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2018年7月7日土曜日

かりそめの囚われ女

きみに聞こう、松の葉むらのかりそめの囚われ女(ひと)、
墓地の鉄柵のか細い網目々々を噛む入り海よ、
わが閉ぢた眼の上の眩ゆい秘密は?
この無為の果てに私を呼んだ身体は?
この骨散る地に身体を引きつけた額は?
ここに亡き人らを思ふ一つの火花。


 Godard, Nouvelle vague


光の牝犬よ、傀儡(でく)崇めを遠ざけよ!
私が独り羊飼ひの微笑みに
神秘の羊ら、静かな墓の
白い群れを長々と眺める時、
遠ざけよ、賢しらの鳩を、
虚しい夢、知りたがりやの天使を!

ーーヴァレリー「海辺の墓地」(中井久夫訳)


Nouvelle vague


俺たちのなかみはからっぽ
俺たちのなかみはつめもの
俺たちはよりそうが
頭のなかは藁のくず、ああ!
俺たちがささやきあうと
かわいた声が
うつろにひびく
まるでかわいた草をふきわたる風

ーーエリオット「うつろな人間たちthe hollow men」(高松雄一訳)