織は西側覇権主義国、つまり米国の下請け機関だという観点である。


少なくとも現状認識としては、こういったリアリストたちが「正しい」のがはっきりしたのではないか、特にこの宇露戦争で。ここで噂の「ルールに基づく国際秩序」の実態、その批判のいくつかを列挙しておくが。



◼️ドイツとEUは宣戦布告を手渡された ぺぺ・エスコバル 

Germany and EU Have Been Handed Over a Declaration of War

PEPE ESCOBAR • SEPTEMBER 28, 2022

バルト海のノルドストリーム(NS)とノルドストリーム2(NS2)のパイプラインに対する破壊工作は、「惨事便乗型資本主義」をまったく新しい有害なレベルにまで押し上げるものである。

このハイブリッド産業・商業戦争の出来事は、国際海域のエネルギー・インフラに対するテロ攻撃という形で、「我々のやり方か本道か」「ルールに基づく」秩序に溺れた国際法の絶対的崩壊を告げるものである。


The sabotage of the Nord Stream (NS) and Nord Stream 2 (NS2) pipelines in the Baltic Sea has ominously propelled ‘Disaster Capitalism’ to a whole new, toxic level.

This episode of Hybrid Industrial/Commercial War, in the form of a terror attack against energy infrastructure in international waters signals the absolute collapse of international law, drowned by a “our way or the highway”, “rules-based”, order.



◼️「ルールに基づく国際秩序」にルールと秩序の居場所はない

No place for rules and order in the 'rules-based international order'

Xin Ping 18-Oct-2022

米国が喧伝する「ルールに基づく国際秩序」は、暴力と弱肉強食を礼賛する秩序である。米国は自国の強さを語り続け、柔軟な筋肉に喜びを感じている。240年以上の歴史の中で、224年以上戦争をしており、残りの16年は戦争を仕掛けることに忙しかった。ほとんどすべてのホットスポット問題で、米国は軍事的圧力をかけ、戦争を煽り、外交交渉を妨害することに熱心である。イェール大学のデビッド・ブロムウィッチ教授は、「規範は、米国が或る瞬間に望むものから生まれる...」と率直に述べている。「私たちは最も軍国主義的な国である。自国を武装化するために使えるエネルギーをすべて使って、他国民が互いに殺し合うのを助けるために武器を売っている」。

The "rules-based international order" touted by the U.S. is an order that venerates violence and the law of the jungle. The U.S. keeps talking about its position of strength and enjoys flexing muscles. The country was at war in more than 224 years throughout its over 240 years of history, and in the remaining 16 years it was busy starting one. On almost all hot-spot issues, the U.S. is keen on exerting military pressure, war-mongering and sabotaging diplomatic negotiations. Yale University professor David Bromwich said bluntly that "the norms come from what the U.S. desires at a given moment... We are the most militarized of nations. With all the energy we can spare from arming ourselves, we sell weapons to help other people kill each other."




◼️解放軍報「アメリカの二重基準「ルール」は世界が乱れる源」(中国語原題:"美式"规则"成世界乱源|一,言行相悖虚成性") 鈞声署名論評 2022年7月4日

骨の髄まで染み渡った「アメリカ的二重基準」の症状がまた発作を始めた。ブリンケンの最近の演説は、中国が世界秩序の「もっとも深刻な長期的挑戦」であると公言した。しかし、まともな眼力のある人であるならば、国内法を国際法に優先させ、国際ルールに関しては自分の都合に合えば使い、合わなければ捨てるアメリカこそが国際秩序を乱す最大の原因であることを見て取ることだろう。


アメリカの政治屋にとって、「国際ルール」というモノサシは他人を計るもので自分を規制するものではない。「ルールに基づく国際秩序」なるものも、アメリカ以下の少数の国々が勝手に決めたものに過ぎず、守ろうとするのはアメリカ主導の「秩序」であって、私利をむさぼることこそが真の目的である。長期にわたるアメリカのこのような行動は、世界の政治経済秩序を深刻に破壊し、グローバルな安全と安定を脅かすに至っている。〔・・・〕

アメリカがかくも厚顔無恥で、平然と二重基準に訴えるのは、本を正せば、「アメリカだけは特別・例外」という覇権思想が脳みそに巣くっているためだ。その本質は自己優越論であり、アメリカは他の国々とは違い、「偉大であることが運命づけられ」、「世界を導かなければならない」ということにある。しかし、歴史が証明しているとおり、このイデオロギーは虚妄であるだけに留まらず、極めて有害でさえある。アメリカの著名な経済学者ジェフリー・ザックスは著書『新しい外交政策:アメリカの例外主義を超えて』の中で次のように指摘している。すなわち、各国の利益は密接に関わり合い、運命を共にしており、歴史上のいかなる時にも増して国際協力を強め、人類社会が直面するリスクと挑戦に共同で対処するべき時に、アメリカ政府は独り我が道を行き、勝手に国際ルールを破壊している。これは「アメリカ例外主義」の表れであり、自らを深刻に害し、世界にとっては非常に危険なことである。


事実が証明しているとおり、二重基準を奉じ、「アメリカは特別・例外」を行うアメリカは「ならず者国家」になるだけである。真のスタンダードに対しては、世人の胸の内には一定のはかりがある。アメリカには以下のことを勧告する。「二重基準」をやめ、国際的に公認されたルール及びスタンダードを遵守する正しい軌道に戻ることだ。さもなければ、国家のイメージを台無しにし、国際的信用が完全に失われるだけである。




◼️ジャック・ボーの最新インタビュー

Our latest interview with Jacques Baud

Originally published: The Postil Magazine on September 1, 2022 by The Postil Magazine

TP:この戦争は、最終的にヨーロッパ、アメリカ、中国にとってどのような意味を持つとお考えでしょうか?


JB:この問いに答えるには、まず別の問いに答えなければならない。「なぜこの紛争は、西側諸国が始めた過去の紛争よりも非難され、制裁されるのか?」

アフガニスタン、イラク、リビア、マリの惨事の後、世界の他の国々は、西側が常識的にこの危機を解決する手助けをすることを期待した。西側諸国は、こうした期待とはまったく逆の反応を示した。この紛争がなぜ以前の紛争よりも非難されるべきものなのか、誰も説明できないばかりか、ロシアと米国の扱いの違いから、被害者よりも加害者の方が重視されていることが明らかになったのである。ロシアの崩壊をもたらす努力は、国連安全保障理事会に嘘をつき、拷問を行い、100万人以上の死者を出し、3700万人の難民を生み出した国々の完全な免罪符と対照的である。


この扱いの違いは、欧米では気づかれなかった。しかし、「世界の他の国々」は、「法に基づく国際秩序」から、欧米が決定する「ルールに基づく国際秩序」に移行したことを理解したのである[But the “rest of the world” has understood that we have moved from a “law-based international order” to a “rules-based international order” determined by the West.]

より物質的なレベルでは、2020年に英国によるベネズエラの金塊の没収、2021年にアフガニスタンの政府資金の没収、そして2022年に米国によるロシアの政府資金の没収があり、西側の同盟国の不信感を高めている。これは、非西側世界がもはや法に守られず、西側の善意に依存していることを示している。


この対立は、新しい世界秩序の出発点なのだろう。世界が一気に変わるわけではないが、この紛争は世界の人々の関心を高めた。「国際社会」がロシアを非難するといっても、実際には世界人口の18%の話なのだから。


伝統的に西側に近いアクターも、徐々に西側から遠ざかっている。2022年7月15日、ジョー・バイデンは、サウジアラビアがロシアや中国に接近するのを阻止することと、石油の増産を求めるという2つの目的で、モハメド・ビン・サルマン(MbS)を訪ねた。しかし、その4日前にMbSはBRICSのメンバーになることを正式に要請し、1週間後の7月21日にはMbSはプーチンに電話し、OPEC+の決定を支持することを確認したのである。つまり、原油増産はなし。欧米とその最強の代表の顔への平手打ちであった。




◼️ラブロフ露外相 2022年7月27日スピーチ

〔・・・〕我々は、西側が意図する、国際法ではなく彼らのルールによって動かされる世界を選ばなくてはならないかという問題だ。彼らは「ルールに基づく世界秩序」という表現を編み出した。西側の実際の行動を分析すれば、これらのルールがケース・バイ・ケースで違うことが分かる。単一の基準は存在しない。そこにはたった一つの原則しか存在しない。すなわち、西側が欲することには従え、さもなければ罰せられる、ということだ。これが西側の推進する「ルールに基づく世界秩序」の示す将来の姿だ。要するに、EU及びアジアの同盟国を自分の意志に従属させたアメリカの一極世界である。これは提案ではなく最後通告だ。



………………


tobimono2 @tobimono2 Aug 1, 2023


ポリャンスキー国連次席大使


国連はキエフの凶悪化する行動を何度も何度も非難することを拒否する事で、ゼレンスキーとその一派にどんな犯罪を犯してもいいという白紙委任状を与える西側の姿勢に追随している。

次は核テロ、化学テロ、生物テロか?

また沈黙を守り、すべてをロシアのせいにするのか?







By refusing time and again to condemn the increasingly heinous actions of the Kiev regime, the United Nations follows the Western narratives that give Zelensky and his clique carte blanche to commit any crime: “do whatever you want, we will blame everything on the Russian special operation”. As a result, Kiev became convinced of its impunity and turned to terrorism, which it engages in with undisguised delight. I wonder what comes next: nuclear, chemical or biological terrorism? Will you keep silent too or write it all off on Russia?  

ーーDmitry Polyanskiy at UNSC briefing 31 July 2023

➡︎全文:Statement by Chargé d'Affaires of the Russian Federation Dmitry Polyanskiy at UNSC briefing on the issue of a systematic use of terrorist methods by Ukraine, 31 July 2023