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2023年3月2日木曜日

寂しい花を愛する平和な人間

 

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Schumann - Adi Neuhaus (2023) Waldszenen op. 82


アディ・ネイガウスか。あの名高いゲンリヒ・ネイガウス Heinrich Neuhausーーギレリス、リヒテル、ルプーなどの教師ーーの孫だそうだ。


このシューマンの『森の情景』は2ヶ月ほど前だったかにハスキルの1954年録音版を初めて聴いて、以前から親しんでいた彼女の1947年版よりずっといいなと感じ、他の名手たちの演奏、リヒテル、ホロヴィッツ、ギーゼキング、アラウなどと聴き比べてみたのだが、このアディ・ネイガウスの演奏が今はなんだか気に入ってしまった。静かなのである、囁くようで。とくに3曲目の「寂しい花 (Einsame Blumen)」がとってもいい、遠くの扉が開くようで。


この曲に限らず、最近シューマンがいいんだよな、ほかの作曲家はうるさく感じることが多い。なぜかね。「子供の情景」とか「森の情景」なんてね、と軽くあしらっていた時期があるんだが、やっぱり私はこういった曲を愛する平和な人間なんだろうよ。



私はまったく平和的な人間だ。私の希望といえば、粗末な小屋に藁ぶき屋根、ただしベッドと食事は上等品、非常に新鮮なミルクにバター、窓の前には花、玄関先にはきれいな木が五、六本――それに、私の幸福を完全なものにして下さる意志が神さまにおありなら、これらの木に私の敵をまあ六人か七人ぶら下げて、私を喜ばせて下さるだろう。そうすれば私は、大いに感激して、これらの敵が生前私に加えたあらゆる不正を、死刑執行まえに許してやることだろう――まったくのところ、敵は許してやるべきだ。でもそれは、敵が絞首刑になるときまってからだ。(ハイネ『随想』)

Ich habe die friedlichste Gesinnung. Meine Wünsche sind: eine bescheidene Hütte, ein Strohdach, aber ein gutes Bett, gutes Essen, Milch und Butter, sehr frisch, vor dem Fenster Blumen, vor der Tür einige schöne Baume, und wenn der liebe Gott mich ganz glücklich machen will, läßt er mich die Freude erleben, daß an diesen Bäumen etwa sechs bis sieben meiner Feinde aufgehängt werden. Mit gerührtem Herzen werde ich ihnen vor ihrem Tode alle Unbill verzeihen, die sie mir im Leben zugefügt — ja, man muß seinen Feinden verzeihen, aber nicht früher, als bis sie gehenkt werden. (Heine, Gedanken und Einfälle.)



そうそう、僕はサムイル・フェインベルクみたいな声で歌ってるんだよ、寂しい花を、声を潜めて。ーSamuil Feinberg plays and sings Schumann’s "Einsame Blumen" from Waldszenen Op.82


今はグールドのシューベルトみたいに歌う気にはまったくなれないね、ーSchubert - Symphony No.5, 1st. mov - Glenn Gould