現在の日本人の最大の「社会的不安」はおそらく将来の社会保障、特に公的年金がどうなるかではないか。既に4半世紀前に池尾和人氏が次のように指摘しているがね。 |
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◼️経済再生の鍵は 不確実性の解消 (池尾和人 大崎貞和) ーーー野村総合研究所 金融ITイノベーション研究部2011(「二十一世紀の歴史の退行と家族、あるいは社会保障」より) |
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池尾:日本については、人口動態の問題があります。高齢化・少子化が進む中で、社会保障制度の枠組みがどうなるのかが、最大の不安要因になっていると思います。 経済学的に考えたときに、一般的な家計において最大の保有資産は公的年金の受給権です。〔・・・〕 今約束されている年金が受け取れるのであれば、それが最大の資産になるはずです。ところが、そこが保証されていません。 |
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一般人にとっての最大の資産が保証されていないのは、ほとんどの人が気づいているはずである、よほどの経済音痴的リベラルでなければ。 少し前、山崎雅弘くんが次のように言っているのを見て唖然としたがね。 山崎雅弘くんはよほど社会保障の「思考のタイムスパンが極端に短い」と言わざるを得ないね、あるいは現在の公的年金の受給権が将来も保証されているという前提で語っている。こういうのを外挿的思考というのだがね、《人間は現在の傾向がいつまでも続くような「外挿法思考」に慣れている》(中井久夫「戦争と平和ある観察」 2005年)、《外挿法ほど危ないものはない。一つの方向に向かう強い傾向は、必ずその反動を生むだろう》(中井久夫「親密性と安全性と家計の共有性と」2000年)。ま、似たようなリベラル、あるいはリベラル左翼はいくらでもいて彼だけの問題ではまったくないが。音喜多駿曰くの、《 地獄への道は 「福祉」 と善意で舗装されている》にまったく不感症タイプが。
これはとてもヒドイ言い方であるにしろ、ある意味で、1986年に既に現在の有り様を予言している、「二十一世紀は灰色の世界」と。 この話は日本だけではない。少なくとも西側世界は同様である。
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