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2022年5月31日火曜日

偏向「ウクライナ年表」から見えてくること

 遠藤誉さんが今年の3月10日に示した2008年以降のウクライナ年表をあらためて眺めて見たが、とってもいいね、これ。



年表:ウクライナの中立は如何にして潰されたのか


ウクライナ

欧米側の動き

親欧米派

親露派

2008

1月の世論調査では、50%のウクライナ人がNATO加盟に反対、24.3%がNATO加盟を支持

1月、大統領立候補者オバマがウクライナのMAP加盟を歓迎すると発表


4月、ブッシュ大統領がウクライナ訪問、NATO 加盟を支持

4月、NATOブカレストサミットでドイツとフランスの反対によりウクライナのMAP加盟が却下された



9月、ウクライナ-EUサミット

4月、アメリカのブッシュ大統領がキエフを訪問した際、1000人程度のウクライナ人がキエフでブッシュに抗議活動

2009

5月、EUの東方パートナーシップに参加


7月、バイデン副大統領がウクライナ訪問、ウクライナのNATO 加盟を強く支持すると発言

2010


ヤヌコーヴィチが

3月、EU 訪問

6月、EUとの自由貿易協定に関する法整備

6月、NATO と軍事演習などをする協力計画を許可


10月、EUとの間のビザ免除ロードマップを締結

2月、ヤヌコーヴィチが大統領当選、ヤヌコーヴィチ政権発足

ヤヌコーヴィチが

3月、モスクワ訪問

4月、ロシア黒海艦隊の契約を延長

6月、中立を保ち、NATO に加盟しない法律を措定


2011


8月、ティモシェンコ元大統領を汚職で逮捕

ティモシェンコの逮捕は国策捜査だとして非難

2012

3月、EUとの連合協定を仮調印

7月、ロシア語の地位を守る法律を採決

ティモシェンコの釈放を要求

2013

11月21日夜、EUとの連合協定調印中止を受けて、野党党首の呼びかけによるマイダン革命勃発

11月21日、EUとの連合協定調印を中止


12月15日、ジョン・マケイン共和党上院議員とクリス・マーフィー民主党上院議員がウクライナを訪問し、野党党首と会談して、マイダン革命を支持した大衆を応援し激励した

2014

2月、ウクライナ騒乱、言語法廃止

6月、ポロシェンコ政権発足

10月、議会選挙後NATO加盟を優先事項に

12月、中立放棄を宣言、ポロシェンコがNATO加盟に国民投票を約束

2月、ヤヌコーヴィチ大統領ロシアへ亡命

3月、クリミア独立宣言、ロシアによるクリミア併合、ドンバス地方武装蜂起

4月、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国建国

9月、ミンスク議定書を調印


2014年初頭、バイデンがオバマにウクライナ問題を担当したいと申し出て、ウクライナに軍事援助(対戦車ミサイル)の提供をしたいと主張したがオバマにより却下された

2月、ヌーランドアメリカ国務次官補とパイアット在ウクライナアメリカ大使、ウクライナの政変を望み、野党指導者に期待する役割について話し合っている録音がリークされた

4月、バイデンがウクライナ訪問

4月、ハンター・バイデンがウクライナ最大の天然ガス会社の取締役に就職

6月、バイデンがウクライナ訪問、ポロシェンコ大統領就任式に参加

11月、バイデンがウクライナ訪問

2015

NATOと共同軍事演習を5回以上行う

2月、ミンスク2を調印

4月、アメリカがウクライナ軍を訓練

9月、NATOがウクライナ軍訓練に540 万ユーロを提供

12月、バイデンがウクライナ訪問、ウクライナ最高議会で講演

2016

1月、EUウクライナ自由貿易区発効


3月、ハンター・バイデンが取締役を務める会社を調査する検事総長が解任された(バイデン副大統領がポロシェンコを脅迫)

2017

6月、最高議会がNATO 加盟を外交優先政策と決定

7月、ポロシェンコがNATO とMAPについて交渉開始


1月、バイデン、副大統領離任前にウクライナ訪問

1月、大統領選挙中からNATO不要論を掲げたトランプが就任

2018

1月、ドンバス再統合法可決

9月、憲法修正案を許可、NATO とEU加盟を努力目標に



2019

2月、憲法改正、NATO とEU加盟を努力義務に

5月、ゼレンスキー政権発足




11月、マクロンがNATO は脳死状態と批判

2020

1月、ロシア語を禁じる法が施行

9月、NATO加盟の新しい国家戦略を許可



2021



1月、バイデン政権誕生

8月、アフガニスタン米軍撤退の惨状

9月20日、NATOを中心とした15ヵ国6000人の多国籍軍によるウクライナとの軍事演習を展開

10月23日、バイデンはウクライナに180基の対戦車ミサイルシステム(ジャベリン)を配備

12月7日、ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合、米軍をウクライナ国内に派遣してロシアの軍事侵攻を阻むことについて、バイデンは「検討していない」と否定的な考えを示した

2022



1月26日、ウクライナのNATO 加盟を許さないなどのロシアの要求をNATO が正式に却下

作者:遠藤誉 2022/3/10




とはいえーー2014年の出来事はしばしば語られいるのだがーー、それ以降の出来事だな。いまだ「8年間ドンバスが露に支配されてきた」と言っているらしい国際政治学者諸氏がいる一方で、ドンバスのロシア語話者は分離独立を求めたのではなく自治権の侵害に対して自ら反旗を翻したのだ、という見方がある。そのドンバス住民をウクライナ政府は8年間のあいだに約14000人虐殺したと。


この観点において注目すべき動きのひとつは、


・2012年7月、ロシア語地位を守る法律採択

・2014年2月、言語法廃止

・2020年1月、ロシア語を禁じる法施行

だ。


ウクライナ語とロシア語は、東京弁と沖縄弁ほどの差はないそうで(塩川伸明「ウクライナ情勢から見た「地域と国家」」2014年)、今の関西弁や東北弁よりは遠いだろうが、言ってしまえば、東京政府が関西弁や東北弁を禁止したようなものだ。ドンバス住民が怒って反乱するに決まっている。


ほかにもゼレンスキーは2019年ミンスク合意を守ると言って大統領に選ばれたのに、さる事情で?、その約束を放棄せざるを得なくなったという話がある。


遠藤誉さんの年表は米国政権への強い批判の下に作成されたもので、親米派からは「偏った年表」と見るだろうが、8年間ドンバスが露に支配されてきた」という主張を続けている国際政治学者者たちは、いつまでも米国ドグマに囚われておらずに、どうしたらそう言えるのか、彼らの観点からの年表をまず作ってみたらどうだろう?