2019年9月27日金曜日

ヨクモマア!

あれら鳥語装置でオピニオンリーダーとして振舞っているつもりらしい輩、ーーリベラルインテリというのか知識人やら文化人やらと呼ぶのかはいざ知らず(中野重治はこの知識人をヌエのような輩といい「芸能人」と呼んだがね)ーー、あの連中のほとんどは途轍もない財政音痴だ。これは疑いようがない。

なかんずく、いまどき消費税をカットして切り捨てない社会を目指すとか言っているポピュリズム政治家をマガオで応援している連中は鍋底を這う蛆虫リベラルと呼ぶしかない。


例を出そう。あなたが従業員5人のバーを経営しているとする。隣の景気のいい「バー中国」に圧倒されつつある「バー日本」だ。儲けは半減に向かいつつある。

その場合ふつうは、従業員のうちの「生産性」の低い2人を切り捨て、少人数でも効率のいい経営を目指すはずだ。

いや、従業員を切り捨てるわけはいかないって言うのかい? もしそうなら、上野千鶴子曰くの悪評高い「みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい」しか選択肢はない。

日本共同体の話を直接的にするなら、たしかに人を切り捨てるわけにはいかない。死んでもらうわけにはいかない。だったら国民の負担を増やさなければ、国は破産する。

その負担の割合を国民負担率と呼ぶ。内訳はこうだ(参照)。




そして現役世代だけではなく、高齢者も含めた全世代に負担してもらうのが消費税だ。

その消費税をカットしたら、現役世代をいっそう苦しめる。つまり所得税や法人税、あるいは社会保障負担(社会保険料)にいっそう皺寄せがくる。(だいたい現在の世界的租税競争(法人減税競争)のなか法人税上げたら給与削減を促す力になることさえ理解していないヤツラばかりだ。)

そもそも世界一の少子高齢化でこんな低い国民負担率はありえない。最低限60パーセントにしなくちゃやっていけない。よくもまあこんなを今まで放っておいたもんだ。

グレタ・トゥンベリちゃん曰くの「ヨクモマア How dare you!」だ。




借金を増やして消費税のカットが可能だなどと信じ込んでいる連中は夢を見てるだけだ。玉手箱でもあると思ってんだろうよ。

経済成長すれば何とかなるなどというのもトンデモ寝言にすぎない。そもそも生産人口が1パーセントずつ減る国で、継続的に実質2パーセントの経済成長があったためしはない。

最も重要なのは、今後の日本は負担を増やして福祉を減らすしかないということを十全に認知することだ。だがあれら文化人はいつまでたってもここから目を逸らして寝言活動をしてるだけ。




財政音痴のインテリ諸君は、弱者擁護という庶民に受けがいい態度をとるために「消費税をカットして切り捨てない社会を目指す」という類の、これまたグレタちゃん曰くの「来るべき世代の夢や子供時代を空っぽな言葉で奪う You have stolen my dreams and my childhood with your empty words」ってのを実践してるのさ。これを財政的幼児虐待と呼ぶ。

「財政的幼児虐待 Fiscal Child Abuse」とは、ボストン大学経済学教授ローレンス・コトリコフ Laurence Kotlikoff の造りだした表現で、 現在の世代が社会保障収支の不均衡などを解消せず、多額の公的債務を累積させて将来の世代に重い経済的負担を強いることを言う。

つまり「財政的幼児虐待」の内実は次のような意味だ。

公的債務とは、親が子供に、相続放棄できない借金を負わせることである(ジャック・アタリ『国家債務危機』2011年 )
簡単に「政治家が悪い」という批判は責任ある態度だとは思いません。

しかしながら事実問題として、政治がそういった役割から逃げている状態が続いたことが財政赤字の累積となっています。負担の配分をしようとする時、今生きている人たちの間でしようとしても、い ろいろ文句が出て調整できないので、まだ生まれていない、だから文句も言えない将来世代に負担を押しつけることをやってきたわけです。(池尾和人「経済再生 の鍵は不確実性の解消」2011)

あの連中は戦前の「知識人」と何も変わっていないね。

知識人の弱さ、あるいは卑劣さは致命的であった。日本人に真の知識人は存在しないと思わせる。知識人は、考える自由と、思想の完全性を守るために、強く、かつ勇敢でなければならない。(渡辺一夫『敗戦日記』1945 年 3 月 15 日)

だいたい現在日本の醜悪さは、財政問題に起源を発すると疑ったほうがいい。フロイトは何度も繰り返して強調している、人は内的脅威に直面したら外部に投射するしかないと。これは「文化共同体病理学」においても同じだ。日本国家は金詰りを外部に投射してファシスト国家に豹変しているんじゃないかい? ナチの出現の自体、第一次世界大戦によって課せられた天文学的な戦争賠償額とその後のブラックホール的ハイパーインフレが遠因であるぐらいは知ってるだろ?

第一次大戦に敗戦したドイツはベルサイユ条約により植民地全部と領土の一部を取り上げられたうえ、1320億マルク(330億ドル)の賠償金を請求された。ドイツの当時の歳入20年分くらいの額であり、毎年の支払いは歳入の2分の1から3分の1に及んだ。

 そんなもの払えるわけがない。札をガンガン刷ったドイツは、1922年から1923年にかけてハイパーインフレーションに見舞われてしまうことになる。どのくらいハイパーだったかというと、0.2〜0.3マルクだった新聞が1923年11月には80億マルクに暴騰する勢いだったそうである(村瀬興雄『ナチズム』中公新書)。

 ハイパーインフレによってもっとも打撃を受けたのは中産階級や労働者、農民だった。一方で、外貨でドイツの資産を買ったりしてボロ儲けする者もいたのだが、そのなかにはユダヤ人実業家が少なからず含まれていた。その怨みもユダヤ人迫害の一因となる。(栗原裕一郎「世界恐慌からいち早く立ち直ったのはナチスだった!」『ヒトラーの経済政策』武田 知弘著、書評)


財政赤字のボロメオの環」でも示したが、柄谷行人がトラクリで示した「国家=ネーション=資本」をボロメオの環で示せば次のようになる。




ーー〈きみら〉が途轍もなく弱いのは、現実界=資本だ。

ボロメオの環の基本的読み方は次の通り。

青の環(資本)は白の環(国家)を覆っている(支配しようとする)。
白の環(国家)は赤の環(国民)を覆っている(支配しようとする)。
赤の環(国民)は青の環(資本)を覆っている(支配しようとする)。


そして現在の日本版は次の通り。




・財政赤字は国家を支配して、国家機関は負担増福祉減に促される。
・国民はその負担増福祉増政策に反発して負担減福祉増を訴え、財政赤字を蔑ろにしようとする。
・その結果、財政赤字は雪だるま式に増え、国家機関はいっそうの負担増福祉減に促される。

誰もがこれを認めるはずである。

で、文化人諸君は、財政赤字をすこしでもいいからオベンキョウすることだね。そうすれば、日本に棲息するあれら痴呆症に罹って隔離病棟に入っていただく必要のありそうな経済評論家連に騙されずにすむよ、そして二度と「消費税をカットして切り捨てない社会を目指す」などと口にできなくなるはずだから。唯一そこからだ、財政赤字をふくめたアソシエーションがどうあるべきかを探りうるのは。

ま、ためしにあれら経済評論家連にきいてみたらよろしい、「あなたは5年後の国民負担率をどうしたいのですか」と。シドロモドロになる奴らばかりだから。

たとえば「低福祉低負担国」米国以外は、ほとんどの国は日本より国民負担率が高いのはどういうわけですか?ときいたってよい。連中はきっと玉手箱のことを語りだすから。