例えばラカンは「反復=享楽の回帰」と言っている。 |
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反復は享楽の回帰に基づいている[la répétition est fondée sur un retour de la jouissance](Lacan, S17, 14 Janvier 1970) |
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享楽は穴=トラウマである。 |
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享楽は、抹消として、穴として示される他ない[la jouissance ne s'indiquant là que pour qu'on l'ait de cette effaçon, comme trou](Lacan, Radiophonie, AE434, 1970) |
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現実界は穴=トラウマを為す[le Réel …fait « troumatisme ».](Lacan, S21, 19 Février 1974) |
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つまり享楽の回帰はトラウマの回帰に他ならない。 |
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フロイトはこう言っている。 |
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結局、成人したからといって、原初のトラウマ的不安状況の回帰に対して十分な防衛をもたない[Gegen die Wiederkehr der ursprünglichen traumatischen Angstsituation bietet endlich auch das Erwachsensein keinen zureichenden Schutz; ](フロイト『制止、症状、不安』第9章、1926年) |
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トラウマ的不安とあるが、不安自体、フロイトにおいてトラウマである。 |
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不安はトラウマにおける寄る辺なさへの原初の反応である[Die Angst ist die ursprüngliche Reaktion auf die Hilflosigkeit im Trauma](フロイト『制止、症状、不安』第11章B、1926年) |
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つまりトラウマ的不安状況の回帰とはトラウマの回帰でよい。これが享楽の回帰である。 |
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これは比較的知られているだろうが、フロイトにおいて「抑圧されたものの回帰という表現がある。 |
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抑圧の第一段階ーー原抑圧された欲動ーーは、あらゆる「抑圧」の先駆けでありその条件をなしている固着である[Die erste Phase besteht in der Fixierung, (primär verdrängten Triebe) dem Vorläufer und der Bedingung einer jeden »Verdrängung«. ]〔・・・〕 抑圧されたものの回帰は固着点から起こる[Wiederkehr des Verdrängten…erfolgt von der Stelle der Fixierung her]。(フロイト『自伝的に記述されたパラノイアの一症例に関する精神分析的考察(症例シュレーバー)』1911年、摘要) |
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これは見ての通り実際は、原抑圧されたものの回帰=固着点の回帰だが、この回帰はトラウマの回帰である。 |
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抑圧されたものの回帰は、トラウマと潜伏現象の直接的効果に伴った神経症の本質的特徴としてわれわれは叙述する[die Wiederkehr des Verdrängten, die wir nebst den unmittelbaren Wirkungen des Traumas und dem Phänomen der Latenz unter den wesentlichen Zügen einer Neurose beschrieben haben. ](フロイト『モーセと一神教』3.1.3, 1939年) |
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したがってジャック=アラン・ミレールは抑圧されたものの回帰は、享楽の回帰だと言っている。 |
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「抑圧されたものの回帰」のスキーマは、症状の形態における「享楽の回帰」と相同的である。そしてこの固執する残滓が、ラカンが対象aの名を与えたものである[C'est symétrique du schéma du retour du refoulé, …symétriquement il y a retour de jouissance, sous la forme du symptôme. Et c'est ce reste persistant à quoi Lacan a donné la lettre petit a. ](J.-A. MILLER, Le Partenaire-Symptôme, 10/12/97) |
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残滓あるいは対象aとあるが、残滓=対象a=享楽=固着点である。 |
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残滓がある。分裂の意味における残存物である。この残滓が対象aである[il y a un reste, au sens de la division, un résidu. Ce reste, …c'est le petit(a). ](Lacan, 21 Novembre 1962) |
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享楽は残滓 (а) による[la jouissance…par ce reste : (а) ](Lacan, S10, 13 Mars 1963) |
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対象aはリビドーの固着点に現れる[petit(a) …apparaît que les points de fixation de la libido ](Lacan, S10, 26 Juin 1963) |
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残滓の回帰、享楽の回帰、固着の回帰、そしてトラウマの回帰、これはすべて同じ意味なのである。私は穴の回帰という表現を好むが。ーー《対象aは穴である[l'objet(a), c'est le trou ]》(Lacan, S16, 27 Novembre 1968) ミレールはこういっている。 |
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享楽は真に固着にある。人は常にその固着に回帰する[La jouissance, c'est vraiment à la fixation …on y revient toujours. (J.-A. Miller, Choses de finesse en psychanalyse, 20/5/2009) |
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これは「享楽は真にトラウマにあり、人は常にそのトラウマに回帰する」と言い換えてもよいことになる。 前回次の二文引用した。 |
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現実界は「常に同じ場処に回帰するもの」として現れる[le réel est apparu comme « ce qui revient toujours à la même place » ](Lacan, S16, 05 Mars 1969 ) |
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フロイトが固着点と呼んだもの、この固着点の意味は、「享楽の一者がある」ということであり、常に同じ場処に回帰する。この理由で固着点に現実界の資格を与える[ce qu'il appelle un point de fixation. …Ce que veut dire point de fixation, c'est qu'il y a un Un de jouissance qui revient toujours à la même place, et c'est à ce titre que nous le qualifions de réel. ](J.-A. MILLER, L'Être et l'Un, 30/03/2011) |
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結局、現実界自体が固着である。フロイトのトラウマへの固着[Fixierung an das Trauma]・トラウマ的固着[traumatischen Fixierung]である。トラウマ自体が固着である。固着がなければ反復強迫しない。反復強迫しなければトラウマではない。 つまり現実界は固着、享楽は固着、そして現実界はトラウマ、享楽はトラウマである。 |
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分析経験において、享楽は、何よりもまず、固着を通してやって来る[Dans l'expérience analytique, la jouissance se présente avant tout par le biais de la fixation]. 〔・・・〕 われわれはトラウマ化された享楽を扱っている[dans l'expérience analytique. Nous avons affaire à une jouissance traumatisée]( J.-A. MILLER, L'ÉCONOMIE DE LA JOUISSANCE、2011) |
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分析経験の基盤は厳密にフロイトが「固着 Fixierung」と呼んだものである[fondée dans l'expérience analytique, et précisément dans ce que Freud appelait Fixierung, la fixation. ](J.-A. MILLER, L'Être et l'Un, 30/03/2011) |
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人が欲動の身体をもっていれば人はみなトラウマ化されている。身体はトラウマであるーー《身体は穴である[(le) corps…C'est un trou]》(Lacan, conférence du 30 novembre 1974, Nice)。固着による穴=トラウマである。
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フロイトの反復は、(自我に)同化不能の現実界のトラウマである。まさに同化されないという理由で反復が発生する[La répétition freudienne, c'est la répétition du réel trauma comme inassimilable et c'est précisément le fait qu'elle soit inassimilable qui fait de lui, de ce réel, le ressort de la répétition.](J.-A. MILLER, L'Être et l'Un,- 2/2/2011 ) |
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ひとりの女の回帰でもある・・・
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