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2023年6月20日火曜日

再びやって来た夏の日々

 

◼️若きドン・ジュアンの冒険    アポリネール/須賀慣訳 

夏の日々が再びやって来た。母はごく最近わが家のものになった、田舎の地所へすでに出かけていた。 〔・・・〕母は自分よりずっと年下の、まだどこかへ縁づかなければならない母の妹と、部星付きの女中と、ひとり息子のぼくと、姉の中でも、ぼくよりも、一つ年上の姉を連れていった。 〔・・・〕


ぼくたちは、地下室から屋根裏部屋まで、城の隅から隅まで見物して回った。ぼくたちは柱の回りで隠れんぼをして遊んだり、ぼくたちのうちどちらかひとりが階段の下に身をひそめて、相手の度胆を抜くように、大声をあげていきなりとび出してやろうと、相手が通るのを待ちかまえたりしたものだった。  


地下庫に通じる階段はすこぶる急だった。ある日、ぼくがベルトの先に立ってここへ降りたときのことだった。ぼくは煖炉から出ている二本のパイプのあいだに身を隠していた。階段は、天井に開いた明かり取りの窓で明るく照らされているのに、ここはとっても暗い。四方八方に注意を配りながら降りてくる姉の姿が現れると、ぼくは威勢よく犬のほえ声をまねしながらとび出した。ぼくがそこにいるのを知らないベルトはすっかり恐怖に襲われて足をとられ、次の段を踏み外してひっくり返ってしまった。その有様はといえば、両脚はまだ段にかかっているのに、頭だけ階段の下につくというあんばいだった。  


当然のはなしだが、ドレスがまくれ上がり、顔をすっぽり覆って、両脚がむき出しになった。   


ニヤニヤしながら近寄ってみると、ドレスについてシュミーズもへその上のほうまでまくれ上がっているのが見えた。  


ベルトはパンツをはいていなかった。それというのも、のちに彼女が打ち明けたところによると、彼女のパンツは汚れていたし、それにまだ彼女の下着の包みを解く暇がなかったからだという。ぼくが、姉の淫らなヌード姿を初めてながめたのはこんなわけからである。 〔・・・〕


階段から落ちたショツクと恐怖のために、彼女はまるで落雷に打たれたようだった。ぼくはといえば、姉がぼくをびっくりさせようとしているのだ、とばかり信じていたし、それにぼくの心中では、かわいそうにという気持ちよりも好奇心のほうが先に立っていた。  


彼女の下半身むき出しになった部分から、ぼくは目をそらすことができなかった。ぼくは彼女の下腹が太腿と合流する場所、奇妙な台地、ブロンドの下草がチョロチョロとのぞいている、三角地帯《デルタ》の、脂ののった丘に目を凝らしていた。ほとんど、二本の太腿が合流するあたりの部分で、丘はほぼ三センチメートルばかりの太い裂け目で両翼に分断され、二つの唇で分けられていた。姉が起き上がろうと、一所懸命骨を折っているときに、ぼくはこの裂け目が消えてなくなる部分に目を凝らしていた。  


おそらく彼女のほうは、自分の下半身がむき出しになっているなどとはまったく考えてもみなかったにちがいない。というのは、それでなければ彼女にしてもめくれた洋服の裾を下ろしただろう。ところが彼女はやにわに、足を下に下げながら太腿を開いた。そこでぼくには、太腿をつぼめていたときに見えていた前端の部分が、尻の近くで合流するのにどんなふうにして流れを描いてゆくか、その有様がはっきりと見えた。  


忙しく体を動かすうちに、彼女はわれ目を半開きにしていたが、そのとき、このわれ目の長さは七、八センチメートルほどだった。そのあいだ、彼女の体の他の部分はミルクのような色をしていたが、一方そのわれ目の内部からは、真赤な肉が顔をのぞかせていた。もっとも、唇の近くの、かすかに紅を刷いた股間はこの限りではないと断らなければならない。しかしこのかすかな紅は、おそらく汗とおしっこのせいで色着いたものだろう。  


その形があんずの実のわれ目にそっくりな、彼女の丘のふもとのあいだ、後ろの丘陵の狭間には指二、三本の距離があいていた。ここにベルトの後ろの洞窟が開いていたが、これは姉が体の向きを変えて、ぼくのほうに尻をグッと突き出した瞬間に、ぼくの目に映ったのである。この洞窟は、ぼくの指先ほどの大きさで、ずっとくすんだ色をしていた。左右の丘陵のあいだの膚は、汗のために軽く赤らんでいた。その日は暑かったので汗をかいていたのである。 



《金曜日。私の学術出版社は何と言うだろうか、ロンサールの“朱色の割れ目”とか、レミ・ベローの“緋色の筋のまわりにひろがる繊細な苔におおわれた丘”などと、もし引用したら。

Friday. I wonder what my academic publishers would say if I were to quote in my textbook Ronsard's "la vermeillette fente" or Remy Belleau's "un petit mont feutré de mousse délicate, tracé sur le milieu d'un fillet escarlatte" and so forth. 》(ナボコフ『ロリータ』)



……その翌日、ぼくがコーヒーを飲み終わると、管理人の細君が寝室を片づけにやって来た。前にも言ったが、彼女は妊娠していて、ぼくは彼女の巨大な腹の出っぱり具合と、おっぱいの、ちょっと例を見ないほどの大きさまでつらつらながめることができた。彼女が着ている薄いブラウスの下で、このおっぱいが上下左右にブランブランと揺れるさまを見ることができた。 〔・・・〕


管理人の細君は急いでいた。彼女は、ブラウスのボタンを一個しかはめていなかったから、ぼくのベッドを整えようとして体をかがめると、このボタンが外れて、彼女の胸のあたりがすっかりぼくの目に入るようなあんばいだった。それというのも、彼女は襟ぐりを大きく開いたVネックのシュミーズを着ていたからである。  


ぼくはとび上がった。 


「マダム! からだが冷えますよ!」  こう言って、ブラウスのボタンをかけてやるふりをしながら、両肩でシュミーズをとめているリボンを解いた。そのひょうしに、両方のおっぱいがその隠れ家からボインとはずみ出たような具合になり、ぼくはその大きく張り切った感じを味わった。  


両方の乳房の、それぞれのまん中に鎮座する乳首がはじけ出た。乳首は赤く、とても広い、茶色がかった暈で回りをぐるりと囲まれていた。  


そのおっぱいは、左右の臀と同じように固く張りきっていて、ぼくが両手でちょっとそれを押してみると、まるできれいな娘の尻とまちがえそうな感じだった。  


この女はあんまりびっくりしてしまったので、ぼくには、彼女がその興奮からさめやらぬうちに、これさいわいとゆっくりと、その乳房にキスをする余裕があった。  


彼女は汗の匂いがした。が、匂いといってもぼくの気分をそそりたてる、しごく感じのいい匂いである。のちになって知ったことだが、これこそ、女性の肉体から発散する、 「女のにおい」で、その天来の性質に従って、快感か、でなければ嫌悪の情をそそるものである。 


「アラアラ! いけないわ! 何を考えていらっしゃるの?……いけませんよ……そんなこと、なさっちゃあだめよ……あたし、これでも人妻ですからね……ほんのちょっとしたことがあっても……」  


ぼくが彼女をベッドのほうに押しつけているあいだ、彼女が口にした言葉がこれだ。ぼくは自分の部屋着の前を開き、シャツをまくり上げて、いまや恐るべき興奮状態にあるぼくをお目にかけた。 


「放してください。あたし妊娠しているんです。アア! 神さま! だれかがあたしたちのこんなところを見たら」  


彼女はさらに身を護ろうとしたが、それもだんだん弱くなっていった。  


それでも彼女の視線は、ぼくの下腹のあたりに注がれていた。彼女はベッドを背にして立っていたが、ぼくは彼女をベッドの上に横にしようと懸命に頑張っていた。 


「痛いわ!」  


そこでぼくはこう言った。 


「きれいな奥さん! ぼくたちはだれにも見えないし、ぼくたちの声は聞こえませんよ」  


今ではもう、彼女はベッドの上に腰を下ろしていた。ぼくはさらに彼女の体を押しつけた。彼女の体から力がなくなり、仰向けになって目をつぶった。  


ぼくの興奮はもはやとどまるところを知らなかった。ぼくが彼女の着ているものをまくり上げると、二本のみごとな太腿が目に入ったが、それはあの百姓女たちの太腿よりいっそうぼくの心をはずませた。ピタリと閉ざされた太腿のあいだに、栗色の下草のかわいい茂みが見えたが、その先までは見分けることはできなかった。  


ぼくはひざまずいて、その太腿をつかみ、あちらこちらに触れ、その上に頬をすり寄せてキスをした。ぼくの舌は、ビーナスの丘のあたりを逍遙したが、そのあたりからおしっこの匂いが立ち昇り、それがさらにいっそうぼくの心をかき立てるのだった。 


ぼくは彼女のシュミーズをまくり上げると、彼女の巨大な腹を驚異のまなこで見つめた。ここではおへそが、姉の体のように凹んではいないで、その代わり浮き彫りになっていた。  


このおへそを、ぼくは舌でもてあそんだ。彼女は身動きもせず、乳房が両脇に垂れ下がっていた。ぼくは彼女の片一方の足を持ち上げて、ベッドの上へもっていった。


彼女のコンがぼくの目に映った。それを見て、最初ぼくはギョッとしてしまった。唇の鮮やかな赤がだんだんと褐色に変わっていった。  


彼女が妊娠していたおかげで、ぼくは完璧なまでにこの眺めを楽しむことができた。  


大きな唇の上のほうには、噴水の出口が顔をのぞかせ、その上にかわいい肉の粒がのっていた。例の大きな解剖図から学びとったことからぼくが知ったところでは、これが女の中心の塔であった。  


茂みが肉づきのいいビーナスの丘を取り囲んでいた。唇はなめらかで太腿のあいだの膚は、汗に湿って赤くなっていた。  


じつのところ、この眺めはすばらしいとは言えなかったが、でもこの女性がかなり清潔だっただけに、いっそうぼくは気分を良くした。ぼくはわれ目の上に舌をはわせようという気持ちを抑えきれなかった。  


ここかしこ舌の散策を続けるうちに、やがてぼくは疲れてきたので、舌を指に変えてそぞろ歩きを続けた。そこでぼくはおっぱいをとらえ、その先を口に含んで、左右の乳首をかわるがわるに吸った。一方大きくなってゆくダイヤモンドポイントがぼくの小指ほどの長さになるのがわかった。  


そのとき女はわれに返って、泣きはじめたが、ぼくが無理強いにとらせている姿勢は崩さなかった。ぼくは少々彼女の苦痛に同情はしたものの、あまりに気持ちがたかぶっていたので、実際はそんなことは気に留めてはいなかった。〔・・・〕


ぼくは引き出しのところへ行き、お金を取り出して、すでに身繕いをして服装の乱れを直してしまった女にそれを握らせた。ぼくは自分のシャツの裾をまくり上げたが、女性の、ことさらすでに結婚して妊娠している女性の前で裸になるのが、なんとなく気恥ずかしかった。  


ぼくは管理人の細君のじっとりした手をとり、それをぼくの上に導いてやった。  


彼女の愛撫は最初はやさしく、次には激しさを加えた。ぼくは彼女のおっぱいを手にとり、ぼくのほうに引っぱった。  


ぼくが彼女の口にキスをすると、彼女は待ちきれないように、ぼくに唇を差し出した。  


ぼくの体の中のあらゆるものが、まっしぐらに悦楽に向かって進んでいた。ぼくは腰を下ろしている管理人の細君に覆いかぶさろうとすると、女が大声で叫んだ。 


「乗ってはダメ、そんなことをすると痛いのよ。あたしもう、前からはダメなのよ」  


彼女はベッドを下りて、体の向きを変え、ベッドに顔を埋めて身をかがめた。彼女はべつに言葉をつけ加えなかったが、ぼくの本能はこの謎の言葉の意味を察していた。ぼくは昔、犬のそれを見たのを思い出した。ぼくはメドールの例にならって、ディヤーヌのシュミーズを持ち上げた。ディヤーヌというのは、管理人の細君の名前である。  


ぼくの目の前に尻が現れた。といっても、ぼくが今まで頭に思い描いていた尻ではなかった。ベルトの尻が優雅だとはいっても、このお尻に比べたら、あんなものはほんとうに月とすっぽんだ。ぼくの左右の臀部を両方合わせたところで、この天来の奇跡から生まれた尻の片一方の半分にもみたないし、それにこの尻の肉がまたじつに固く張りきっていた。おっぱいと同じく、みごとな二本の太腿と同じく、目もくらむばかりの白さだった。  


丘の狭間がこの驚嘆すべき尻を、二つのすばらしい臀部に区切っていた。  


たくましい尻のすぐ下、太腿のあわいに、脂ののった水も滴らんばかりのコンが姿を見せていた。ぼくはいたずら好きの指をそのそばに近づけた。  


ぼくは、女のむき出しの尻に胸を押し当て、堂々とした球体のように垂れ下がっている、かかえきれぬ腹部に両手を回そうとしてみた。  


そのとき、ぼくは彼女の臀にキスをし、わが子をそこに触れた。しかしぼくの好奇心は、それではまだおさまらなかった。ぼくは後ろの洞窟をつぶさに観察した。へそと同じように浮彫りになっていたが、とても清潔だった。  


ぼくは指でその地帯の偵察を始めたが、彼女が体を引っ込めたので、痛くしたんじゃあないかと心配した。だから、ぼくはしつっこくしなかった。ぼくは、あたかもバターの塊の中ヘナイフを突き差すようにして、彼女のコンに向かって突撃した。それからぼくは、弾力のある後ろの丘にぼくの腹をぶつけながら、まるで焼けた金網の上の牡鶏さながらに激しく体を動かした。  


そのために、ぼくはすっかり逆上してわれを忘れてしまった。もはや自分が何をしているかもわからず、こうして快楽の終局にまで達し、はじめて女性のコンの中にぼくの種を放射したのである。  


放射を終わったあとも、ぼくはそのままでじっくり時間を楽しみたかったのだが、管理人の細君は体の向きを変えて、つつましやかに体を隠した。彼女が袖のついた肌着のボタンをはめているあいだに、ポトンポトンという小さな物音が聞こえた。それは彼女が床に落とすぼくの愛液の音であった。それを足で広げ、それから彼女はスカートでごしごしと体をこすっていた。  


半ばうなだれた、まっかな、ビショビショにぬれたボクのせがれを見ると、彼女はニッコリとほほえみ、ハンカチを取り出して、彼女に祝福を与えたぼくのものを丹念に拭ききよめた。  


彼女がぼくに向かって言った。  


「サァ、洋服を着るんですよ、ムッシュー・ロジェ。あたしはもう行かなければいけませんから」  


こう言って、彼女は顔を赤らめながら、さらにこうつけ加えた。 


「後生ですから、あたしたちのあいだにあったことは、だれにもぜったい口外しないでくださいね。でなければ、もうあたし、坊っちゃんが好きでなくなりますからね」  


ぼくは彼女をしっかりと抱きしめ、かわるがわるにキスをした。そしてどっと襲った新しい興奮にぼくの身を委せたまま、彼女は部屋を出ていった。……









私たち二人は、連れだって夕食をとりに出かけた。私は階段をおりながら、ドンシエールを思いだした、ドンシエールでは私は毎晩外出してホテルのレストランでロベールと顔をあわせた、また私は忘れていたほかの小さな食堂のあれこれを思いだした。そんな一つの部屋が回想によみがえった、まだ一度も思いかえしたことがなかったその食堂は、サン=ルーが夕食をとることにしていたホテルにはなかった、それはもっとずっと粗末な、旅館と下宿との中間のようなホテルにあった、そしてそこではおかみさんと女中の一人とか給仕してくれた。雪が私をそこに足どめしたのだった。それにロベールはちょうどその晩はホテルで夕食をとることになっていなかったし、私は足どめされたそこより遠くへ食事に行きたくなかった。私に料理がはこばれてきたのは、階上の、全体が木造の小さな部屋だった。食事中にランプが消え、女中が私のためにそうそくを二本ともした。その私は、彼女に皿をさしだしながら暗くてよく見えないふうを装い、彼女がその皿にじゃがいもを入れているあいだに、まるで彼女の手をとって誘導しようとするかのように、片方の手で彼女のむきだしの前腕をにぎった。その前腕をひっこめないのを見て私はそれを愛撫した、それから、ひとことも発しないで、彼女のからだをそのままぐっと私のほうにひきよせ、ろうそくの火をふきけした。そうしておいて、お金をすこしやるつもりで、ポケットをさぐるようにといった。それにつづいた数日のあいだ、肉体的快楽が満喫されるには、単にこの女中だけでなく、そんなにも孤立した木造のこの食堂が必要であると私には思われた。(プルースト「ゲルマントのほう」)



➡︎「アポリネールとマリー・ローランサン