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2018年7月1日日曜日

既存社会制度の犬

前回、ゴダールの「資本主義の犬」という表現を拾ったので、あらためて世界の老齢化状況の資料を見直してみた。

◆高齢化の国際的動向(内閣府、2017)






現在、これに目をつぶっている連中は、「既存社会制度の犬」だね。なによりもまず、現在の社会保障制度は早晩、成り立たなくなる。それはどう考えても必然的な帰結だ。




そしてとくに我が日本のシステム。シルバーデモクラシーに支えられた最悪の既存システム。

日本の財政は、世界一の超高齢社会の運営をしていくにあたり、極めて低い国民負担率と潤沢な引退層向け社会保障給付という点で最大の問題を抱えてしまっている。つまり、困窮した現役層への移転支出や将来への投資ではなく、引退層への資金移転のために財政赤字が大きいという特徴を有している。(「DIR30年プロジェクト「超高齢日本の30年展望」」(大和総研2013 武藤敏郎監修)

問題は、こういったことを真剣に考えているのは、日本においては「保守」だということだな。

世代会計とは、各世代一人当たりが年金や医療・介護など公共サービスとして政府から得る「受益」と、税金や保険料など政府に支払う「負担」との差額が、各々の世代ごとにどうなっているかを明らかにするものです。消費増税をいつ行うかによって若干試算結果が変わりますが、60歳以上の世代は負担したよりもおよそ4000万円多い受益を得ることができ、将来世代は支払い負担の方がおよそ8000万円多くなります。この差が1億2000万円になります。(「高齢者は若者より1億2000万円お得」小黒一正教授が明かす世代間格差





ーー高齢者という「若者搾取者」、「泥棒」と呼ばなくてはならない。

経済学的に考えたときに、一般的な家計において最大の保有資産は公的年金の受給権です。(……)

今約束されている年金が受け取れるのであれば、それが最大の資産になるはずです。ところが、そこが保証されていません。(経済再生 の鍵は 不確実性の解消 (池尾和人 大崎貞和、2011)


で、「左翼」ってなにやってんだろ? すくなくともボクの同世代の高齢者予備軍の左翼ってのは、ほとんどが青春派の「気合い系」にすぎないな

どこかで小耳にはさんだことの退屈な反復にすぎない言葉をこともなげに口にしながら、 なおも自分を例外的な存在であるとひそかに信じ、 しかもそう信じることの典型的な例外性が、 複数の無名性を代弁しつつ、 自分の所属している集団にとって有効な予言たりうるはずだと思いこんでいる人たちがあたりを埋めつくしている。(蓮實重彦『凡庸な芸術家の肖像』)
すでに書かれた言葉としてあるものにさらに言葉をまぶしかける軽業師ふうの身のこなしに魅せられてであろうか。さらには、いささか時流に逆らってみせるといった手あいのものが、流れの断絶には至らぬ程度の小波瀾を戯れに惹起し、波紋がおさまる以前にすでに時流と折合いをつけているといったときの精神のありようが、青春と呼ばれる猶予の一時期をどこまでも引き伸ばすかの錯覚を快く玩味させてくれるからであろうか。(蓮實重彦『表層批評宣言』)


ま、やむえないこととはいいながら、だけどさ。グランプランが不可能な国だからな。財政破綻や大地震による「革命」を粛々と待つしかないインテリたちってわけさ。

中国人は平然と「二十一世紀中葉の中国」を語る。長期予測において小さな変動は打ち消しあって大筋が見える。これが「大国」である。アメリカも五十年後にも大筋は変るまい。日本では第二次関東大震災ひとつで歴史は大幅に変わる。日本ではヨット乗りのごとく風をみながら絶えず舵を切るほかはない。為政者は「戦々兢々として深淵に臨み薄氷を踏むがごとし」という二宮尊徳の言葉のとおりである。他山の石はチェコ、アイスランド、オランダ、せいぜい英国であり、決して中国や米国、ロシアではない。(「日本人がダメなのは成功のときである」1994初出『精神科医がものを書くとき Ⅰ』所収 広英社)

古井由吉流にいえば、こんな土地にこんな文明を作ってしまった、ということだ。

…日本という国は地震の巣窟だということ。大水、噴火、飢餓なども、年譜を見ればのべつ幕なしでしょう。この列島に住み、これだけの文明社会を構築してしまったという問題があります。(古井由吉「新潮45」2012 年1 月号 )