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2025年2月21日金曜日

みなさん、せいぜい財務省解体運動に励んでクダサイ!

 

USAID解体の動きを機縁にだろう、財務省解体やら消費税廃止やらでツイッター社交界は賑わっているようだが、財務省解体したらどこが国家予算組むんだろ?ーーなんて野暮なことは言わないでおくにしろ、消費税廃止したらどの税金増やすんだろ? 老年人口比率ナンバーワンの日本にも関わらず国民負担率がひどく低いままの国で。


財務省:税収に関する資料

(アメリカは自己負担、自己保障の国で、例えば盲腸手術で自己保険がない場合、500万ほどかかるから、低国民負担率は参考にならない。)


潜在的国民負担率も含めた直近版は次のものである。

(日本の財政関係資料2024年10月、PDF


先の図表は租税負担率の内訳と老年人口比率が記されているので掲げたのだが、高齢者からも税金が取れる消費税やめたら、現役世代から取るしかない。世界的競争力劣化が明らかな現在、法人税や所得税増が酷としたら(そして資産課税など微々たるもの)、社会保険料しか残っていない。これをさらに上げて現役世代をいっそう苦しめるつもりだろうか?


大和総研、2025年1月24日


・・・と敢えて「惚けた」疑問符記号を連発したが、ツイッターポピュリズム界ではそんなことを考えている人間はほとんどゼロであることを私は「十全に」知っている。政治家もこれらのポピュリストたちの顔色を窺わなければならない宿命にある。

ノーベル経済学賞者ブキャナンらがとっくの昔に言っているように。

現実の民主主義社会では、政治家は選挙があるため、減税はできても増税は困難。民主主義の下で財政を均衡させ、政府の肥大化を防ぐには、憲法で財政均衡を義務付けるしかない。(ブキャナン&ワグナー著『赤字の民主主義 ケインズが遺したもの』)


ーー《民主とは「根拠の乏しい臆説にほかならぬオピニオンをまとめたものによって右往左往させられるオクロス(衆愚)の政治」のことだととっくに判明している》(西部邁「公共的実践の本源的課題」実践政策学・創刊号(第 1 巻 1 号)2015年)。


したがってお札を刷るほかなくなって、世界一の民主主義国ーーデモクラシーの原義は「大衆の支配」であるーー、つまり世界一のポピュリズム国日本は、世界一の債務残高国の位置を堅守し続ける。

(日本の財政関係資料2024年10月、PDF


最も重要な「最低限の知」は米国のような基軸通貨国と日本のような非基軸通貨国では札束を刷る意味合いがまったく異なることだ。


非基軸通貨国は、自国の生産に見合った額の自国通貨しか流通させることはできないのである。それ以上流通させても、インフレーションになるだけである。(岩井克人『二十一世紀の資本主義論』2000年)

ここで言う基軸国とは一体どういう意味なのでしょうか?ドルは世界の基軸貨幣です。だが、それは世界中の国々がアメリカと取引するためにドルを大量に保有しているという意味ではありません。ドルが基軸貨幣であるとは、日本と韓国との貿易がドルで決済され、ドイツとチリとの貸借がドルで行われるということなのです。アメリカの貨幣でしかないドルが、アメリカ以外の国々の取引においても貨幣として使われているということなのです。(岩井克人「アメリカに対するテロリストの誤った認識」朝日新聞2001年11月5日)




安倍晋三は最後までこの最低限の知がない人物だった、あまたの経済評論家たちと同様に。


「子どもたちの世代にツケを回すなという批判がずっと安倍政権にあったが、その批判は正しくないんです。なぜかというとコロナ対策においては政府・日本銀行連合軍でやっていますが、政府が発行する国債は日銀がほぼ全部買い取ってくれています」


「みなさん、どうやって日銀は政府が出す巨大な国債を買うと思います? どこかのお金を借りてくると思ってますか。それは違います。紙とインクでお札を刷るんです。20円で1万円札が出来るんです」(安倍晋三新潟県三条市での講演ーー2021年7月10日)


日本をひどく愛し憂えた世界三大投資家ひとりジム・ロジャーズ曰く、


YouTube

◾️ジム・ロジャーズインタビュー「アベノミクスの行方」ロイター通信 我謝京子氏 2014年2月25日

安倍氏は大惨事を起こした人物として歴史に名を残すことになるでしょう。

これから20年後を振り返った時に、彼が日本を崩壊させた人物だと皆が気づくことになるでしょう。

アベノミクスには三本の矢がありますが、3本目の矢は日本の背中に向かってくるでしょう。日本を崩壊させることになるでしょう。紙幣を刷る事と通貨価値を下げる事で経済を回復させることは絶対できない。長期的にも、中期的でさえ無理です。




話を戻せば、過剰な国債債務が維持できたのは世界が一時的に低金利時代だったからにすぎないのである。


(日本の財政関係資料2024年10月、PDF

仮に1990年並の金利が6パーセントになれば、利払費だけで70兆円を超えーー10年債の比重が高いので借り換え期間があり即座にという訳ではないがーー、国家予算が組めなくなる(ま、現在の消費税1%は約2.5兆円だから単純計算して10%から消費税40%にしたらなんとかなるがね)。

日銀はさらにいっそうとんでもないことになる。


これが、日銀総裁最有力候補だった雨宮前副総裁が総裁を固辞した大きな理由である。


さてこの帰結はどうなるのか。既に太平洋戦争終了直後の債務残高対GDP比率を遥かに超えている現在、ハイパーインフレーション、預金封鎖等の道へとまっしぐらである。




・・・という「引き返せない道」を、一般大衆のために否定してくれる小遣い稼ぎの経済評論家が日本にはウジャウジャいるので、みなさんは彼らのデタラメをきいて束の間の安堵に耽りつつ、是非とも財務省解体運動に励んでクダサイ! もはや解体しようとしまいと同じことなのだから、その場限りの「庶民的正義感」をこの際ふんだんに吐き出すのもオツなもんです・・・




とはいえ最低限次の程度のことは知っておいたほうがいいんじゃないでせうか。

◼️荷風戰後日歴 昭和廿一年

二月廿一日。晴。風あり。銀行預金拂戻停止の後闇市の物價また更に騰貴す。剩錢なきを以て物價の單位拾圓となる。

三月初九。晴。風歇みて稍暖なり。午前小川氏來り草稿の閲讀を乞ふ。淺草の囘想記なり。町を歩みて人參を買ふ。一束五六本にて拾圓なり。新圓發行後物價依然として低落の兆なし。四五月の頃には再度インフレの結果私財沒收の事起るべしと云。


◾️ハイパーインフレーションの影響

「預金封鎖が父を変えてしまった」。漁師の父親は酒もたばこもやらず、こつこつ貯金し続け、「戦争が終わったら、家を建てて暮らそう」と言っていた。だが、預金封鎖で財産のほぼすべてを失った。やけを起こした父は海に出なくなり、酒浸りに。家族に暴力も振るった。イネ(娘)は栄養失調で左目の視力を失い、二人の弟は餓死した。

(出典)『人びとの戦後経済秘史』(東京新聞・中日新聞経済部 編 2016年)



私はまったく皮肉を言うつもりはないのだが、こういう事を書くと巷の「純情な」方には皮肉に聞こえるらしい。以前は(宇露紛争が始まる迄は)月一ぐらいは警告していたのだが、巷間の盛り上がりを見て、いわゆる「皮肉」をひさしぶりに記してしまった。