しかしキミたちはなぜこの事態がわからないのかね、
◼️大和総研「超高齢日本の 30 年展望 持続可能な社会保障システムを目指し挑戦する日本―未来への責任 」理事長 武藤敏郎 監修 、2013 年5 月 14 日 |
社会保障の給付水準を考えるときに重要なのは、 現役世代の賃金との対比でみた、言い換えれば賃金によって実質化された給付水準である〔・・・〕。年金の世界では、年金額が現役世代の手取り賃金のどれだけかを所得代替率というが、これはまさに賃金対比で給付水準を評価する考え方である。年金に限らず、高齢者向けの医療給付や介護給付も、賦課方式型で運営されていることから同様に捉えて議論することに大きな意味がある。 現役世代の平均賃金と引退世代への平均給付が同じ率で変化していれば、所得代替率は一定で推移する。しかし、保険料率を引き上げて賃金上昇率以上に給付を拡充したり、賃金が下がっているときに給付を引き下げなかったりすれば、所得代替率は上昇する。引退世代の人数が増える分以上に現役世代の負担率を上昇させながら引退世代の生活水準を向上させてきたと前述したが、賃金対比で測った実質の給付水準を引き上げてきたのがこれまでだった。 賃金対比でみた給付水準 (=所得代替率) は、 現役世代と引退世代の格差―老若格差―と言い換えることが可能である。この老若格差をどうコントロールするかが、社会保障給付をどれだけ減らすか(あるいは増やすか)ということの意味と言ってよい。少子高齢化の傾向がこのまま続けば、いずれは就業者ほぼ 1人で高齢者を 1人、つまりマンツーマンで 65歳以上人口を支えなければならなくなる。これまで 15~64 歳の生産年齢人口何人で 65歳以上人口を支えてきたかといえば、1970 年頃は 9人程度、90 年頃は 4人程度、現在は 2人程度である。医療や年金の給付が拡充され、1973 年は「福祉元年」といわれた。現行制度の基本的な発想は 9人程度で高齢者を支えていた時代に作られたものであることを改めて踏まえるべきだ。(「DIR30年プロジェクト「超高齢日本の30年展望」」大和総研2013、武藤敏郎監修、pdf) |
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世界で最も高齢化した先進国であり続ける日本が、諸外国との対比でみて低い国民負担率で社会保障を含む広義の政府サービスを維持することは困難だろう。財政赤字問題の主因は社会保障費の増大にある〔・・・〕 これまでの社会保障政策を長期的に振り返ると、引退世代の人数が増える分以上に現役世代の負担率を上昇させながら、引退世代の生活水準を向上させてきた。引退後の生活に余裕と潤いがあるのは素晴らしいことだが、「超」がつく少子高齢化の下では、現役世代 1 人当たりで支えなければならない引退世代の人数が急速に増えるから、引退世代の生活水準を維持するだけでも現役世代の負担が大きく増えていく。そうなれば、これまでのように引退世代の生活水準を向上させることは難しくなる。 〔・・・〕 日本の財政は、世界一の超高齢社会の運営をしていくにあたり、極めて低い国民負担率と潤沢な引退層向け社会保障給付という点で最大の問題を抱えてしまっている。つまり、困窮した現役層への移転支出や将来への投資ではなく、引退層への資金移転のために財政赤字が大きいという特徴を有している。引退世代向けに偏重した社会保障制度をもっと効率化し、一定の負担増を求める必要性は、経常収支が赤字か黒字かとは関係がない。財政赤字の縮小は、政府自身の問題として必要な増税や歳出削減を実施することと合わせて、家計の消費や企業の投資の活発化を同時に進めないと実現しないだろう。(大和総研「超高齢日本の 30 年展望 持続可能な社会保障システムを目指し挑戦する日本―未来への責任 」理事長 武藤敏郎 監修 、2013 年5 月 14 日) |
たぶんわかろうとしないんだろうよ、
◼️負担率に関する資料(財務省)
社会保障負担は賃金税だよ、だから事実上、全部税金だが、老年人口比率が上のように最高で、しかし国民負担率は各国に比べて低いんだぜ。本来、70%ぐらいにしないといけない国だよ。そうしてないから赤字国債が雪だるまだ。
先の高齢者1人当たり生産年齢人口は、厳密には1990年からならこの今、次のように変わってるのだがね。
75歳以上に年金支給年齢を変えても追っつかないよ、だから税金上げるよりほかないんだ。
◼️大和総研理事長武藤敏郎「財政と社会保障 ~私たちはどのような国家像を目指すのか~」2017年1月18日 |
日本の場合、低福祉・低負担や高福祉・高負担という選択肢はなく、中福祉・高負担しかありえないことです。それに異論があるなら、 公的保険を小さくして自己負担を増やしていくか、産業化するといった全く違う発想が必要になるでしょう。 |
低福祉高負担という話もでているがね、《将来を見据えると、このまま社会保障制度の改革を行わない場合、給付と負担のアンバランスは、更に拡大すると見込まれる。これを放置すれば、現在の日本が「中福祉、低負担」を享受する見返りに、将来世代がツケを払う形で「中福祉、高負担」、更には「低福祉、高負担」への転換を余儀なくされることとなりかねない。》(令和2年度予算の編成等に関する建議 令和元年 11 月 25 日 財政制度等審議会 PDF)
で、やっぱりわかろうとしないんだろ?
もう大半の経済学者は諦めてるから、最近はこの「常識」をあまり言わないだけなんだがな、ーー《社会保障は原因が非常に簡単で、人口減少で働く人が減って、高齢者が増えていく中で、今の賦課方式では行き詰まります。そうすると給付を削るか、負担を増やすかしかないのですが、そのどちらも難しいというのが社会保障問題の根本にあります。》(小峰隆夫「いま一度、社会保障の未来を問う」2017年)
で、諦めたらどうなるか知ってるかい、例えば、一橋大学名誉教授《齊藤誠[2023]は、ハイパーインフレ(激性インフレ)により敗戦国と同じ方法で国債費の重圧を大幅に軽減しようという処方箋を提案している 》[参照]。「心ある」経済学者たちはこの見解に傾きつつあるんだよ。
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※附記
世界でも「常識」になっているらしいぜ。