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2020年3月1日日曜日

子供は大丈夫だから、子供が大丈夫なわけではない

子供「は」大丈夫だからといって、子供「が」大丈夫なわけではない、という立場をとるね、ボクは。

まず、何度か示しているが、「専門家としては」とてもすぐれた押谷仁教授のインタビュー記事を掲げる。

専門家会議メンバーが明かす、新型コロナの「正体」と今後のシナリオ
河合香織 2/26(水) 
──そもそも、なぜこんなに広まってしまったのでしょうか。

新型コロナウイルスが非常に厄介な性質だからです。感染しても全体の8割は軽症で、無症状の人もいる。それでは感染者を特定することは困難です。また、感染してから発症するまでの潜伏期間も多くは5、6日間ですが、もっと長い人もいる。軽症者や、感染しても症状のない人、さらに潜伏期間内の人でも、周囲に感染させている可能性があり、感染連鎖が見つけにくいのです。

──患者の症状が見えなければ、医療従事者も対処できませんね。

当初はそれほど重症化しないし、感染した人が誰と接触したかという接触者調査でもあまり多くの人を感染させていないように見えたと思います。しかし、実際には感染したのに軽症の人が大勢いて、その人たちがさまざまな場所でウイルスを広めていた。このウイルスの特徴に当局が気付いた時には、武漢ではもう手のつけられないような状況になっていた……というのが僕の理解です。



まず上にはこうあった。

・感染しても症状のない人、さらに潜伏期間内の人でも、周囲に感染させている可能性がある

・実際には感染したのに軽症の人が大勢いて、その人たちがさまざまな場所でウイルスを広めていた


ところが「一斉の学校閉鎖をすることは、全体の流れからするとあまり意味がない」ともある。


──クラスターとは具体的にどんな場所で起きるのでしょうか。たとえば、学校が心配されています。

学校でクラスターが発生しないとは断言はできませんが、子供の感染例は中国でも非常に少なく、その可能性は低いです。一斉の学校閉鎖をすることは、全体の流れからするとあまり意味がない。大人が子供にうつす例はありますが、インフルエンザのように子供が流行の大きな原因になることは少ないことがわかっているからです。

──感染が起きやすい行動とはどういうものでしょうか。

対面で人と人の距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境です。たとえば立食パーティーや飲み会などはリスクが高い。ほかにもいろんな形があると思いますが、こういう中に感染者がいたら危ない。その人にはっきりとした症状がなくても、感染が広がる可能性があります。


わたくしにはここには論理的矛盾があるように思える。学校とは、「対面で人と人の距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境」ではないだろうか。

たとえば野尻美保子さんーー彼女は東北大震災のとき初めて名を知った物理学者で正直、あまりいい印象は残っていないがーーその彼女がしきりにこう言っている。





エビデンスとしては信頼性がないという専門家や科学者もいるだろうが、とはいえこれが(一般人にとっては)ごく標準的な捉え方ではないか。

わたくしは、たとえば岩田健太郎なる人物の「一斉休校は「科学より政治の悪い例」」という立場をまったくとらない。科学者のあいだにある見解の多様性の結び目となる決断をするのが政治である。


主人のシニフィアンとはなにか? 記念すべき第二次世界大戦の最後の段階で、ウィンストン・チャーチルは政治的決定の謎を熟考した。専門家たち(経済的な、また軍事的な分析家、心理学者、気象学者…)は多様かつ念入りで洗練された分析を提供する。誰かが引き受けなければならない、シンプルで、まさにその理由で、最も難しい行為を。この複合的な多数的なものを置換しなければならない。多数的なものにおいては、どの一つの理由にとってもそれに反する二つの理由があり、逆もまたそうだ。それをシンプルな「イエス」あるいは「ノー」ーー攻撃しよう、いや待ちつづけよう…ーーに変換しなければならない。

理屈に全的には基礎づけられえない振舞いが主人の振舞いである。このように、主人の言説は、S2 と S1 のあいだの裂け目、「ふつうの」シニフィアンの連鎖と「法外-理性外のexcessive」主人のシニフィアンとのあいだの裂け目に依拠する。(ジジェク, LESS THAN NOTHING、2012年)

もし「政治より科学」などというなら、科学者のあいだでの見解の不一致をどう考えているのか。科学は絶対ではけっしてない。



押谷教授の記事に戻れば、いずれにしろ感染が広がるのは間違いない。学校閉鎖とはその拡大を抑える一方策にすぎない。

──今後の見通しはどうなるのでしょう。

まずこの1、2週間が山場です。感染がさらに拡大するのか、それとも収束するのか。それは国民がどれだけ冷静に判断して、リスクのある行為を避けられるかにかかっていると思います。

本日(2月23日)時点での最良のシナリオは、日本で小さな流行しか起きず、重症者も出ないというものですが、その可能性は小さくなりつつあります。

別のシナリオは、いろいろな場所で、ある一定規模以上の感染拡大が起きて、そのいくつかではかなり厳しい状況になる、ということです。そこでは、医療機関が重症者の集中治療を十分にできないような状況になる可能性があります。

怖いのは、そういう状況が日本全国で相当数起きて、クラスターの連鎖が起こり、拡大を止められなくなることです。そうなると、感染拡大を止めるためには、社会機能を完全に止めるしかなくなります。


ちなみに韓国の28日までの状況は次の通り。




そして29日にはこうなった。





多かれ少なかれこのような感染拡大は日本でも起こるのだろうが、現在なすべき最も肝腎なことはいかにこの拡大幅を抑えるかだろう。

このところ何度か示している橋下徹は昨日も次のように言っている。これが、わたくしの知ったかぎりで、専門家のあいだの多様な見解を統合する「政治的決断」、その評価として最も妥当な立場だとわたくしは思う。そうでないという人は、「批判ではなく」他にどうすべきなのかを示したらよろしい。



「賛成。安倍総理はよく決断された」
乙武氏は「データから見ても、デメリットを考えると打ち手としてはどうか。特に低学年のお子さんを抱えている一人親家庭、共働き家庭はどうするのか。先行して休校が始まっている北海道では、さっそく看護師の方が出勤できないことから、診療をとりやめた医療機関が出ている。これでは本末転倒ではないか。やるにしても全国一律ではなく、感染の広がり具合を見て地域ごとに色を付けてもよかったのではないか」と指摘。さらに「休業補償や雇用調整助成金なりとセットでやるべきではなかったか。フリーランスや自営業の方などは経済的に大打撃だ。3月2日まであと数日しかないのに、それまでに迅速に対応ができるのか」と疑問を呈した。

これに対し、2009年に新型インフルエンザが流行した際、大阪府知事として府内の学校の一斉休校を決断した橋下氏は「賛成。規模は全く違うが、大阪のこと思い出した。僕も色々言われながらも一斉休校をかけた。その半年前、表敬訪問に来たWHO幹部とパンデミックの話になった。僕が“政治家としてやらなきゃいけないことはなんですか”と聞いたら、“人の移動を止めることです。法治国家、民主主義の国では政治家が止めるしか無いんです”と。だから根拠はあまりなかったが、高校生の間で広がりそうだということになり、2例目が出た段階で号令をかけた。スペインかぜが流行った時、人の活動を止めたセントルイスと、何もやらなかったフィラデルフィアでは、感染の度合いに明らかに差が出た歴史的事実があるが、実際、3年後の検証結果で、全国と大阪の数字を比べた時に、大阪の方が低かった」と自身の体験談を披露。

その上で「問題は、感染を止めるという話ではなく、ピークを抑えようという話だということだ。今回の新型コロナウイルスは、最終的にはインフルエンザ程度で収まると思うが、感染症というのは増える時にはワーッと増える。そうなると医療機関が対応できなくなるから、ピークを抑え、なだらかに感染させなければいけない。それには今しかないということで、安倍さんが一か八かで決断したんだと思う。僕が役所の皆に止められたように、安倍さんも政府の中で反対に遭ったと思う。その中で最後によく決断されたなと思う。失敗するかもしれないが、その時は安倍さんが謝って、責任を取ればいいこと」とした。

また、乙武氏も指摘する一人親家庭や共働き家庭の問題については「これが日本の政治行政が強くなれるかのポイントだと思う。決められた方針に従って不都合さを乗り越えるのが役人の仕事。こういうときは危機の量を少なくするのが鉄則。クルーズ船の問題も、3700人全てを抱えたから失敗した。すでに大阪市や千葉市では、教員は出勤しているから、どうしても子どもを家で見られない場合は学校で預かると言っている。それでいい。そういう知恵で乗り切らないと。僕は日本の役人ならできると思う、徹夜作業にはなると思うが、総動員で乗り切って欲しい」と答えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)



◼️追記

A big coronavirus mystery: What about the children?
BY Alvin Powell Harvard Staff Writer February 27, 2020
Q&A  Marc Lipsitch
GAZETTE: You’ve been quoted you as saying you expect between 40 percent and 70 percent of humanity to be infected with this virus within a year. Is that still the case?

LIPSITCH: It is, but an important qualifier is that I expect 40 to 70 percent of adults to be infected. We just don’t understand whether children are getting infected at low rates or just not showing very strong symptoms. So I don’t want to make assumptions about children until we know more. That number also assumes that we don’t put in place effective, long-term countermeasures, like social distancing for months at a time which, I think, is a fair assumption. It may be that a few places like China can sustain it, but even China is beginning to let up.