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2020年9月25日金曜日

享楽の対象は黒い夜である



母は異者である
モノの概念、それは異者としてのモノである。La notion de ce Ding, de ce Ding comme fremde, comme étranger, (Lacan, S7, 09  Décembre  1959)
モノは母である。das Ding, qui est la mère (ラカン、 S7 16 Décembre 1959)

ひとりの女は異者である
ひとりの女は異者である。 une femme […] c'est une étrangeté.  (Lacan, S25, 11  Avril  1978)

異者は女性器である
異者とは、厳密にフロイトの意味での不気味なものである。…étrange au sens proprement freudien : unheimlich (Lacan, S22, 19 Novembre 1974)
女性器は不気味なものである。das weibliche Genitale sei ihnen etwas Unheimliches.(フロイト『不気味なもの 』1919年)



享楽は女性器の周りの循環運動である
享楽とは、フロイディズムにおいて自体性愛と伝統的に呼ばれるもののことである[jouissance, qu'on appelle traditionnellement dans le freudisme l'auto-érotisme. ](J.-A. MILLER, L'Être et l 'Un, 25/05/2011)
自体性愛[autoérotisme]の対象は、喪われた対象a [l'objet perdu (a)) ]の形態をとる。対象a の起源は、永遠に喪われている対象の周りを循環すること自体である[contourner cet objet éternellement manquant]。(ラカン、S11, 13 Mai 1964, 摘要)
フロイトは、幼児が自己身体 propre corps に見出す性的現実 réalité sexuelle において「自体性愛 autoérotisme」を強調した。…が、自らの身体の興奮との遭遇は、まったく自体性愛的ではない。身体の興奮は、ヘテロ的である。la rencontre avec leur propre érection n'est pas du tout autoérotique. Elle est tout ce qu'il y a de plus hétéro. …ヘテロhétéro、すなわち「異者étrangère」である。(LACAN CONFÉRENCE À GENÈVE SUR LE SYMPTÔME、1975、摘要)

享楽の対象は女性器の奥である
享楽の対象Objet de jouissance  としてのモノ La Choseは、喪われた対象 objet perdu である。(ラカン、S17、14 Janvier 1970、摘要)
例えば胎盤は、個体が出産時に喪う己の部分、最も深く喪われた対象を示す。le placenta par exemple …représente bien cette part de lui-même que l'individu perd à la naissance (ラカン、S11、20 Mai 1964)
人には、出生とともに、放棄された子宮内生活へ戻ろうとする欲動、母胎回帰がある。Man kann mit Recht sagen, mit der Geburt ist ein Trieb entstanden, zum aufgegebenen Intrauterinleben zurückzukehren, […] eine solche Rückkehr in den Mutterleib. (フロイト『精神分析概説』第5章 死後出版1940年)


黒い夜 la nuit noire
愛するという感情は、どのように訪れるのかとあなたは尋ねる。彼女は答える、「おそらく宇宙のロジックの突然の裂け目から」。彼女は言う、「たとえばひとつの間違いから」。 彼女は言う、「けっして欲することからではないわ」。あなたは尋ねる、「愛するという感情はまだほかのものからも訪れるのだろうか」と。あなたは彼女に言ってくれるように懇願する。彼女は言う、「すべてから、夜の鳥が飛ぶことから、眠りから、眠りの夢から、死の接近から、ひとつの言葉から、ひとつの犯罪から、自己から、自分自身から、突然に、どうしてだかわからずに」。彼女は言う、「見て」。彼女は脚を開き、そして大きく開かれた彼女の脚のあいだの窪みにあなたはとうとう黒い夜を見る[Elle dit : Regardez. Elle ouvre ses jambes et dans le creux de ses jambes écartées vous voyez enfin la nuit noire]。あなたは言う、「そこだった、黒い夜[la nuit noire]、それはそこだ」(マルグリット・デュラス『死の病 La maladie de la mort』1981年)


外には、唯、黒洞々たる夜があるばかりである。 (芥川龍之介『羅生門』)


Godard, Histoire(s) du cinéma


路ばたにマンダラゲが咲く (西脇順三郎「坂の五月」)


Godard, Adieu au Langage


吾が掘りし野鳥は去りつ底ふかき阿漕の虱の珠ぞ残りぬ(蚊居肢)