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2020年3月7日土曜日

コロナの春





砂土がやわらかい匂の息をはいています。いままでやすんでいた虫どもが、ぼんやりといま眼をさまし、しずかに息をするらしいのです。麦はつやつや光っています。雪の下からうまくとけて出て青い麦です。早く走って行こう、かけさえしたらすぐに麦は吸い込むのだ。

(コロナは八万三千十九)

わたくしたちが柄杓で肥を麦にかければ、水はどうしてそんなにまだ力も入れないうちに水銀のように青く光り、たまになって麦の上に飛びだすのでしょう、また砂土がどうしてあんなにのどの乾いた子どもの水を呑むように肥を吸い込むのでしょう。もうほんとうにそうでなければならないから、それがただひとつのみちだからひとりでどんどんそうなるのです。

(コロナは十万八千二百) 

♪……

♪……

こんどは帰りはわたくしたちは近みちをしてあの急な坂をのぼりましょう。あすこの坂なら杉の木が昆布かびろうどのようです。阿部君、だまってそらを見ながらあるいていて一体何を見ているの。そうそう、青ぞらのあんな高いとこ、巻雲さえ浮びそうに見えるとこを、三羽の鷹かなにかの鳥が、それとも鶴かスワンでしょうか、三またの槍の穂のようにはねをのばして白く光ってとんで行きます。

(コロナは三十七万二百) 

♪……

♪……

おや、このせきの去年のちいさな丸太の橋は、雪代水で流れたな、からだだけならすぐ跳べるんだが肥桶をどうしような。阿部君、まず跳び越えてください。うまい、少しぐちゃっと苔にはいったけれども、まあいいねえ、それではぼくはいまこっちで桶をつるすから、そっちでとってくれ給え。そら、重い、ぼくは起重機の一種だよ。重い、ほう、天びん棒がひとりでに、磁石のように君の手へ吸い着いて行った。太陽マジックなんだほんとうに。うまい。

♪……

♪……

楊の木でも樺の木でも、燐光の樹液がいっぱい脈をうっています。

ーー宮沢賢治 イーハトーボ農学校の春




世界には危険厨の人がいて、次のような画像まで流通しているが、宮沢賢治にならって歌でも歌ってたりすごさないとな。




「いままでやすんでいた虫どもが、ぼんやりといま眼をさまし、しずかに息をするらしいのです」ーーってことだよ、虫どもとは共生しなくちゃな。

虫どもとは「とまりませんな/がぶがぶ湧いてゐるですからな」
だからな



眼にて云ふ   宮沢賢治
 
だめでせう
とまりませんな
がぶがぶ湧いてゐるですからな
ゆふべからねむらず血も出つづけなもんですから
そこらは青くしんしんとして
どうも間もなく死にさうです
けれどもなんといゝ風でせう
もう清明が近いので
あんなに青ぞらからもりあがって湧くやうに
きれいな風が来るですな
もみぢの嫩芽と毛のやうな花に
秋草のやうな波をたて
焼痕のある藺草のむしろも青いです
あなたは医学会のお帰りか何かは知りませんが
黒いフロックコートを召して
こんなに本気にいろいろ手あてもしていたゞけば
これで死んでもまづは文句もありません
血がでてゐるにかゝはらず
こんなにのんきで苦しくないのは
魂魄なかばからだをはなれたのですかな
たゞどうも血のために
それを云へないがひどいです
あなたの方からみたらずゐぶんさんたんたるけしきでせうが
わたくしから見えるのは
やっぱりきれいな青ぞらと
すきとほった風ばかりです。



ーーと記した直後、こんな記事にあたっちゃったよ



医療崩壊を回避するために…… イタリア、引退した医師や卒業間近の看護学生を招集へ【新型コロナウイルス】
AP通信によると、ロンバルディア州では医療関係者の10%がウイルスに感染していて、患者に対応できないという。



あのイタリア人でさえ歌を歌っているどころじゃないんだろうな・・・

で、日本は?

国立循環器病研究センターが外来休診 看護師の感染判明
新型肺炎・コロナウイルス 朝日新聞 2020年3月7日 15時02分
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は7日、外来診療を9~13日の間休診すると発表した。同センターの50代女性非常勤看護師が、新型コロナウイルス検査で陽性だったことがわかったため。入院診療と救急患者の対応は通常通り続ける。

 センターによると、陽性がわかったのは6日。この看護師は3、4の両日、産婦人科外来で勤務していた。2日に勤務していた別の医療機関で対応した患者が検査で陽性だったことから看護師も調べたところ、陽性が判明したという。看護師に発熱などの症状はでていないといい、センターの患者や職員との濃厚接触はなかったとしている。

看護師がセンターで接した患者31人にはすでに連絡し、受診から2週間の外出を控えるよう要請。センターの同僚職員32人は看護師に接した日から2週間の自宅待機にした。

 休診期間に予約を入れていた外来患者については連絡して予約の取り直しを依頼する。薬が切れてしまうなど、やむを得ない場合は、外来とは違う場所で対応するという。