正直いって
おれは あれが好きじゃない全く うそだといってもいい
おれ はあれとかかわりたくない
そのような あれが
あんなに 正装して ぼくの玄関へ
ノートへ 土足で はいってくる
〈失礼な〉
といいたいのに
おれ の椅子にすでにすわって
おれ のパイプで
おれ の言葉を吸いはじめているではないか
その上
おれ の女をもうくどきはじめている
また 彼女は だらしなく
パンティなどをぬぐ
すると おれなどは汚れて
くずかごに捨てられる
正直いって おれはあれが好きじゃない
ようやく
くずかごから這いでる と あれは
退散したようだ
が 彼女は
彼女ときたら
おれ のパイプにとまったあれの言葉と
おれ の言葉に交互にキスしながら
ゆっくり
なにか なんでもないといった風に
ふかしてしまっているのだ
――白石かずこ『もうこれ以上おそくやってきてはいけない』所収