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2025年7月18日金曜日

マルキストの選挙観点


マルクスが、ブルジョワ独裁をむしろ「普通選挙」において見ていることに注意すべきである。『ブリュメール十八日』の背景に、それがあったことはいうまでもない。では、普通選挙を特徴づけるものは何か。それはたんに、あらゆる階級の人々が選挙に参与するということにだけあるのではない。それと同時に、諸個人があらゆる階級・生産関係から「原理的に」切り離されるということにある。議会は封建制や絶対主義王政においても存在した。しかし、こうした身分制議会においては「代表するもの」と「代表されるもの」が必然的につながっている。真に代表議会制が成立するのは、普通選挙によってであり、さらに、無記名投票を採用した時点からである。秘密投票は、ひとが誰に投票したかを隠すことによって、人々を自由にする。しかし、同時に、それは誰かに投票したという証拠を消してしまう。そのとき、「代表するもの」と「代表されるもの」は根本的に切断され、恣意的な関係になる。したがって、秘密投票で選ばれた「代表するもの」は「代表されるもの」から拘束されない。いいかえれば、「代表するもの」は実際はそうでないのに、万人を代表するかのように振舞うことができるし、またそうするのである。


「ブルジョワ独裁」とは、ブルジョワ階級が議会を通して支配するということではない。それは「階級」や「支配」の中にある個人を、「自由な」諸個人に還元することによって、それの階級関係や支配関係を消してしまうことだ。このような装置そのものが「ブルジョワ独裁」なのである。議会選挙において、諸個人の自由はある。しかし、それが現実の生産関係における階級関係が捨象されたところに成立するものである。実際、選挙の場を離れると、資本制企業の中に「民主主義」などありえない。つまり、経営者が社員の秘密選挙で選ばれるというようなことはない。また、国家の官僚が人々によって選挙されるということはない。人々が自由なのは、たんに政治的選挙において「代表するもの」を選ぶことだけである。そして、実際は、普通選挙とは、国家機構(軍・官僚)がすでに決定していることに「公共的合意」を与えるための手の込んだ儀式でしかない。(柄谷行人『トランスクリティーク』) 第二部・第1章「移動と批判」p230-231)


不思議なのは、われわれがそうと知りつつ、このゲームをつづけていることだ。あたかも選択の自由があるかのようにふるまいながら、(「言論の自由」を守るふりをして発せられる)隠された命令によって行動や思考を指図されることを黙って受け入れるばかりか、命令されることを要求すらしている。〔・・・〕この意味で民主主義においては一般市民の誰もが、いわば王である。とはいえ、それは立憲民主主義の王、形式だけの意思決定を下す君主であって、行政官から渡された法案に署名するだけの役目しか担っていない。(ジジェク『ポストモダンの共産主義』)



………………


◼️EU Must Trim Welfare to Fund Warfare, By Michael Hudson , March 17, 2025

マイケル・ハドソン:米国政府は確かに億万長者にコントロールされている、シチズンズ・ユナイテッドと、選挙が選挙資金提供者の機能であるという事実のせいで。

The government is indeed controlled by the billionaires, thanks to Citizens United and the fact that elections are a function of campaign donors.




◾️マイケル・ハドソン「合策された民主主義」

The Democracy Collaborative By Michael Hudson, March 28, 2017

政党がどのように組織されるか。 方法は2つある。ひとつは民主主義国家で有権者の支持を得ること、もうひとつは大口献金者と資金調達者から資金を得ることだ。 資金調達者はウォール街にいる。 民主党の戦略ーー2月21日の民主党全国委員会代表選挙に出馬した議員たちーーは、資金調達の鍵はテレビだと言っていた。 人心を掌握するためにテレビの時間を買うには、多額の献金が必要だ。 その資金は主にウォール街、1%の人々からもたらされる。 だから、テレビの時間を買ったり、フォーカスグループにお金を出したりする資金を1%に依存しているとしたら、驚くことに1%は、99%の利益ではなく、自分たちの利益だけを代表しようとしていることになる。

党が、大口献金者からテレビ放映のための資金を最も多く集められる候補者や綱領を目指す戦略をとれば、大口献金者の党になってしまう。 ウォール街の党だ。

…on how the political party is going to be organized. There are two ways: One is to get popular support of voters in a democracy; the other is to get funding from big donors and fundraisers. The fundraisers are on Wall Street. The Democratic Party strategy – and you saw this by members running for the head of the Democratic National Committee on February 21 – they were saying the key to funding is television. Buying television time to control people’s minds takes big contributions of money. The money comes mainly from Wall Street, from the 1%. So if you’re dependent on the 1% to give the money to buy television time and to pay for focus groups, then the 1% surprisingly enough are only going to represent their own interest, not that of the 99%.

Once you have a strategy that the party is geared towards what candidates and platform can raise the most money for television from big contributors, you’re going to become the party of these big contributors. Of Wall Street.




◾️「エリート帝国主義の白黒」 ジル・スタインとマイケル・ハドソン 2024年5月18日

The Black & White of Elite Imperialism with Jill Stein  by MICHAEL HUDSON May 18, 2024

ジル・スタイン:

……私たちは今、経済エリートが政治エリートに命令を下しているような悪循環の中にいます。そして多くの場合、経済エリート自身が政治エリートであり、私たちの政治システムに入り込む億万長者なのです。そして、政治システムの内部で、彼らは富と寡頭政治家の利益をさらに集中させる政策を生み出しているのです。つまり、私たちは現在、寡頭政治と帝国主義の状況にあります。

JILL STEIN:… we’re now in this like vicious feedback loop right now, where the economic elites are basically giving the marching orders to the political elites. And in many cases, they are the political elites themselves, you know, the billionaires who enter into our political system, you know. And so inside of the political system, they are then generating the policies that further concentrate wealth and the advantages of the oligarchs, you know. So we’re in a situation right now of oligarchy and empire.〔・・・〕

マイケル・ハドソン: そうですね、基本的に本当の有権者は寄付者層、つまりあなたが言った億万長者です。なぜなら、彼らは候補者を支援するために資金を提供することができるからです。お金でテレビの時間を買い、投票用紙に署名を集める人を雇うのです。 オリガルヒのための民主主義とも言えますが、それは寡頭政治と呼ばれるものです。 選挙で選ばれたわけでもない億万長者たちが、誰を支持するかによって予備選の投票権を決めるだけでなく、CIA、NSA、FBI、ディープステートのような秘密政府も存在します。

MICHAEL HUDSON: Well, basically the real voters are the donor class, the billionaires that you’ve mentioned, because they can give money to back the candidates. And money is what buys television time, buys people to get the signatures on the ballot. And you could say it’s a democracy for the oligarchs, but that’s called oligarchy. And not only do these sort of unelected billionaires end up deciding who gets to be on the ticket in the primaries, depending on who they’re backed, but there’s also the blob, the secret government, the damage of the CIA, NSA, FBI, and the deep state.




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上は次のツイートに行き当たったので参考までに掲げた。









なお私はこれらが「すべて正しい」と言っているわけではない。おおむねこうだろうということが言いたいだけである。



なお上に「ステルス支援」とあり、クンデラを思い起こしたのでここでも「参考に」掲げておこう。

政治家はジャーナリストに左右されている。だが、ジャーナリストたちは誰に左右されているのか? 彼らに給料を払う連中に、である。そして彼らに給料を払う連中というのは、広告を出すために新聞のスペースやラジオの時間を買いとる広告代理店のことである。〔・・・〕


あの広告の詐欺師ども、あれはまるで火星人のようだな。奴らは普通の人間のようなふるまいはなさらない。なんとも不愉快なご批判をぶつけてくるときに、顔が大喜びでかがやくんだからねえ。六十くらいしか語彙は使わんし、四語以上は絶対にない短い台詞でものをおっしゃる。奴らのお話ときたら、二つか三つのわかの分らん専門用語で区切られて、まあ最大限でひとつか二つの、めまいがするほど幼稚な考えをお述べになるだけさ。あのご連中はあんなふうであることを恥じてもいない。奴らには劣等感がまるっきりないんだ。まさにそれだよ、それが奴らの権力の証拠だ。(クンデラ『不滅』)



現在、例えば「電通」がどのように機能しているのかは私はよく知らないがね。