ところで、わたくしは勘違いしていて、コルヒチンが尿酸値を下げるものと思いこみ、つい最近までアロプリノールはたまにしか飲まなかった。わたくしは母方の近親のものが三人ばかり肝臓で苦しんで早死にしているので薬を何種類も飲むことにいささか抵抗がある。だがこれでは尿酸値が思うように下がらないのは当り前だ。むしろふだんはコルヒチンをやめるべきなのだろう。
ところで《コルヒチン(colchicine)とはユリ科のイヌサフラン(Colchicum autumnale)の種子や球根に含まれるアルカロイド》であるらしい。
イヌサフラン科とはまさにColchicaceaeと英語でいう。イヌサフランは百合の種族でもあるようだ。わたくしは花のなかでは百合が一番好きだ。ああ「海の百合Le Lis De Mer」(マンディアルグ)! ああメイプルソープ! ああ「昏い百合sombre lys」(ヴァレリー)……。
まだまだいくらでもあるが、夏目漱石をあげたっていい。
すらりと揺ぐ茎の頂に、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁を開いた。真白な百合が鼻の先で骨に徹えるほど匂った。自分は首を前へ出して冷たい露の滴る、白い花弁に接吻した。自分が百合から顔を離す拍子に思わず、遠い空を見たら、暁の星がたった一つ瞬いていた。(夏目漱石『夢十夜』)
というわけでコルヒチンを飲むのをやめたくない心持でいっぱいだ。コルヒチンにふくまれるアルカロイドとは古来からの由緒正しい成分ではないか。
アルカロイド含有植物は医療ならびに娯楽目的で古代からヒトによって使用されてきた。例えば、少くとも紀元前2000年頃のメソポタミアでは薬用植物が知られていた。ホメーロスの『オデュッセイア』では、エジプト女王からヘレネーに与えられた贈り物、『無意識の状態へと導く薬剤』(ラテン語: principium somniferum)について記されている。紀元前1世紀から紀元前3世紀に書かれた室内用植物に関する中国の書物にはシナマオウおよびケシの医学的用途について述べられている。また、コカの葉も古代から南米のインディアンによって使用されていた。(WIKIPEDIA)
ーーコルヒチンを飲んでいたので、なんとか「もっていた」のではないか、――《アルカロイドは、精力増強のための血液循環機能の強化や不安を取り除く作用があります》(トンカットアリの精力増強効果を成分内容から徹底分析)