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2022年10月15日土曜日

またか

 以下、「集団的西側の偽善と愚劣」で示した内容とほぼ同じだが、浅井基文氏がより詳しく訳されているので、そのまま貼り付ける。前段の「またか」という溜息を共有する者として。


新段階に入ったロシア・ウクライナ戦争 

浅井基文 10/12/2022

 

ロシアのプーチン大統領は、10月10日の国家安全保障会議において、8日に起こったクリミア大橋の爆発がロシアの重要インフラの破壊を狙ったテロ攻撃であり、ウクライナ機関(special services)が組織者・実行者であることは明らかであると断じました。また、ウクライナ当局が8年以上にわたってテロ的手段に訴えてきたとも指摘しました。そのうえで、ロシア防衛省の提案に基づきロシア参謀部の計画に従って、ウクライナのエネルギー、軍事及び通信施設に対してミサイルによる大量精密攻撃を行ったと述べました。ウクライナがロシア領に対してさらなるテロ攻撃を行う場合には、ロシアの対応は厳しく、ロシアに対する脅威に相応するものともなるとも付け加えました。

 私が「またか」という思いで接したのは、クリミア大橋破壊(数名の死者を伴った)を行ったゼレンスキー政権については「一切おとがめなし」の西側諸国及び西側マスコミが、ロシアの今回の報復攻撃に対しては、「市民を標的とする無差別攻撃」と決めつけ、その犯罪性をことさらに強調する発言・報道でした。ここにも、「ウクライナ=善、ロシア=悪」という決めつけ・結論先にありきの姿勢がミエミエです。


 モスクワに拠点を置くスプートニク通信社は10月10日と11日に、この問題に関する2つのインタビュー記事を掲載しています。一つは、「ロシアのインフラ攻撃:クリミア大橋というレッド・ラインを超えたキエフ」(英語原題:"Russia's Infrastructure Strikes Show Crimean Bridge Was 'Red Line' and Kiev Crossed It: Observers")で、数人へのインタビューをまとめたもの、もう一つは「戦争法下で正統なロシアの攻撃」(英語原題:"Every Russian Target Struck is Legitimate Under Laws of War, Ex-US Intel Officer Says")で、元国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)主任査察官を務めた経歴を持つスコット・リッターとの単独インタビュー記事です。リッターは前の記事でも後の記事と同じ発言をしています。


 私は、ニューヨーク・タイムズ及びウォールストリート・ジャーナル両紙における関係記事(報道及びオピニオン)もチェックしました。しかし、すでに述べたとおり、結論先にありきの内容のものばかりでまったく失望しました。ところが、「ロシア寄り」であるとされるスプートニクが掲載した2つのインタビュー記事で紹介されている識者の見解の中には、私の見方と同じ、あるいは「なるほど、ふむふむ」と納得できる内容が多く含まれていました。皆さんにもブレーン・ストーミングの材料として紹介しようと思い立った次第です。リッターの発言内容は二つ目の記事においてまとめて紹介します。


 最初の記事で紹介する識者の発言の中で私が「そうだそうだ!!」と膝を叩いたのは、マテュー・クロストンが「月曜日の攻撃は、一連の敗北で追い詰められた「理性が通らない」プーチンは"核兵器の使用に訴えるかもしれない"という、アメリカとキエフがここ数週間広めてきた「神話」のウソを暴くものだ」として、プーチンの今回の報復攻撃の本質的性格を明らかにした発言です。リッターの発言内容と通底するものです。私自身、クロストン及びリッターと同じことを考えていましたので、両者の発言内容には大いに「我が意を得たり」の満足感を味わっています。


<「ロシアのインフラ攻撃:クリミア大橋というレッド・ラインを超えたキエフ」>

○ステファン・ガジック(Stevan Gajic ベオグラードのInstitute of European Studies研究員)

西側集団は数ヶ月にわたって「ロシアとの戦争に実質的にかかわっている。」「すべての欧州諸国及びNATO加盟国がウクライナに対して軍事援助と殺傷性兵器を提供しているなかで、(ロシアの攻撃はウクライナ市民に対する野蛮かつショッキングなものだとする)ボレルEU対外上級代表発言は偽善以外の何ものでもない。」


○パオロ・ラフォネ(Paolo Raffone ブラッセルの地政学シンクタンク・CIPI基金所長)

10日のロシアによる攻撃は、ウクライナによるロシア領攻撃に対する「迅速な反応」である。「ウクライナ軍はドンバスその他への攻撃を続けることが難しくなるだろう。電力・エネルギーの切断はウクライナ軍のレジリエンスと作戦能力を低下させる。ウクライナの司令部トップの交代も報道されているし、ゼレンスキーもキエフ以外の安全圏に移ったという報道もある。」「ウクライナ軍が同盟諸国と協調しないで動くことに対して、アメリカが苛立ちを表す「警告」を出した(浅井:初見)後でもあり、以上のこのことはウクライナの政治権力システムが流動的で、変化する可能性を示唆する。主要大国は舞台裏で話し合っており、「希望の星」ゼレンスキーも危ういかもしれない。」(浅井:実事求是の私には「陰謀論」の類いとも思われます。)

 西側主要国の一部ではウクライナ支持がすでに雲散中であり、紛争停止の対話を求める声がますます増えている。これらの国では経済困難にも直面しており、キエフ支持の世論も低下している。

 大きな問題は、EU及びNATOを筆頭として、制御の利かないウクライナを抑え込む計画を持っていないことだ。フラストが講じているウクライナ軍とウクライナ人が大量の兵器を掌中にしているため、欧州の安全保障に深刻な問題が起こる可能性もある。アメリカははるか彼方だが、欧州はウクライナの戦場に隣接している。


○ティベリオ・グラツィアニ(Tiberio Graziani ローマの地政学シンクタンクVision & Global Trends議長)

 ロシアの今回の攻撃は、直接的にはウクライナ、そして戦略的にはアングロ・サクソンとの紛争の「論理的帰結」である。クリミア大橋に対する攻撃は、先月起こったノルド・ストリーム破壊工作と相まって、紛争の「当面の本当の目的」を明らかにした。その目的とは少なくとも次の三つだ。第一、ドイツを中心とする欧州大陸経済を破壊し、EUエリートをアングロ・サクソンの利益に服従させること。第二、将来にわたって修復不可能な欧州とロシアとの深刻な対立を作り出すこと。第三、ポーランドのナショナリストとバルト三国政府主導のロシア嫌いの欧州を作り出すこと。(浅井:大陸欧州諸国から発せられるアングロ・サクソン陰謀説の一例かも)

○マテュー・クロストン(Matthew Crosston メリーランドBowie State University教授)

 月曜日の攻撃は、一連の敗北で追い詰められた「理性が通らない」プーチンは"核兵器の使用に訴えるかもしれない"という、アメリカとキエフがここ数週間広めてきた「神話」のウソを暴くものだ。

 「アメリカとキエフは、プーチンがキエフと中央ウクライナに対してロシアの伝統的な航空戦力とミサイル攻撃を強化するかもしれないことを推測すらしなかった。今日のプーチンの動きは、彼が最終的に(ウクライナ危機を)本当の戦争だと認識したことを示している。本当の戦争となれば、プーチンには核兵器に限らずより多くの選択肢がある。 西側とウクライナは、最近の彼らの言ういわゆる「成功」によって傲慢で図々しくなっていた。誰もが、ロシアは事実上敗北したことを意味すると思い込んでしまっていた。彼らからすると、ロシアとしては、敗北を認めるか、何か「クレイジー」なことをする(浅井:核兵器の使用に訴える)必要があるということになる。ロシアの今回の報復攻撃は、ロシアがまだ終わっていないし、狂ってもいないことを示すものだ。」



<「戦争法下で正統なロシアの攻撃」> (スコット・リッター)

(質問) 今回のロシアの攻撃のタイミングをどう見るか?


(回答) 明らかにクリミア大橋攻撃と報復との間には因果関係がある。クリミア大橋などの枢要インフラに対する攻撃はレッド・ラインであり、ウクライナがそのラインを超えれば、紛争の性格は変質すると、ロシアは警告していた。今回の事態はその証明であり、ロシアはブラフをかけていたのではないということだ。ウクライナがクリミア大橋攻撃によって何が達成できると考えていたのか分からない。ウクライナの達成感はそれだけの値打ちがあったのかも分からない。この疑問に対する答えは、報復の全容が理解される段階でウクライナ自身が出すことになる。しかも、この報復は今後さらに拡大されるかもしれず、それはおそらく壊滅的なものとなるだろう。これはウクライナ国家にとって悲劇だ。私は、ロシアがしていることは正当化されないとは言わない。言いたいのは、今回のことは起こる必要がなかったということだ。起こってしまった責任はクリミア大橋を攻撃したウクライナにある。


(質問) ドンバスの民間インフラを砲撃したウクライナと軍事目標をターゲットにしたロシアとのアプローチの違いについては?


(回答) ウクライナは最近になって民間インフラを攻撃対象にすることを決めたわけではない。ポロシェンコ大統領(当時)は、ドンバス紛争に対するウクライナのアプローチはドンバスの民間人である市民を恐怖に陥らせることだと明言していた。ウクライナ政府は8年間ずっとそれをやってきたし、今もその政策、アプローチを続けているということだ。ロシアはそのことについて認識していた。それ故に、ロシアはそのようにはエスカレートしなかったのだ。

 今回ロシアは報復した。ところが世界はロシアのプロフェショナリズムそしてロシアが国際法に厳格に従っていることを評価せず、認めようともしない。ロシアの報復攻撃の対象は戦争法の下における正統なインフラ、指揮管理系統である。無辜の民間人センターに対する攻撃ではない。ロシアとウクライナのアプローチには明確な違いがある。


(質問) アメリカの駐ウクライナ大使は、「ロシアはウクライナ民間人に対して攻撃をエスカレートさせた」とツイートし、EUのボレルは「ロシアの民間人攻撃に大きなショックを受けた」と述べた。軍事専門家として今回の攻撃をどう評価するか?


(回答) 1991年のイラクに対する「砂漠の嵐」作戦に参加し、アメリカがイラクに対して行った戦略空爆キャンペーンの規模と範囲を承知しているものとして、ロシアの今回の攻撃はアメリカがイラクに対して行った「砂漠の嵐」における目標選定の引き写し・コピーといいたい。したがって、ロシアのアプローチを民間インフラに対する攻撃、民間人に対する攻撃として批判するものは、戦争、戦争の法則について何も分かっていないし、そう批判するものがアメリカ人またはその同盟者だとすれば、偽善者であるということだ。というのは、ロシアのアプローチは1991年にアメリカがイラクに対してとったアプローチそのものなのだから。


(質問) ロシアとアメリカのアプローチの違いは?


(回答) 大きな違いは、ロシアが今回の紛争を始めたのではないということだ。すなわち、今回の紛争は8ヶ月以上になるが、アメリカが紛争初日にやったことを、ロシアは今回初めてやったということだ。ということは、ロシアが今回の紛争に対して極めて自制的なアプローチをとってきたということ、今回の紛争がこのレベルまでエスカレートすることは意図されていなかったということ、そして、ロシアの目標は極めて限定的で、しかもその目標達成のための軍事的手段についても限定的に対処してきたということだ。それはまた、紛争を次の段階に進める決定を行ってきたのはウクライナであり、西側のウクライナ支持者であったということでもある。今回ロシアが行ったことは、次のレベルに移るウクライナ・西側に加わったということだ。


しかし、次のレベルに対するロシアの貢献という意味では、ウクライナの想定をはるかに超えている。ロシアはこのことについて警告していた。ロシアとしてはこういう道筋は望んでいない。そこにイラクにおけるアメリカとの違いがある。アメリカは「砂漠の嵐」に先立ってイラクがクウェートから撤退することを促し、戦争を避けようとした。イラクが拒否すると、アメリカは大規模に介入した。戦略空爆はイラクにとって壊滅的で、イラク軍を弱めただけではなく、国家として戦う意思・能力をも弱めるものだったので、その後の地上戦は速やかに行われた。それが今、ロシアがやろうとしていることだ。

 すなわち、今目撃している戦略的目標設定及び今後さらに起こるであろうことは、ウクライナ国家が抵抗を続ける意思と能力を弱めることを意図しており、そのことはウクライナ軍が戦闘を続ける能力に直接の影響を持つことになるだろう。私のような軍関係者は、ロシアは初日にそうするべきだったと確信している。しかし、私はアメリカ人でロシア人ではなく、ロシアの特別軍事行動の背後にある考え方の全体像を理解しているわけではない。しかし今や、ロシア指導層は特別軍事行動で決められていた当初の手段では、ウクライナ、NATOそして西側が行おうと決めた紛争に対処するのには不十分だと決断したのだと思う。


(質問) 今後の見通しは?


(回答) ウクライナ政府、特に右翼政党と軍事分子(アゾフ、アイダール、クラケン等)は国際法や戦闘規範には無関心、黙殺である。彼らは戦争初日から民間人攻撃傾向を示していた。彼らはもっとも弱い者を攻撃する。今もそうだ。彼らが手段を変えることはないと思う。これが彼らの本質であり、そうする手段と能力がある限り、そうし続けるだろう。


(質問) 今回の攻撃がウクライナの戦場での行動にどう影響するだろうか?


(回答) ウクライナ軍の家族が如何なる犠牲を払わなければならなくなっているかに気づいて、ウクライナ軍のモラルが崩壊することになるかもしれない。しかしまた、ロシアとの戦いに向かわせているロシアに対する憎悪がさらに煽られて、ロシアに対する抵抗を続ける決意をさらに燃えたぎらせることになるかもしれない。しかしそういう決意も、抵抗する手段なしには無意味である。ロシアの戦略的攻撃は、ウクライナ国民のモラルに衝撃を与えるだけではなく、ウクライナ国家の実働能力、すなわち、電気も燃料もなくすことによって、軍隊・装備の運輸能力、通信能力、生存能力にも衝撃を与えることになる。そうなれば、ウクライナ国家は崩壊し、軍も例外ではなくなるだろう。そうなれば、ウクラナ軍が戦いを継続することはさらに難しくなるだろう。


(質問) 現状について西側はどの程度の責任を有するか?


(回答) 西側はこの紛争全般に対して100%の責任がある。ウクライナの正統政府が右翼のネオ・ナチに取って代わられたマイダン・クーデターにおける西側の関与から始まる。その後、西側はノーマンディ・フォーマットで推進された外交的解決の実行をウクライナに迫ることについて、その気持ちも能力もなかった。そして外交的合意は実行されなかった。その理由は、ポロシェンコが言ったこと、つまり、ウクライナが軍事的手段でドンバス問題を解決できるようにNATOがウクライナ軍を訓練するための時間稼ぎのためのペテンだったということだ。


 西側はNATOの東方拡大についても向きを転換したことはない。昨年12月、西側はロシアの外交的働きかけを拒否した上、ウクライナに対するロシアの限定的軍事関与を、NATOを含む西側全体とロシアとの全面的戦略的な紛争に変えてしまった。西側はウクライナに対して兵器、情報、通信そして兵站を提供した。これはウクライナを代理人とするNATO及び欧州同盟諸国とロシアとの戦争である。ウクライナで起こっていること、これから起こるであろうことすべてについて、西側は100%責任がある。


(質問) プーチン大統領は、キエフがテロ攻撃を続けるならば、モスクワの反応は厳しいものになると強調した。キエフによるエスカレーションはあるだろうか?


(回答) 不幸だが、答えはイエスだ。ウクライナの彼らはイデオロギー的にむかつく連中であり、彼らの思考には常識が入り込まない。彼らの行動はテロリストを含む世界中の過激主義者と同じだ。したがって、彼らはロシアに対するテロ活動をやり続けるだろう。ロシアが何をしたいかについてどのように決めるかにかかっている。ウクライナがストップすることはないから、ロシアが今回の報復に小休止するとしたら、過ちを犯すことになると思う。したがって、この紛争の決定的結末がもたらされるのが早ければ早いほど、すべての者にとってよりよいこととなるだろう。この紛争が長引けば長引くほど、ウクライナがテロ手段でロシアを攻撃するチャンスはますます大きくなるだろう。




…………………



しかし、ホントになんとかならないもんかね


誰もキエフへの支援は停止しなければならないと公言する政府がない。各国の与党にもない。まったくないのである。このような愚鈍を突き抜けたような、薄弱、白痴。糞を舐めても味がわからないような人の無感覚さは、これまでの人類史のなかで災厄の窮地だと惟う(ロシアからの最後通牒は今日、DULLES N. MANPYO · @iDulles 10th Oct 2022 from TwitLonger


人が平気な顔して過ごしているのさえ理解し難いよ。