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2022年7月2日土曜日

ウクライナとNATOは消えてなくなるだろう(スコット・リッター、2022/06/18)

 



スコット・リッターの「ウクライナバイバイ」「NATOバイバイ」である。つまりウクライナとNATOは消えてなくなるだろうという話だ。ほぼ同時期に語られた、前回の「歴史は、ウクライナに対する極めて愚かな政策について、米国とその同盟国を厳しく裁くことになるだろう」(ミアシャイマー、2022/06/16)とともに読むと、両者は米国を強く批判している同じ立場でありながら、その結論における国際政治学者と軍事専門家との微妙な差異が現れており、いっそう味わい深い。



The Sun Snores Press @taiyonoibiki 2022/06/29


ロシア介入4ヶ月後のウクライナ再評価/スコット・リッター

Ukraine War Update and Analysis w/Scott Ritter. 2022/06/18

今年2022年2月24日、ロシアは

❶ウクライナの非ナチス化

❷ウクライナの非NATO化

という二つの明確な目的を挙げてウクライナに軍事介入しました。

あれから4ヶ月、今、ウクライナはどうなっているのでしょうか?


介入後、世界はどう変わったのか?

ロシアが挙げた目的は達成されたのか?

目的が現実的に意味するものは何だったのか?

戦争はこれからどうなっていくのか?

ロシア、ウクライナ、アメリカ合衆国とその同盟は、世界はこれからどうなっていくのか?

スコット・リッターが下した最新の「ロシア特別軍事作戦ウクライナ4ヶ月評価」をダニー・ハイフォン(The Left Lens)インタビューから6回シリーズでお送りします。


Ukraine War Update and Analysis w/Scott Ritterから (長大なのでスコットの解答部分のみ全訳)

①シリーズ⑴ウクライナ国家は消滅し、NATOも消滅する


スコット:戦争における勝者と敗者について一般的な話をしましょう。例えばヒズボラがイスラエルと戦っています。その場合、イスラエルがヒズボラを殲滅できればイスラエルの勝ち。


②スコット:反対にヒズボラが殲滅されずにイスラエルと戦い続けることができればヒズボラの勝ちです。たとえヒズボラがイスラエルを降伏させられなくても、戦い続けることができる限り、ヒズボラは勝っていると言えます。それをウクライナとロシアの場合に当てはめてみましょう。


③スコット:ウクライナはロシアをウクライナから追い出すことはできません。しかしウクライナがロシアと戦い続けることができればウクライナは勝っているということになるでしょう。そして、今、西側が狙っていることがまさにそれなのです。


④スコット:ウクライナに大量の武器を送り続け、その武器でウクライナ人がロシア人を殺し続ける事ができる限り、ウクライナは勝っているといえる。たとえロシア人一人を殺すのにウクライナ人が20人死ぬことになっても構いません。実際に、今もロシア人は殺されています。やはり、これは戦争ですから。


⑤スコット:しかも、これは過去数十年間戦われた戦争の中で最も厳しい戦争です。アメリカ合衆国はこれほど激しい、集中した大規模の戦闘を長い間経験していません。最後の戦闘が朝鮮戦争でした。


⑥スコット:ベトナム戦争は確かにその期間の長さと規模の大きさによって大きな戦争だったと言えますが、戦場の、現場の猛烈な極度に集中した激しさという視点で評価すると、ベトナム戦争といえども今のウクライナで起きている戦闘の激しさに遠く及びません。


⑦スコット:状況のアウトラインを言うと、戦争を支配しているのは圧倒的にロシア軍だということになります。ロシアは非常に控えめに、また無口に、戦況を世界に報道しようとしませんが、またそれは西側からブロックされて伝わらないようになっていますが。


⑧スコット:ロシアは最初に明確にこの特殊軍事作戦の次の二つの目標を公表しました。つまり、❶ウクライナの非ナチス化。これは単に物理的にウルトラ・ナショナリスト、ネオナチの軍隊を破壊することだけではありません。


⑨スコット:ネオナチ政党、そしてネオナチのイデオロギーをウクライナから法的に完全に一掃することを意味します。この作戦が終了した時、ステパン・バンデラが国民的英雄と見なされることはもうありません。


⑩スコット:バンデラ記念日はなくなり、ストリートからその名前は消え、モニュメントはスクラップになることでしょう。第二次世界大戦中、ウクライナのウルトラ・ナショナリストたちはナチス・ドイツと手と手を取り合って、数万人数十万人のユダヤ人、ポーランド人、ロシア人を虐殺しました。


⑪スコット:なぜなら、彼らは自分たちをスーパーヒューマン(超人)と見做しており、金髪・青い目の西ウクライナ人とドイツ人を同じアーリア人同朋と見做していたからです。


⑫スコット:実際に、アーリア人の血を純化するという目的で数千人の西ウクライナの子どもをドイツに送って一定期間そこで住まわせるようなことまでしていました。現在のウクライナ・ウルトラ・ナショナリズムはナチス・イデオロギーの現代版なのです。


⑬スコット:そして私の父や祖父たちはロシア人といっしょにそのナチスを打ち負かすために命をかけて戦ったのです。ところが悲しいことに現在、私たちの父や祖父たちの戦いはアメリカが州国やイギリスやフランスから支持されていません。


⑭スコット:ロシアの特別軍事作戦のもう一つの目的が❷ウクライナの非軍事化(非NATO化)です。ウクライナのNATO施設、兵器、組織、訓練、指揮の全てを跡形もなく取り去ってしまうことです。


⑮スコット:現在も、アメリカとその同盟は何百億ドルもの武器をウクライナに送り続けていますが、それらは全てロシア軍によって破壊されるか、戦利品としてロシア軍に押収される運命にあります。


⑯スコット:ですから、今、ロシアの納税者は「高価な最新兵器を私たちに大量にくれてありがとう」とアメリカの納税者に感謝していることでしょう。なぜなら、それらは結局ロシアが所有することになるからです。


⑰スコット:ウクライナが非NATO化することでウクライナは永久に中立化される。それが今回のロシアの特別軍事作戦の目的です。そして、この二つの目的が完全に達成される日まで、軍事作戦が終わることはありません。


⑱スコット:ロシア人は真面目です。ロシア人について、一つはっきりしていることがあります。それは「ロシア人は決してホラを吹かない」ということです。彼らはそれを言い、そして実直に行います。ロシアの特別軍事作戦は正当な理由を持って始められた特別軍事作戦です。これは戦争ではありません。


⑲スコット:もし戦争なら100万人単位のロシア人が動員されたはずですが、今回はそれがありません。ロシアはウクライナと戦争をしたくないし、ウクライナと戦争しているわけでもありません。これはナチスとNATOに対する特別軍事作戦なのです。


⑳スコット:そしてウクライナに存在してウクライナのナチス化・NATO化に強化している政治要素に対する軍事作戦なのです。決してウクライナの人々に対する軍事作戦ではありません。しかし、悲しいことには現実的にここ30年間でナチス国家・NATO国家に変えられてしまいました。


㉑スコット:ウクライナがナチス化すること、ウクライナがNATO化すること、ウクライナが西側から兵器を受け取ることは、ウクライナの自殺用の毒薬を手にすることです。そしてウクライナはその薬を飲みました。繰り返しますが、戦闘を支配しているのは圧倒的にロシアです。


㉒スコット:作戦開始当時、ロシア人兵士一人に対しウクライナ人兵士6人が死んでいましたが、今はロシア人兵士一人に対し、15人から20人のウクライナ人兵士が死んでいるはずです。これによりロシアはさらに有利になります。なぜならこの特別軍事作戦はわずか20万人のロシア軍によって始められました。


㉓スコット:多くのロシア人が死に、また負傷しました。正確な数字は分かりませんが、死者負傷者合わせて4万5千人くらいにはなっていると思います。大変な数です。しかし、ロシアはそこに4万から6万の兵力を補充しました。ですから兵力自体は変わっていません。


㉔スコット:それに対し、ウクライナは26万の正規軍、そこに30万の退役軍人で始め、それ以来70万人以上を動員しています。戦闘はすぐに砲撃戦となりましたが、ロシア軍は世界の砲撃戦王なのです。


㉕スコット:ここで一つ、ウクライナ軍が絶対に勝てない理由を説明すると、ウクライナ軍が一日に放つ砲弾の数は5,000発から6,000発です。大変な数です。それに対しロシア軍が一日に放つ砲弾の数は60,000発から75,000発です。


㉖スコット:湾岸戦争の時と比べてみると、あの時アメリカ合衆国は50万の兵力を投入しましたが、「砂漠の嵐」作戦全体を通して使われた砲弾の数が合計60,000発でした。ですから、ロシア軍は一日ごとにそれを更新していることになります。ウクライナ軍に対し、毎日10倍の破壊力です。


㉗スコット:それは日を追う毎にウクライナ軍の受けるダメージが悲惨なものになっていくことを意味します。ウクライナは過去8年間でドンバス侵攻の準備として国内各地にたくさんの頑強な砦を築いてきました。しかし、その砦をロシア軍が一つ一つ陥落しています。


㉘スコット:一つの砦が陥落するまで時間稼ぎとしてさらにその背後の砦を強化していますが、その間にも夥しい数のウクライナ兵が殺されていきます。ウクライナ軍はアメリカ合衆国からさらに最新鋭の兵器が届くのを待って時間稼ぎをしているのです。


㉙スコット:ウクライナ兵がそれらの武器を使いこなせるようになるためには一定の集中的な訓練期間が必要です。その訓練はウクライナ国内で行われていません。フランスやドイツやポーランドで行われているのです。


㉚スコット:先日、ボリス・ジョンソンがゼレンスキーに会うためにウクライナに飛びました。イギリスでの訓練を提案するためです。ウクライナの目的はロシアに破壊された軍隊を再生することです。そしてロシアの苦痛を増して、作戦継続不可能な苦痛の閾までロシアを追い詰めていくことです。


㉛スコット:そのためにウクライナはロシアを打ち負かす必要はありません。最初に話したように、ウクライナはロシアに降参さえしなければ勝っていると言えるからです。そして、現在の状況はというと、ウクライナと西側に、それが可能だと信じている人たちがいるということです。


㉜スコット:だからこそ実際にフランス、ドイツ、ルーマニア、イタリアの四カ国首脳がキエフに行きゼレンスキーに会ったのです。そしてみんなでゼレンスキーを励ましました。四首脳はゼレンスキーにNATOメンバーを約束し更なる武器の支援を約束し、いざとなったら軍隊を連れて参加すると約束しました。


㉝スコット:そしてその後キエフに行ったボリス・ジョンソンが四か月ごとに1万人の兵士をイギリスで訓練することを約束しました。しかし、それらは全て夢のまた夢です。なぜなら、そこでウクライナは1000両の大砲を要求しました。


㉞スコット:アメリカ合衆国軍隊と海兵隊の大砲の在庫全て合わせて約1000両です。つまり、ウクライナはアメリカ軍と海兵隊の持っている大砲を全部よこせと言っているのです。またウクライナは戦車500両よこせと要求してきました。


㉟スコット:イギリス軍とドイツ軍が持っている戦車を全部合わせても500両なんかありません。つまり、ウクライナはイギリスとドイツの持っている戦車全部合わせても足りないほどの戦車をよこせと言っているのです。なぜウクライナはそれを要求しているのでしょうか?


㊱スコット:その理由は、この8年間、ウクライナがNATOと一緒になってせっせと築き上げてきた軍事力全てを短期間でロシアが破壊してしまったからです。ウクライナと違ってロシア軍はどこにも武器を援助してくれなんて頼みませんよ。すでに十分に持っているので頼む必要はないのです。


㊲スコット:ここまでをおさらいすると、つまりこういうことです。ただロシアに破壊されるか押収されるためにだけ、西側はせっせとウクライナに大量の武器を送っている。ここに学ぶべき一つの教訓があります。それは「西側は小さなファンタジー・ワールドに住んでいる」というものです。


㊳スコット:昨日だったか今日だったか、デニス・プッシーリンが、確かそういう名前だと思いますが、新しく生まれた二つの共和国の一つでロシア軍と一緒にウクライナと戦っているドニエツク人民共和国大統領です。


㊴スコット:彼がセントペテルブルクのエコノミック・フォーラムの席で、これはロシアの領土内でロシア大統領が主催するフォーラムですから、そこで彼はクレムリンに反対するようなことは言いません。その彼が「特殊軍事作戦の終結はおそらく今年の年末になるだろう」と言いました。


㊵スコット:ですから、戦争が数週間か2ヶ月くらいの間で集結すると思っている人は全て間違っていることになります。もちろんタイムテーブルを作るのはロシアです。そしてこれから年末にかけてロシアは軍事作戦を継続していく。ウクライナ・ナチスを一人一人しらみつぶしに炙り出し、潰していく。


㊶スコット:それは避けられないことを意味しています。また、プッシーリンは「ドンバスを解放した時点で作戦が終わると思っていたら、それは大きな間違いだ。なぜなら、NATOは今でも西ウクライナに大量の武器を送り続け、そこからドンバスを攻撃してくるからだ」と言いました。


㊷スコット:そして「ドンバスへの攻撃をやめさせるにはロシアが特別軍事作戦を完璧に遂行する以外にない。私たちはNATOが作ったウクライナの軍隊を完膚なきまでに破壊するまで作戦を継続する」と言いました。


㊸スコット:さらに彼は「カーコフ、オデッサ、デプレペトロースクなど、ロシア人の都市はロシアに属するべきだ」と言いました。圧倒的にロシア人人口が多い都市はロシアにするべきであり、それらの都市が全てロシアのコントロール下に入るまで軍事作戦は続けられることを意味します。


㊹スコット:そして最後に彼は「私は国家としてのウクライナが生き残れる可能性はないと考えている」と言いました。つまり、軍事作戦が完了した時、


ウクライナはバイバイ


ということを意味します。そして「ゼレンスキーは戦争犯罪者として逮捕され、裁判にかけられるだろう」と言いました。


㊺スコット:なぜ、セントペテルブルクの経済フォーラムでロシアはこれらの事を公表したのでしょうか。それは、ウクライナと違ってロシアにはこれから起きることを自ら決定していく能力があるからです。そして実際にロシアの思惑通りになっていくはずです。これが、私たちは現在立っている状況です。


㊻スコット:これは大変なことです。なぜならアメリカ合衆国とNATOが今直面しているのは、道徳的であると同時に物理的にも完全にロシアに敗北することだからです。私はそれが意味するものはNATOの終わりだと思っています。NATOが生き残れる可能性はないでしょう。


㊼スコット:昨年8月、NATOはアフガニスタンで屈辱的な敗北を経験しました。素朴なカラシニコフとロケット・プロペラ・グリュネードしか持たないタリバン相手に20年も戦った末、結局敗退したのです。あれからNATOは混乱しきっています。


㊽スコット:俺たちは何なのか?俺たちは何をしてるのか?俺たちはこれからどこへ行くのか?そして今、勇敢にもロシアに戦争を仕掛け、再びこっぴどく負けようとしているのです。実際に戦わずしてです。この軍事作戦が終了した時、ロシア軍は世界で最も油の乗りきった最強の軍隊になっているはずです。


㊾スコット:それに対してNATOは貧弱な訓練、貧弱な指導者、そしてウクライナに渡してしまってすっかり空っぽになってしまった軍の倉庫という世界で最も情けない軍隊になっているはずです。


NATOはバイバイです。( ^_^)/~~~


それが私たちのいる現実の有様です。


(了)