少し前、「「大衆に根ざした、庶民のための」共産党のスバラシイ提案」でピケティを引用した。
われわれは日本の政府債務をGDP比や絶対額で毎日のように目にして驚いているのだが、これらは日本人にとって何の意味も持たないのか、それとも数字が発表されるたびに、みな大急ぎで目を逸らしてしまうのだろうか。(トム・ピケティ『新・資本論』2011年)
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日本の大衆はこういった数字に「みな大急ぎで目を逸らしてしまう」どころか、目にも入らないのだろう。これはツイッターを見る限りでは大学教師を含めたインテリたちもほとんど同様に見える。
こうして、その「大衆に根ざした、庶民のための」左翼政党が大衆の歓心を買うために巨額の財政赤字から目を逸らした提案をし続けてきた。その代表的なものが消費税反対である。これを言っていれば、大衆からの票が集まる。与党も選挙で大衆の支持を得るために、世界一の少子高齢化社会で本来あるべき消費税増を強く打ち出せないできた。
現実の民主主義社会では、政治家は選挙があるため、減税はできても増税は困難。民主主義の下で財政を均衡させ、政府の肥大化を防ぐには、憲法で財政均衡を義務付けるしかない。(ブキャナン&ワグナー著『赤字の民主主義 ケインズが遺したもの』)
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もっとも本来問うべきは消費税率だけではなく国民負担率である。
国民負担率
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「国民負担率」は、租税負担及び社会保障負担を合わせた義務的な公的負担の国民所得に対する比率です。(財務省)
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世界で最も高齢化した先進国であり続ける日本が、諸外国との対比でみて低い国民負担率で社会保障を含む広義の政府サービスを維持することは困難だろう。財政赤字問題の主因は社会保障費の増大にある…。
日本の財政は、世界一の超高齢社会の運営をしていくにあたり、極めて低い国民負担率と潤沢な引退層向け社会保障給付という点で最大の問題を抱えてしまっている。つまり、困窮した現役層への移転支出や将来への投資ではなく、引退層への資金移転のために財政赤字が大きいという特徴を有している。 (大和総研「超高齢日本の 30 年展望 持続可能な社会保障システムを目指し挑戦する日本―未来への責任 」理事長 武藤敏郎 監修 、2013 年5 月 14 日)
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いずれにしろ、事実上日本の政治は、短期的には「正しい心」を抱いて、長期的には「最悪の振舞い」をしてきたと言いうる。
邪な心を抱いて正しい行為
そして正しい心を抱いて邪な行為
wicked meaning in a lawful deed
And lawful meaning in a wicked act
わたくしにはこの期に及んでの志位や小池、ひょっとしたらもうすこしはまともかもしれない枝野ーーだが石垣のりこの類を放し飼いにしているーーは、道化師にしか見えない。
長期視野の欠如の結果、今のような危機に遭遇しても、日本は大衆のための資金援助が容易にできない。反対にたとえばドイツ、平時にはいわゆる「反大衆的政策」を取ってきた独国は、危機に際して「大衆のための政策」が可能となる。
(財務省 説明資料 (わが国財政の現状等について)平成31年4月17日) |
そもそも日本は、コロナ危機以前にすでに太平洋戦争末期を超える債務残高比率であり、事実上、法律で禁止されている財政ファイナンス、あるいはMMTに近似した金融政策を取っていた。その意味で財政的ICU(集中治療室)に入っていた。
要するに、すでにICU 入りだった日本ーーデフレ脱却の隠れ蓑を着て実際は「政府の資金繰り倒産」の先延ばし策をしていたに過ぎない日本ーーは、コロナ対策のためにさらに多額の赤字国債を発行し巨額の債務残高を累積させれば、間違いなく死(国家破産)が訪れる。