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2024年7月5日金曜日

鯛茶漬けとレミニサンス

 


夕方、鯛茶漬けを食っているとレミニサンスがあったね、鯛といっても当地で獲れるナンヨウチヌだが、刺身を半日醤油に漬けて海苔とネギをのせて緑茶をかけて食う。日本で食べるものとほとんど同じ味だ。私はこのナンヨウチヌが好物で刺身以外にも押し寿司にしたりアクアパッツァにしたりしてよく食べるのだが、茶漬けで食うのはひさしぶり。


ひさしぶりといっても今まで何回も食っているのだが、なぜか今回はじめて、幼年期、母方の祖父の家で卓袱台を囲んでの、傍の母の「アァおいしい」という声が聞こえてきたよ。向かいに座っている祖父母や叔父の微笑の残像とともに。実に懐かしい。この数日風邪気味だったせいかね。


長い病気の恢復期のような心持が、軀のすみずみまで行きわたっていた。恢復期の特徴に、感覚が鋭くなること、幼少年期の記憶が軀の中を凧のように通り抜けてゆくことがある。その記憶は、薄荷のような後味を残して消えてゆく。

 

立上がると、足裏の下の畳の感覚が新鮮で、古い畳なのに、鼻腔の奥に藺草のにおいが漂って消えた。それと同時に、雷が鳴ると吊ってもらって潜りこんだ蚊帳の匂いや、縁側で涼んでいるときの蚊遣線香の匂いや、線香花火の火薬の匂いや、さまざまの少年時代のにおいの幻覚が、一斉に彼の鼻腔を押しよせてきた。(吉行淳之介『砂の上の植物群』1964年)



それとも少し前次の写真を眺めての強烈な印象のせいかも。