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2022年2月25日金曜日

キエフ公国はロシア文明の始まり

2014年の講演だが、こんなことを言っている歴史学者がいるな。


◼️「ウクライナ危機を巡って――歴史の教訓」 議事録

フランク・ミシュランFranck Michelin, 2014 年 4 月 25 日 PDF

ロシアの誕生とその支配 


「ルース(ロシア人)」とは、東のスラブ人を意味する。ロシア帝国時代には、現在のロシアは「大ロシア」、ウクライナは「小ロシア」、ベラルーシは「白ロシア」と呼ばれ、その最初の国家はキエフで誕生した。プーチンが「ロシアはウクライナで生まれた」「キエフはロシア文明の始まり」と語るのはそのためで、ロシアでは周知のようだ。


 11 世紀、黒海からバルト海に及ぶ領土を保有したキエフ公国は、1051 年にキエフ大公の娘がフランス王アンリ1世に嫁いだことから欧州列強の一角を占めるに至った。しかし、モンゴルの侵攻により衰退し、その後モスクワ大公国やポーランド、タタール等によって国土が分割された。一方、当初モンゴルと同盟を結んだモスクワは、16 世紀に全ロシア人支配を目指しロシアと改称する。 キエフで誕生したギリシャ正教系のロシア教会は、ロシア全土に拡大すると共に、ローマ教会の 影響下にあるポーランドと対立するなど、現在もその影響が残っている。ロシアはポーランドへの反感を利用しウクライナ独立を支援する一方、ウクライナ人もロシアの援助を求めた。また、ウクライナ人議会(ラダ)は 1654 年にロシア皇帝への服従を誓うが、ロシアは約束を守らず、ウクライナの自立、特権を認めず問題化する。  



ウクライナの国民意識とユダヤ人問題 


ウクライナではコサック運動により国民意識が形成され、プガチョフの乱など数度の“一揆”が発生しロシアを脅かした。またポーランドの支配下にあった西ウクライナでは、1768 年にポーランド人貴族やカトリック教会に対する暴動が勃発し、ポーランド人やユダヤ人数万人が殺戮された。 19 世紀からロシア帝国で発生したユダヤ人が犠牲者となった一連の事件(ポグロム)の発端は、 1881 年のアレクサンドル 2 世暗殺に対する反動政策であった。しかし、ユダヤ人虐殺は中世から欧州各地で発生していた。なかでも大国の圧力を受けたウクライナでは少数民族への反発が大きいと共に、ユダヤ人が多く居住していたことから特に激しかった。19 世紀後半から第 2 次世界大戦 に至るまで、ロシアやドイツによるユダヤ人の犠牲者は、ウクライナを初めベラルーシ、ポーランド、 バルト三国等を含めると数百万から 1,000 万人に及ぶとされる。 



ーー他にも《ミッテランは「ナショナリズム、それが戦争だ」(Le nationalisme, c'est la guerre.)と語った》とあるね。


《プーチンが「ロシアはウクライナで生まれた」「キエフはロシア文明の始まり」》と言っているというのは寡聞にして知らなかったな。


この際ネットでいくらか検索すると、プーチン自身の発言には当たらないが、似たようなことを言っている記事はある。



Seven Reasons Why Russia Wants to Keep Ukraine All to Itself

Feb. 19, 2014

4. Russia believes Russian and Ukrainian history is inextricably linked


From the Russian point of view, Russia and Ukraine share deep historical and cultural roots. Kyiv, the capital of modern-day Ukraine, is considered the birthplace of orthodox Christianity and Russian civilization.


Kyiv was the center of a powerful civilization called Kievan Rus, a medieval federation of eastern Slavic tribes established in the 9th century, which preceded the nation states of Russia and Ukraine.



キエフ公国はロシア文明の始まりというのは、確かなようだ。






冒頭の講演者フランク・ミシュランFranck Michelin氏のツイッターアカウントを見出した。ほとんど仏語でツイートしているのだが、二日前に日本語ツイートをひとつしているので貼り付けておく。






最後にもう一度2014年の講演の質疑応答の箇所に戻る。議事録の書き方が不鮮明で、どれが質問でどれがフランク・ミシュラン氏の応答なのかはっきりしないが、たぶん次の二文は先のものが問いで、後者がミシュラン氏の発言。


◼️やはり経済の影響が大きい。ロシアでは資本流出が進んだ結果、経済が悪化した。さらにクリミアを抱えるとなると、ますます財政が苦しくなる。ナショナリズムだけではやっていけない。 

◼️逆の可能性もある。経済や内政が苦しくなると、政権維持のために外に強く出る誘因が働く。 


しばしば語られてきた内政失敗から国民の目を逸らし権力維持のために他国との戦争に向かうという論理だが、この論理がこの今に当てはまる可能性はどうなのだろう?



これはルーブルがだいぶ安くなっている影響大だろうな。ドル換算で2014年から2020 年のわずか6年で3割ほどは減ってんだから。