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2024年8月31日土曜日

ラブロフの火遊びの話


 数日前のラブロフの火遊びの話はツイッターでざっと見る限りでは、誰も「正確には」引用してくれていないな。いくらか時間をかけてウエブ上から拾わざるを得なかったね。


◾️Foreign Minister Sergey Lavrov’s statement and answers to media questions following talks with Yemeni Minister of Foreign Affairs and Expatriates Shaya al-Zindani, Moscow, August 27, 2024

質問:ガーディアン紙が報じたウクライナの要求についてどう思いますか?彼らはモスクワとサンクトペテルブルクを標的とするストームシャドーミサイルの使用許可を求めており、モスクワに交渉を迫る手段としています。


セルゲイ・ラブロフ外相:これは脅迫であり、西側が過度なエスカレーションを避けようとしているように見せかける試みです。実際、彼らは悪意に満ちています。エスカレーションを避けることは西側が求めているものではありません。わかりやすく言えば、彼らは単に喧嘩を売っているだけです。


これは誰の目にも明らかになっていると思います。私は最近、ホワイトハウスの国家安全保障コミュニケーション顧問であるジョン・カービー氏の言葉を引用しました。数か月前、彼はエスカレーションは危険だと述べました。状況を世界大戦に陥らせることは極めて賢明ではなく、その過程でヨーロッパが被害を受けることになるからです。最近、ジョン・カービー氏は再びこのことを述べました。アメリカ人にとって、第三次世界大戦に関する話はヨーロッパだけに影響するものであり、もしそれが起こったら神に祈るしかありません。これは非常に示唆的だ。なぜなら、この考えは、何もせずにじっとしているだけでいいと信じているアメリカの計画者や地政学の専門家の考え方を反映しているからだ。この状況では、核兵器の使用を規定するものも含め、私たちには独自の教義があることを理解することが大切だと思う。それを更新するための努力が進行中だ。さらに、これらのアメリカ人は、それが定める規定をよく知っている。この事実は、彼らがヨーロッパに被害を与えたくないので、第三次世界大戦が起こるのは悪いことだと言うときのフロイト的失言から明らかだ。これが、このアメリカ人の考え方の本質だ。彼らは、どこか海外に座ったマスターの考え方を持っており、完全に安全で安心だと信じており、ウクライナ人だけでなく、結局のところ、ヨーロッパ人も、彼らのために汚れ仕事をして死ぬことをいとわないと考えている。


ウクライナにストームシャドウミサイルだけでなく、米国製の長距離ミサイルの使用を許可するという憶測が長い間聞こえてきた。ワシントンには、彼らがそれに取り組んでいるという匿名の情報源がいた。この情報源は、ウクライナの要請に対する彼らの全体的な見解は非常に肯定的であると主張した。これ以上は止めておく。ウラジミール・プーチン大統領は、かなり前にそのことについてすべて語った。

今、私たちにできることは、西側諸国の核兵器を担当する男女にとって火遊びは危険なことだということをもう一度確認することだけだが、彼らはまるで大人になったことがないかのようにマッチで遊んでいる。


Question: How would you comment Ukraine’s demands as set forth in The Guardian? They seek the green light to use the Storm Shadow missiles to target Moscow and St Petersburg as a way to force Moscow to negotiate.

Sergey Lavrov: This is blackmail, an attempt to pretend that the West seeks to avoid any excessive escalation. In reality, they are full of mischief. Avoiding escalation is not what the West is after. To put it into plain language, they are simply picking a fight.

I think that this has become obvious to everyone. I have recently cited John Kirby, who is the White House National Security Communications Advisor. A couple of months ago, he said that escalation would be dangerous, since it would be extremely ill-advised to let the situation slide into a world war and that Europe would be the one to suffer in the process. Recently, John Kirby said this again. For Americans, any talk about the third world war comes down to something that would affect Europe alone, and God forbid if it ever happened. This is quite telling, since this idea reflects the mindset of the American planners and geostrategy experts who believe that they can simply sit the whole thing out. I think that it is important to understand in this situation that we have our own doctrine, including the one governing the use of nuclear weapons. An effort to update it is underway. Moreover, these Americans are well aware of the provisions it sets forth. This fact transpires from the Freudian slips they make when they say that having a third world war would be a bad thing because they do not want Europe to suffer. This is what this American mindset comes down to. They have a mindset of a master sitting somewhere out there overseas and believing to be totally safe and secure, thinking that not only Ukrainians, but also, as it turns out, Europeans would be willing to do the dirty work and die for them.

We have long been hearing speculation about authorising Ukraine to use not only the Storm Shadow missiles, but also US-made long-range missiles. There was an anonymous source in Washington who said that they were working on it. This source purported that their overall view of Ukraine’s request is quite positive. I will stop at that. President Vladimir Putin said all about it quite a while ago.

Now, all we can do is confirm once again that playing with fire is a dangerous thing for the men and women in charge of nuclear weapons across the Western world, but they are playing with matches as if they never grew up.




で、スコット・リッターは次のように言っている。


◾️Scott Ritter: US and MSM Are Alien to Truth on Ukraine

Judge Napolitano - Judging Freedom 2024/08/29

ナポリターノ判事:(ラブロフは)米国はマッチで遊ぶ子供のようだと非難し、クレムリンが核政策の調整を行ったと明らかにしている。あなたはこれをどう解釈する?限定的な核戦争など存在しないという意味だろうか?

スコット・リッター:米国では、ロシアとの核戦争の可能性について語っており、ロシアがウクライナに対して核兵器を使用する可能性、あるいはロシアが特定のヨーロッパ諸国に対して核兵器を使用する可能性、国によってその紛争は限定されるだろうと語っている。

そしてラブロフ外相が言ったことは、そして皆さんが彼の言ったことを聞いたことを願うが、核戦争が起きれば、

米国は攻撃されるだろう。

聴衆が私の言っていることを理解できるように、もう一度言う。

欧州で核戦争が起きれば、米国は攻撃されるだろう。ロシアは米国を傷つけるだけでなく、ロシアが攻撃を決断すれば、それはアメリカの報復能力を最小限に抑えるために発射前にアメリカの核戦力を破壊することを目的とした致命的な攻撃となるだろう。

Judge Napolitano: Accusing the United States of being like children playing with matches and that the Kremlin has made, quote, adjustments to its nuclear doctrine. How do you interpret that? What it means is that there is no such thing as a limited nuclear war?


Scott Ritter: In the United States, we speak of the potential of a nuclear conflict with Russia, and we speak of Russia using nuclear weapons against Ukraine, maybe Russia using nuclear weapons against certain European countries, by countries, but that that conflict would be limited to that.

And what Lavrov has said, and I hope everybody heard what he said, that if there's a nuclear war, 

the United States will be hit.

I'll say it one more time just so your audience understands what I'm saying.

If there's a nuclear war in Europe, the United States will be hit. Russia not only will hurt the United States, but if Russia makes a decision to strike, it will be a killing strike designed to destroy America's nuclear force before it launches to minimize America's retaliatory capacity.




厄介なのは、アメリカは核戦争を煽っていながら自らは安全だと思い込んでいることだな、ラブロフ曰くの《アメリカ人の考え方の本質…彼らは、どこか海外に座ったマスターの考え方を持っており、完全に安全で安心だと信じており、ウクライナ人だけでなく、結局のところ、ヨーロッパ人も、彼らのために汚れ仕事をして死ぬことをいとわないと考えている》。



◾️マイケル・ハドソン「米国の共犯:イスラエル、援助、そして議員の循環フロー」US Complicit: Israel, Aid and the Congressman’s Circular Flow

By Michael Hudson, August 1, 2024 

そう、現実には、核戦争が起きてチェス盤がひっくり返されない限り、彼らはどこに行っても負けるでしょう。そして、彼らの考えでは、アメリカはウクライナからイスラエル、イランに至るまで、あらゆる手段を講じて報復を煽っている。さらにアメリカは攻撃を受けている、ただ自国を守っているだけだ、と国民や有権者に告げれば、ナチスも知っていたように、ゲッベルスが言ったように、防衛のためだと言えば、国民を味方につけることができる、ということだと思います。

Well, the reality is they’re going to lose wherever they go, unless there’s atomic war and the chessboard is thrown over. And I think their feeling is the Americans are doing everything they can, from Ukraine to Israel to Iran, to try to stir up a retaliation so that they can then say, ah, we’re under attack, we’re purely defending ourselves, and once you tell your population and your voters this is a war for defense, as the Nazis know, you can always get a—as Goebbels said, you can always get a population on your side if you say it’s for defense.




…………………


100年以上前(1915年)のフロイトの次の記述は現在の状況を示すのに実に的確な文だね。


われわれが信じようともしなかった戦争が、今や勃発し、そしてーー幻滅[Enttäuschung]をもたらした。この戦争は、強力に完成された攻撃用ならびに防御用の武器のために、かつてのどの戦争よりも多量の流血と損傷とをもたらしただけではない。これはまた、少なくとも、かつてのどの戦争とも同様に残酷であり、激烈で情け容赦ないものとなったのである。この戦争は、平時には誰もが義務づけられていたすべての制限[Einschränkungen]ーー国際法[Völkerrecht]とよばれていたあの制限を踏みにじり、負傷者や医師の特権も、住民の戦闘部分と非戦闘部分の区別も、そしてまた私有財産の要求も、いっさい認めはしないのである。この戦争はまた、その道を妨ぐものすべてを盲目的な憤怒をもってうち倒し、戦争の終わった後にも、ひとびとのあいだにはおよそ未来も、平和もあってはならないとでもいうかのようである。そしてまた、この戦争は、互いに死闘をつくす諸民族間の、共同性のきずなをひきちぎり、あとに憤怒を残すことにより、それら民族がふたたび結びつくのを長らく不可能にしてしまうのである。


この戦争はまた、ほとんど信じられないような現象を出現させた。すなわち、文明諸民族が互いにこのように知りあわず、理解もしあわずにおり、そしてまた、そのため互いに憎しみと嫌悪のみをもってあい対するようになるということである。だが、それだけではない。偉大な文明民族の一つが、このように全体的に嫌われ、その民族を「野蛮である」として、文明共同体から排除しようとする試みがなされようとすらしているのである。 たといその民族がそのもっとも偉大な貢献により、文明共同体に対する適合性が長いあいだにわたり立証してきたとしても。われわれは希望する。ある公平な歴史記述が、われわれがその言葉を用い、愛する者たちがその勝利のために戦ったまさにこの国民が、人間的礼節の掟を犯すこともっとも少なかったと立証してくれることを。だが、このような時期に、誰が自分自身のことで裁判官であり得ようか。


諸民族は、その形成する国家によってほぼ代表され、国家はそれを導く政府によって代表されるものである。個々の民族成員は、この戦争でつぎのことを確かめて驚愕するのである。つまり、国家が個人に不正の使用を禁じたのは、それを絶滅しようとしてではなく、塩や煙草と同様に、それらを専有しようとしてのことなのであるということを。この考えは、実はすでに平時においてもときどき浮かんできたものではあったが。戦争をおし進める国家は、個人であったら汚名を浴びせられるであろうような、あらゆる不正、あらゆる暴力をほしいままにする。国家は敵に対し、許されている策略を用いるばかりではない。


それは、意識的な嘘や、意図的な欺瞞をも用い、しかもその利用の範囲は、かつての戦争で慣用されてきたものをさらに上廻ると思われる。国家はその市民に極度の従順と犠牲とを要求し、しかも同時に、過度の秘密主義と、報道や意見発表に対する検閲とによって、市民を一種の禁治産者にしてしまうのだ。このような検閲は、市民を知的に抑制し、すべての不利な状況や、でたらめな不評に対して、気分的にまいらせてしまうのである。国家は、保証や契約により他の諸国家と結びついているのであるが、それも踏みにじられる。そして国家は、自己の所有欲や権力欲[seiner Habgier und seinem Machtstreben]を公言してはばからず、しかも、愛国心の名のもとに、これら渇望を個々の成員が是認することを要求するのである。


国家が不正の行使を放棄しえないのは、それを放棄すれば不利に立つからなのだ、という点で異論はありえない。個人にとっても、道徳的規範を守ったり、残忍な権力行使を放棄したりすることは、通常、非常な不利益をもたらす。しかも国家が個人に要求した犠牲の償いをしうることはほとんどないのである。そこで、人類の諸集団間の道徳的関係のゆるみが、個人の道徳性に反作用をおよぼしたからといって、驚くにはあたらない。というのも、われわれの良心は、道徳家のいうような、不屈の裁判官といったものではなく、本来、「社会的不安」なのであり、それ以外のなにものでもないからである。共同体が批判をやめるとき、悪の渇望[bösen Gelüste]に対する抑制もやむ。そしてひとびとは、残酷で陰険な行為、裏切りと野卑の行為を犯すのだ。このような行為がありうるということは、彼らの文明水準からは考えられないとされていたにもかかわらず。


このようにして、私がこれまで述べてきた文明世界市民は、見知らぬものと化した世界のなかで途方にくれて立ちすくむ。彼の偉大な祖国は崩壊し、共同所有物は荒廃し、そして共同市民は対立しあい、品位を汚しているのである。

共同市民のこの幻滅[Enttäuschung]に対して、若干の批判を加えておくべきであろう。厳密にいって、幻滅は弁護されるべきものではない。なぜならば、幻滅は幻想の崩壊[Zerstörung einer Illusion]なのであるから。幻想は、不快感を免れさせ、そのかわりにわれわれを満足に浸らせることにより、われわれの心にとりいる。幻想は、いつかは現実の断片にぶつかって砕け散るものであり、 その場合にはわれわれは泣きごとをいわずにそれを甘受しなくてはならないのである。

この戦争において、二つのことがわれわれの幻滅をよび起こした。内に対しては道徳的規範の番人としてふるまう諸国家が、外に向かったときにしめす道徳性の欠如がその一つであり、最高度の人間文明への参与者としての個々人が、そのふるまいのなかでしめした、信じられないほどの残虐性が他の一つである。


(フロイト『戦争と死に関する時評』Zeitgemasses über Krieg und Tod, 1915年)


ーーこの文の続きは、「戦争と抑圧されたものの回帰」を見よ。



で、1930年には皆殺しーー人類の滅亡を示唆するようになる。


私の見るところ、人類の宿命的課題は、人間の攻撃欲動ならびに自己破壊欲動による共同生活の妨害を文化の発展によって抑えうるか、またどの程度まで抑えうるかだと思われる。この点、現代という時代こそは特別興味のある時代であろう。

いまや人類は、自然力の征服の点で大きな進歩をとげ、自然力の助けを借りればたがいに最後の一人まで殺し合うことが容易である。現代人の焦燥・不幸・不安のかなりの部分は、われわれがこのことを知っていることから生じている。

Die Schicksalsfrage der Menschenart scheint mir zu sein, ob und in welchem Maße es ihrer Kulturentwicklung gelingen wird, der Störung des Zusammenlebens durch den menschlichen Aggressions- und Selbstvernichtungstrieb Herr zu werden. In diesem Bezug verdient vielleicht gerade die gegenwärtige Zeit ein besonderes Interesse. 

Die Menschen haben es jetzt in der Beherrschung der Naturkräfte so weit gebracht, daß sie es mit deren Hilfe leicht haben, einander bis auf den letzten Mann auszurotten. Sie wissen das, daher ein gut Stück ihrer gegenwärtigen Unruhe, ihres Unglücks, ihrer Angststimmung.

(フロイト『文化の中の居心地の悪さ』第8章、1930年)